HOT LIFE STORY

白いスクリーンを動物が彩る。
最高の季節の訪れに、
ワクワクせずいられない。

Vol. 02

写真家
井上浩輝Hiroki Inoue

北海道を拠点にキタキツネをはじめとする野生動物や風景を撮り続けている写真家、井上浩輝さん。
この冬、光電子®素材のダウンジャケットと共に撮影に臨む井上さんが、
あたため続けている作品づくりへの想い、そして、野生の存在への問い。

野生の定義とは何か。 キタキツネを撮り始めて直面した疑問。野生の定義とは何か。 キタキツネを撮り始めて直面した疑問。

「『野生そのもの』と言えるキタキツネなんているのだろうか。」それは、井上さんが彼らを撮り始めてから直面した大きな疑問なのだという。「確かに、家畜やペットではないという点で、彼らを野生の動物と呼ぶことはできるでしょう。しかし、キタキツネは、森と耕作地の間に棲み、人間と密接に暮らしています。牧場に棲みつく者はネズミや彼らにとってのごちそうである牧場の廃棄物を食べるだろうし、観光地に出没する者に人間からおやつを与えられることもあるでしょう。好ましい状態なのか否かはさておき、僕はそれを『共生』のひとつの態様だと考えています。このような状況のもとでの『野生』の定義とは何なのだろう?言葉の定義を突き詰めるほど、それが何なのか、そもそも野生など存在するのかさえ疑わしい気持ちになるんです。」哲学的とも言える問いに対する答えなのだろうか。井上さんは、キタキツネという同じ被写体を撮影しながら、それらの写真群を明確にふたつのテーマに分けている。「その違いを、撮影者である僕を意識しているか否かに求めることにしました。キタキツネが僕の存在に気づき、意識しているときに撮れる写真を『ポートレート』と呼んでいます。究極を言えば、動物の種を意識しないで、目の前にいる動物と、時間と場所を共有したいとさえ思っています。」

Photo:by Hiroki Inoue

「撮影者を意識していないキタキツネの
写真群につけた、特別な呼び名。

「一方、僕を意識していない彼らを捉えた写真群は、特別な名で呼んでいます。」井上さんは、その名の着想を、大学受験の予備校で出題された問題文に出てきたシェイクスピアの戯曲「ロミオとジュリエット」から得たという。「二人の成就できない恋が意味のない無駄なことだとそしりを受けるのですが、物語の中では、その表現に『無駄な試み』を意味する『Wild Goose Chase』という慣用句が当てられていました。僕が追いかけているキタキツネだって、野生の定義を突き詰めれば、野生とは言えないかもしれない。もっと言えば、野生のキタキツネなんていない可能性もある。それでも、僕はできるだけ人間を意識しない幸福な彼らの姿を撮ろうとしているわけです。そのような意味を込めて、一連の写真群を『Wild Fox Chase』と呼んでいるんです。」井上さんの言葉には、キタキツネへの敬意と憧れが込められている。しかし、動物写真家と言われることに、若干の違和感があるそうだ。「僕は、動物の生態やものすごい瞬間を撮っているわけじゃない。あくまで動物がいる美しい雰囲気を撮っていて、自宅の壁に飾ったり、携帯の待ち受けにするなど所有欲に結びつく作品を撮りたいと思っています。違和感はそのせいかもしれませんね。」

もっとシンプルな場所で、もっと美しく動物を撮りたい。もっとシンプルな場所で、もっと美しく動物を撮りたい。

北の大地の冬本番を目前に、井上さんは撮影への意気込みとウエアへの期待を語った。「『追いかけっこ』の写真を撮った後、僕は次の冬が待ち遠しくて仕方がなかったし、今また待ち遠しい冬が来たと思ってワクワクしているんです。なぜなら、冬は動物の背景が一番シンプルな季節だから。雪という白いスクリーンに、キツネやリス、エゾシカなど、さまざまな動物の色が入るわけです。そんな最高な時期って他にはないですよ。もっとシンプルな場所で、もっと美しく動物を撮りたいと思っています。だからこそ光電子素材のこのダウンジャケットにも期待しています。僕の撮影は8割が待つ時間や車を窓全開で移動させることに当てられる。上半身、特に腕とわきがあたたかく、防風に優れていることが重要な要素になるんです。同時に、カメラを構えたときにしっかりと脇が締められてカメラがぶれないこともいい作品を残すためには欠かせません。光電子素材のおかげで腕やわきに窮屈さを感じないこのジャケットは、その意味でとても頼れる一着です。」

写真家 井上浩輝 Hiroki Inoue

PROFILE

写真家
井上浩輝Hiroki Inoue

1979年札幌市生まれ。札幌南高校、新潟大学卒業、東北学院大学法務研究科修了後、北海道に戻り、風景写真の撮影を開始。次第にキタキツネを中心に動物がいる美しい風景を追いかけるようになり、2016年に米誌「National Geographic」の『TRAVEL PHOTOGRAPHER OF THE YEAR 2016』のネイチャー部門において、日本人初の1位を獲得。自然と人間社会のかかわりへの疑問に端を発した「A Wild Fox Chase」というキタキツネを追った作品群を制作、発表してきた。 写真は国内のみならず海外の広告などでも使用され、近時は、北海道と本州を結ぶ航空会社 AIR DO と提携しながら野生動物や風景など「いま生きている光景」にレンズを向けている。