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        WORKING FISHERMAN Vol.08

        広島県・江田島柴倉 孝之

        そんな中、少しの量でもお金にするための対策として始めたのが、週1回の船上での販売でした。獲れてから数時間しか経っていない新鮮な魚なら、氷で締まっていても、みんな喜んで買ってくれるだろうと思ったんです。船上販売のことが口コミでだんだんと広がって、お客さんも近所のおばあちゃんだけでなく、広島市内からも来てくれるようになって。販売しながら、お客さんとの交流や、美味しい魚の食べかたをアドバイスできるのもやりがいがあっておもしろい。販売ができれば、この島での生活はなんとか続けられるし、船上販売を始めたことで、現在は漁に出るのは週1回で最大でも12 時間と、仕事のスタンスも変わりました。孤独や挫折を感じていた時期もあったけど、周りの人が助けてくれたおかげで、こうして生かされていると実感しています。

        一人で漁に出ていると、危険な目に合うこともあるし、海に落ちてしまったら後はない。大切にしているのは、魚が獲れても獲れなくても、怪我せずに安全に帰ること。お守りは船内に貼っている家族写真です。漁を30 時間ずっとやっていた頃は肉体的にも精神的にもかなり追い込まれた状態で、船上で寝てしまいそうになるたびに、その写真が何度も僕の目を覚ましてくれました。家族の存在が、僕が漁師をやっていける支えとなっています。

        この先は、鮮魚を扱いながら、今まで誰もやらなかった新しいことにも挑戦したいと思っています。週末にも販売をしたり、イベントにも出店したり。受け入れてもらえるところがあれば、この船に乗っていろんな場所を訪ねて、店開きをしてみたい。不安は尽きないですが、冒険もしないといけない。島での暮らしをいかに豊かにできるかを目標にして、自分らしい漁師の生活を模索しているところです。

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