『重要』ゴールデンウィーク期間中の出荷に関して
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        FUN to SWIN 泳ぐが楽しくなる

        ビニールハウスプールで得たのは「工夫する力」

        Q:松田選手の選手としてのルーツを振り返ると、ジュニアの時代を過ごされたビニールハウスプールのお話が有名です。

        松田:たしかに僕が小さい頃に育った場所は、練習できることがありがたいような状況でした。高校生になるまでは温水になるボイラーが付いていなかったので、冬はめちゃくちゃ寒かったですし、手前が深さ1.1mぐらいの浅いプールでしたし。冬場は他のスイミングクラブのプールを借りに行くこともありましたが、その限られた時間の中でどれだけいい練習をするか。そういうことを自然と考えるようにはなりました。

        Q:プールを使える時間が限られた冬には、どういうトレーニングをしましたか?

        松田:ボイラーが付くまでは、土日はスイミングクラブの温かいプールを借りて練習もしましたが、それ以外の日は陸上トレーニングやランニングもたくさんしましたね。腕立て伏せだとか、腹筋や背筋とかそういうのを冬場にたくさんやって、温かくなってきたら水に入る時間が増えていく。いま置かれている環境でどうするか、ということを工夫する力が付いたので、例えば今はウェイト・トレーニングは週に3回やるんですけど、筋トレをして泳いだり、その逆パターンをしたり、午前中の練習前にウォーミングアップを兼ねてちょっとロードを走ったりもします。

        Q:今でも宮崎に帰省すると、ビニールハウスプールに行かれるんですか?

        松田:そうですね、帰って泳ぎますね。プールも含めてですけど、地元に帰るとホッとする部分もありますし、地元の方々がいつも応援してくれています。そういう後押しを感じると、多少しんどいことがあってもまた頑張ろうかなと思わせてくれますね。

        水泳にはまだ記録の限界が見えていない

        Q:中京大学を卒業して大学院にも進学されましたが、そこで学んだことがどう活かされていますか?

        松田:大学で体育学部を出て、大学院では、運動生理学やバイオメカニクス的なことを勉強する研究室にいました。客観的にトレーニングを考えたり、泳ぎの動作をとらえ直すという意味では、すごくよかったですね。

        Q:ギアの進化もありますしね。

        松田:ええ、レーザー・レーサーの登場は衝撃でしたよね。最初は、最近なんかやたら海外の選手が速いなって思って、自分もそれなりにトレーニングをして力を付けていっている感覚はあるけど、海外の選手の伸びが違うと感じたんです。ひょっとして水着が違うのかなと思って、レーザー・レーサーを着てみたときは本当にビックリしました。飛び込んだ瞬間から感覚が違うというか。

        Q:開発途中のテストとかにもご協力いただくようになって、Speedoが出すギアを身につけて泳いでいただいています。

        松田:Speedoの開発の担当者の方は、こちらが思いつかないような新しいアイデアを出してくださるので、いつも楽しみにしているんです。もちろん細かい技術的な部分は僕もあまり分かりませんが、着た時の感覚はフィードバックさせていただいています。パーツごとに締める力が違ったりするので、どこがきついとか、お尻のどの部分にフィットするか、シワができるかとか、そういう採寸とフィードバックを繰り返して開発したギアには、思い入れも生まれますよね。

        アスリートに大切なのはオンとオフの切り換え

        Q:子どものころから水泳を続け、アスリートとして競技に関わってきて、ターニングポイントとなったできごとはありますか?

        松田:やっぱりアテネのときですね。自分がメダルまで届かなかったんですけど、メダルを取った選手と自分では何が違ったのかを考えたんです。勝ちたい想いとかは絶対負けてないと思っていました。初めてだったので経験は当然なかったですけど、トレーニングの量も劣ってない自信がありました。そういうところで結果を出す人たちは、オンとオフの切り換えがすごくて、そこに違いを感じたんですよ。

        Q:結果を出す選手たちは、どのような切り換えをしていたんですか?

        松田:選手村の部屋でゲームやくだらない話で盛り上がってたりするんですけど、僕はどちらかというと、そういうのをバカバカしいと思って見てたんですね。でも、そういうくだらないと思えるような、リラックスする時間があってこそ、最大限に集中する瞬間があるのかなとそのときに思ったんです。

        Q:何か行動を変えましたか?

        松田:当時は、友だちと会ってご飯食べに行ったりとかはあまりしなかったんですけど、それ以降は、時間があるときには昔からの友だちに会ったりして、やっぱりいいサイクルが生まれるようになったと感じましたね。例えば、地元に戻ると、幼稚園とか小学校ぐらいからの仲間と地元の飲み屋で飲むんですね。何の生産的なものは生まれないですけど、楽しいリラックス時間があって、レースに出場するピリピリした瞬間もある。それら両方が必要なんですよ。

        Q:今年はリオですが。

        松田:おそらく最後のチャレンジになると思っているんで、そこで完全燃焼したいというか、自分の水泳人生、選手としての競技人生をやり切ったと思えるチャレンジにしたいです。世界を舞台に戦う楽しさをもう一度味わえたらいいなと思ってます。世界中のアスリートがそこを目指して、そこに懸けて選手生活を送っているわけですから。本当に特別な舞台ですよ。

        (対談写真 松本昇大 / 文 中島良平)

        Takeshi Matsuda

        松田丈志(まつだたけし)

        1984年6月23日、宮崎県延岡市出身。競泳選手(セガサミーホールディングス所属)。主な競技種目はバタフライ及び自由形。アテネ、北京、ロンドンと3大会連続でオリンピック出場を果たし、北京とロンドンでは200mバタフライで銅メダルを、ロンドン五輪では4×100mメドレー・リレーに第3泳者としてバタフライを泳ぎ、銀メダルを獲得。2012年12月に現役続行を表明。2014年仁川アジア大会では800mフリー・リレーで金メダルを獲得、200m自由形で4位となった。