THE IDENTITY MIWAKO TANAKA

「一歩踏み出すための空の服」。それは、着る人の個性に寄り添うようなものでありたい。
さまざまな環境で自分らしく生きる人たち。その"らしさ"はどのようにして生まれたのか。
ありのままの声を届けるインタビュー。

W H/S LIGHT MILANO RIB BIG TEE ¥16,200

大学進学を機に上京されたんですよね?

はい。出身は新潟です。高校を卒業して、東京の大学を受け、上京しました。大学では建築を専攻していたのですが、建築家になりたいわけではなかったのです。本当はスタイリストになりたくて「東京に行くぞ!」って思っていたのですけれど、親に反対されていたので東京で建築の勉強をしたいって(半分)嘘をついて出てきました。そもそも、上京すること自体反対されていたので、大学も内緒で受験して、合格通知を渡して「私、東京に行きます」って。

ご両親は驚いたんじゃないですか?

そうですね…。ダメって言えない状況を自ら作りました。そういう作戦です。もう、それしかないと。

高校生のときにはすでにスタイリストになりたいという気持ちがあったんですね。

ぼんやりですけれど。担任の先生に 「駅や街に貼ってあるポスターを作ることを仕事としてやりたいんですけどなんていう職業でしょうか?」って質問したら「それはスタイリストっていうんだよ」って。「じゃあスタイリストになります」って。とてもシンプルです。高校生のころは「Olive」という雑誌がすごく好きで、「東京にはこんなお店が並んでいるんだ」っていうことだけでウキウキしていて。次の号が出るまでの間、ボロボロになるまでずっとカバンの中に入れて何度も読んでいました。そこでスタイリストの岡尾美代子先生を知りました。岡尾さんの作られる世界が好きで、この人の下で勉強できたらいいなって思っていました。こういう世界を作っている場所に行ってみたいという気持ちがすごく強かったんです。なので、当時ファッションやインテリアの業界で働いている方たちの連絡先が載っている雑誌があると教わり、バックナンバーを図書館で全部出していただいて、何度も通って端から端まで調べて先生の連絡先を知りました。

すごい労力ですね。

一生懸命でした。それしか手段が見つけられなかったから。スタイリストになりたいとしか考えてなかった、シンプルに「この仕事がしたい」っていう、それだけです。溢れる気持ちはありましたけれど、慌てることもなく一つずつできることを進めていました。

そうなんですね。

周りにいる人の方がそわそわしている感じでした。「やりたいんだったら、もっと分かりやすい熱意みたいなものがあるでしょう?」って。私、子どものころから良くも悪くも自分ペースなんですね。それを意識してきたわけではないんですけど、今でも注意されるってことは、多分マイペース(笑)。自分のなかには、溢れるほどの気持ちはあるけれど、それですごく熱くなったり、気持ちが狂ってしまうほどの大げさなことはなくて。散歩がてらふらーっと図書館に寄るくらいの感じでした。

とても落ち着いた学生だったんですね。

それしか考えていなかっただけですよ。大学も入学式の次の日に「私はスタイリストになりたいんです」って言って、 どうにか辞められないか先生に話したのです。 授業も受けずにね。でも、そのときの教授が「やめることを考えないで、ここでできることを探しなさい」って引き止めてくださり、結局その先生に研究室も含め4年間お世話になりました。

卒業後に念願のアシスタントに。

その年の春から岡尾美代子先生のアシスタントにつくことができました。タイミングが合っていたのかとてもラッキーなことでした。夢が一つしかなかったのですから。その後2年間アシスタントをさせていただいて、独立になりました。

W LIGHT WEIGHT JACKET ¥18,360

洋服は子どものころから好きだったんですか?

そうですね。昔から シンプルな洋服が好きでした。母がそうだからだと思います。中学生のとき、婦人服が載っているチラシを見て、大人の女性が着ているステンカラーのベージュのコートがとても素敵だなと思って。母親に「このコートがすごく着たいから作って欲しい」って頼んだこともありました。母は洋裁が好きだったので「じゃあ生地選んで」って。パターンから引いてくれたのです。

オーダーメイドですね。

そうですね。 いつも洋服は作ってもらっていました。でも、中学生からはバレーボール部に入り、6年間通してほとんど休みがなかったので毎日ジャージと制服です。 洋服やおしゃれすることとは、程遠い毎日でした。

今でもスポーツはされますか?

冬はスキーをやってます。冬以外は決まったことをしているわけではないですけれど、ランニングや、最近はゆっくり自転車に乗ったり。運動していると体の調子が良くて、体を動かすことはやはり好きなんだと思います。

スキーはいつ頃はじめたんですか?

7年前くらいに。ものすごくハマっています! 珍しく熱いんです! スキーの話には目が輝くらしいです。さっきまで、自分はマイペースだと話していたのに少し乱されます(笑)。なんか、ほんとにほんとに、こんなやる気になるとは自分でも驚いているんです!

テンションが急に(笑)。

そう! 誘われて行ってみたらとてもおもしろくて。多分、今の人生いちおもしろいんじゃないかな。バレーボールもアシスタント業もスタイリストの仕事も人生かけて一生懸命にやっていたのですけど、それとは少し違う気持ちです。初めての趣味なのかもしれません。冬が待ち遠しいのです。

熱が伝わってきます。

冬だけは、スキーを教えてくださる先輩方の予定を気にかけつつ、仕事をする。 冬はオンオフがものすごくはっきりしてきました。先シーズンくらいから仕事とスキーのバランスが取れるようになってきました。少し無茶なところもありますけれど。昨年はスキーも仕事もたくさんできたのですよ。スパッと仕事を納めて、翌日から滑って帰ってきて、またすぐ仕事に戻る。

タフですね。

学生時代の「タフ貯金」がまだ残っているのですかね 。仕事もスキーに行く前日の深夜まで粘ります。 気持ちが折れそうになると 「これを全部やり終えれば、スキーなんだぞ、明日!」って自分の気持ちを持ち上げてます(笑)。なので、梅雨のジメジメも熱い夏もこれを乗り越えれば冬に一歩近くと思わせ、いつでも冬が待ち遠しくなってやる気が出てしまうのです。

すべてはスキーのために。

そのために自転車も買いました。 夏のうちに何が出来るかなって考えたら、自転車に乗ったら少しは体力がつくかなって。力がついたらもっと高いところに連れていってあげると言われてるのですよ。「よし、いけるぞ!」って言われる日が待ち遠しくて 、気持ちは一所懸命です。とにかく楽しくて、そして、雪景色がたまらなく好きなのです。木々も広がる街も真っ白。色を塗る前の塗り絵の中にいるんです。リセットできる世界なのです。もうその景色に変わるものはないと思います。

ある意味人生が変わったというか。

もっと上に行けば見たことない世界があるに違いないと思うと、やめられないんです。 私が高校のときにものすごくお世話になった部活の監督がいるんですよ。その方が定年になって、退職されるお祝いの会のときに「やっと先生っていう仕事を引退しまして、私はこれから本格的にスキーをはじめます。もう教えることが終わったので、自分が精一杯楽しむことを考えていきたい」っておっしゃっていました。その言葉がずっと気になっていて。そうしたら、その数年後にスキーをやってみないかって誘われ、今は先生のようにスキーを生涯スポーツにできたらと思ってます。

いい言葉ですね。

この先、何十年も続けることを考えたらそんなに急がなくてもいいって思っています、向上心はあるけれど、せっかちに思う気持ちもなく、ゆっくりゆっくり上手になっていけたらいいなって。自分のペースを乱したくないっていうのも、スキーをやっていて再確認したんです。無理をすると危ないっていうこととか、過信してはならないってこととか。長く続けたいことであれば、無理をしないっていうのはすごく大切なこと。 リズムが乱れて体調を崩したら、好きな事もできなくなってしまう。仕事もそうですけれど、ほかのいろいろなことにも共通していると思っています。ちょうど良いところでやっていた方が、長く続けられるなっていうのはスキーを通してすごく勉強になったし、自分と向き合うというか、自分にきちんと問いかける様になりました。

継続の秘訣ですね。

スキーをするようになって、自分の体とアウトドアウェアの力を改めて知れたのもよかったです。やっぱり、人の命がかかってるだけあって、着ていて余計なものがないから心地いい。今着ているこのNATURE FITNESSもとても心地良いです。普段、撮影の現場で働いているときは、 アウトドアウェアの方が動きやすくて、でもその後街に出ていくときに、やっぱりおしゃれもしたいなって気持ちもあって。その両方を叶えているなって思いました。動きやすくもあってほしいんですけれど、そればかりでは…っていう気持ちもピックアップされていて、今の私にはちょうどいいなって思います。

スキーが心にも生活にもいい影響を与えているんですね。

はい!いろんな人に出会って、刺激を受けては何かに一生懸命になって。今までその繰り返しだとしたら、今は雪山に刺激をもらっています。もう少し山と仲良くなりたい、山でも自分のペースで進んで行けたらいいなぁと思ってます。小さいころから「マイペース」と言われ続け、気にはしていましたけれど、「マイペース、それでいいのかな」と思っているのです(笑)。

PROFILE

田中美和子 Miwako Tanaka

大学卒業後、スタイリストの岡尾美代子氏に師事。独立後、ファッション、インテリアなど幅広いジャンルで活躍中。