THE NORTH FACE

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THE NORTH FACE Rock Trip
#01 SHIKOKU

Rock Trip

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  • TORU NAKAJIMA
  • AKIYO NOGUCHI
  • TOMOA NARASAKI
実はTNF Rocktripで四国に行きたいと言い始めたのは僕で、確か今年の3月頃だったと思います。四国を選んだ理由はいくつかありまして

1. メンバー誰も行ったことがない
過去二年のTNF Rocktripはわりとメジャーなエリアに行ったのですが、既に行っことのある人にとっては新鮮味に欠け、最悪トライする課題が無いということもありました。その点、全員にとって初めてのエリアでは各々が持ち味を生かしたパフォーマンスをすることができ、互いにとっても良い影響を与え合えるのではと思いました。

2. まだあまりメジャーではない
四国には正式に発表されていないエリアが多くあり、正式に公開されているエリアにおいても、最近になって高難度の課題が多く開拓されているということを聞いていました。そこで今回のように映像作品として発表するにあたって、僕らアスリートだけでなく、リスナーの方々も新鮮な気持ちで見られるのではないかと考えました。

3. その上で素晴らしい岩が沢山ある
予てから四国の噂や実際の写真を見聞きし、個人的にとても興味がありました。正直これが一番の理由です。

今回四国の岩場に行くにあたって、事前に課題についてある程度調べて行きましたが、調べれば調べるほど面白そうな岩、カッコいい岩の情報が出てきました。ツアー前の期待値はかなり高かったと思います。

さて実際のRocktripですが、スケジュール的には高知県3日間、徳島県2日間という日程で岩場を回りました。天候やフライトとの兼ね合いで最終的にはそれぞれ半日しか登れない日がありましたが、それ以外の日は天気にも恵まれクライミングを満喫できたと思います。ツアー前にかなり期待値が高まっていたにも関わらず、実際の岩は僕の期待を上回るスケールとロケーションでした。レスト日が無かったにもかかわらず、疲れを忘れて5日間たくさんの課題を登りました。日本にまだこんな岩が残っていたのかという感動は、今回のムービーを見て頂ければ少しでも共有することが出来ると思います。エリアの雰囲気や実際の岩に関しては映像を見ていただくとして、少し僕が今回初登させて頂いた課題について書こうと思います。

エリアの規模が大きいということで、既存課題に加え手つかずの岩がまだいくつか残っているのではないかと、ツアー前に少し期待していました。そして実際に行ってみると、いくつかどころか素晴らしいラインが次々目に飛び込んできました。かなり難しそうなものや危険なものなど、少しハードルの高い課題が主体でしたが、危険なものに関してはムーブの解析や練習に時間をかける必要がないため、今回のツアー中に初登するのも十分可能です。丁度ボルダリングに集中していた時期から、そろそろトラッドに戻り始めようとしていた時期だったので、嬉々としてこれらの課題に飛びついたという訳です。ただし、僕は危ない事をしたい訳ではなく、カッコいいラインをシンプルなスタイルで登りたいだけで、結果としてそういった課題は危ないものが多いという事をあらかじめ断っておきます。今回初登した課題が全部で6本。その中でも特に印象的だったのが奥吉野で登った「恍惚」と「婀娜」です。

「恍惚」は奥吉野初日に目を付けたラインで、前傾したコーナーから水平クラックを辿るラインで高さは10m程。下地に平らな箇所は無く、一目見てマットを敷く事やスポットをしてもらうことを諦めました。それでも見た感じはそれ程難しそうに見えずその上で顕著なラインだったので、他の二人が有終の美(三段)にトライしている隙に一人でシューズ・チョーク・カメラだけ持ってこそこそトライしに行きました。

課題は3級程度のマントルから始まります。すぐにレスト出来るガバが出てきて一息つけますがその後が分かりませんでした。前傾したコーナーに外傾ホールドが一つ、その1m程上に縦ガバ。多分何分か右往左往していたと思います。まだ飛び降りられる高さだったため降りようかとかなり迷いましたが、最終的にコーナーの外の見えないスタンスと細かい縦ホールドの発見でなんとかこの核心を切り抜けました。次のレストポイントでレストしながら僕はトライした事を後悔し始めていました。思っていたよりムーブが難しかった事に加え、もう戻れない事、更に残り半分のムーブとホールドが読めない事はかなりの重圧だったように思います。ただ、戻れない以上先に進む以外の選択肢はなく、あまり長居することなく僕はレストポイントを離れました。登り始めたからには怖いなど思っている余裕はなく、一手一手文字通り必死にホールドを掴み登っていきました。オンサイト、グランドアップに加え誰も登っていないという事は、ホールドが汚れおらず、上手くムーブが繋がっている保障はないという事です。今回は運よく落ちない程度にホールドが繋がっており、ホールドが欠けることなく登りきることが出来ましたが、登っている最中は生きた心地がしませんでした。

「婀娜」はその翌日、同じくオンサイト、グランドアップ、マット・スポット無しで初登しました。直前にすぐ隣のラインを初登していたためトライする事自体はあまり躊躇しませんでしたが。出だしの核心ではかなり躊躇しました。前日の反省を踏まえかなり入念に観察し、ラインを見定めていましたが、ホールドの掛りまでは解らないままでした。特に出だしに関しては、悪い左手からカンテ状のホールドにランジする以外方法がないように思われました。しかし傾斜がかなり強いため、ランジ先を取り損ねたり、振られに耐えられなかったり、そもそも取り先のホールドが悪かったら変な体勢で下の池に突っ込む恐れがありました。流石に捨て身のランジに尻込みし、ランジの態勢に入ってから何回も取り付きに戻りました。自分の体を運に任せるというのはやはり気持ち悪いものです。ただこの時は何の根拠も無く、自分になら出来ると言い聞かせ、宙に身を投げました。ランジを止めた瞬間は気合か、ただ怖かっただけか、無意識に吼えていました。数手こなしてガバを掴んだとき僕は賭けに勝ったのだと思いました。「恍惚」の時と同じように運が良かったのだと思えたのです。残り数手をこなして岩の上に立った時にはもう安堵の気持ちでいっぱいでしたが、それと同時に鳥肌が立つほど嬉しかったのを覚えています。誰が最初に言い始めたかはわかりませんが、「脳が沸騰するような」という言い方がとてもしっくりくる気分でした。

僕がトラッドクライミングに集中していたのはもう7年以上前のことですが、久しぶりにこういった危ないクライミングをして感じたのは、当時と何一つ自分が変わっていなかったということです。若さと勢いに任せて登っていたかつての自分とは異なり、この7年で自分自身をかなりコントロール出来るようになったものと思っていました。しかし、今回のクライミングはかつてと同じく危なっかしく、無計画で無鉄砲なものでした。今回、楢崎君の勢いのあるクライミングを見て「若いなー」なんて偉そうに思っていましたが、やはり自分も未だに荒削りの若造だったのだと思うのです。しかし進歩が見られない事を残念に思う一方で、そういった「若さ」をまだ持ち合わせていた事をどこか嬉しく思っています。今回のクライミングは何を隠そうその「若さ」があったからこそできました。そして今思い返せば、僕にとって我を忘れる瞬間こそクライミングをしていてもっとも幸せな瞬間なのです。

「恍惚」「婀娜」でも書いたように、今回落ちなかったのは運が良かっただけだと思っています。ホールドが繋がっていたことも岩が欠けなかった事も、基本的には僕の実力とは何ら関係のないことです。これらの課題をトライする気になったのは楢崎くんの勢いのあるクライミングや、アキヨさんの諦めないクライミングに感化されたからですし、出会えたのは地元の方々が快く受け入れてくれたからです。ツアーを行えたのはThe North Faceのお陰です。そう思い返すたびに自分は本当に恵まれていると感じます。本当にありがとうございました。

次回の自分が恵まれているかどうかはわかりません。次こそ岩が欠けるかも知れませんし、実力が及ばず落ちてしまうかもしれません。それでもこれらの幸運に甘えて、また同じような「脳が沸騰するような」クライミングがしたいと思っています。
TORU NAKAJIMA
中島 徹
1993年生まれ、長野県出身。4歳でクライミングに初めて触れ、8歳から本格的にクライミングをはじめ、国内外問わず数々の高難易度を登っている。国内 で経験と実績を積み、15歳のときに単身渡英したことをきっかけに活躍の場を世界に広げている。「Paint it Black V15」「The Story of Two Worlds V15」などを完登。
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TNF四国ロックトリップについて

今回はTNFアスリート3人によるロックトリップに参加させて頂きました。しかも平山ユージさん不在の若者onlyという初めての試みで、四国という未開拓の地、岩の内容も撮影のイメージも全く想像がつかず少々不安な点もありました。

しかし現地に到着してみると、岩のスケールは日本サイズを超えており、内容もバラエティ豊かでとても素晴らしかったです。どこのエリアへいっても三ツ星揃いの課題達にテンション上がりっぱなしでした。またグレードも4段という高難度まで揃っており、本当に四国まできた甲斐がありました。

普通であれば登りに来れないような四国の非公開のエリアでクライミング出来たのも今回のTNFロックトリップのお陰です。確かにまだ一般の方々が気軽に登りに来れないエリアではありますが、日本にはこんなにも素晴らしい岩場があり、将来的に岩場のアクセス整備が整ったら絶対に登りに来たい!と思って貰えればと思います。またそのような非公開の地、四国の映像がアウトドアブランドから世に出回るのは初めての事で、間違いなくクライマーの注目を集める映像になると思っています。

また今回初めて徹くんと智亜と岩場でセッションする事ができ、多くの収穫がありました。わたし一人では1日で解決出来ないような3段、4段という高グレードの課題を2人が先に登ってくれた上にムーブの解説からブラッシングまで手伝ってくれたお陰で多くの成果を残す事が出来ました。そして徹くんのフリーソロ状態での初登は本当に刺激的で、自分のクライミングへのモチベーションを高めてくれました。また、徹くんと智亜のクライミングスタイルが全く違うという点も映像の見所のひとつだと思います。5日間、お互いにいい影響を受けながらとても楽しくクライミング出来たと感じております。

そして今回のロックトリップで一番心強く感じたことは、周りの方々によるサポートです。現地ではローカルのクライマーの方々が課題の案内やアプローチの補強、スポットからマット移動まで、本当に手厚いサポートをして頂きました。事前に本さんや徹くんからのローカルクライマーへのコンタクトや事前調査があったお陰かと思います。そして朝から晩まで撮影してくれたニールと、四国の端から端まで運転し続けてくれた本さんと永山さんには本当に感謝しています。ニールはアメリカ人でありながらすごく落ち着いた空気感を醸し出してくれて、本気トライのプレッシャーの中でも自分のペースで登ることが出来ました。カメラマンやメンバーとの一体感はクライマーが成果をあげる上でとても大切なもののひとつだと思います。

今回のロックトリップを皮切りに、今後も年に一度みんなで楽しくTNFロックトリップを続けていければと思いました。今回は5日間という短い期間でのロックトリップだったので本当に登り倒しの映像となると思いますが、次回からはもう少し余裕のある日程でレスト日も挟み、もっと現地での観光の様子や日常生活も交えた映像にしていければと思います。

欲を言えば、四国のエリアはわたしにとっては高難度をトライ出来たロックトリップでしたが、徹くんと智亜にとっては少し簡単だったように思えました。次回は5段以上が存在するエリアで、2人のさらに熱い本気セッションが見たいです。

最後になりますが、今回はみんな忙しい中でスケジュールを合わせ、とてもハードルが高い四国という地でロックトリップを企画・サポートして頂いたTNFには本当に感謝しています。今後もこのメンバーで切磋琢磨し合いながらロックトリップしていきたいです。今後ともサポートよろしくお願いします。
AKIYO NOGUCHI
野口啓代
1989年生まれ、茨城県出身。小学5年でクライミングと出会い中学生で国内女子TOPクラスにランクされる。2005年、ドイツ世界選手権(リード)で日本人女性初の3 位入賞。2007年、ワールド カップ(ボルダー)は全8戦中5 戦に出場し総合5 位と大健闘。2008年7月、フランス、モンタバンWC(B)で見事優勝。後半はリードに参戦し、最終戦スロベニアで表彰台(3位)に立つ。IFSCランク(B)2 位 (L)5 位 (Overall) 1位。2009 年、2010年、2014年、2015年ワールド カップ (B)総合優勝。コンペだけでなく岩場でも日本人女性最高グレード5.14CのRPなど成果を出している。2015年、BISHOPの有名課題「The Mandala (V12)」完登。
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11月2日〜7日 四国ツアー

今回ノースの先輩である野口啓代さん、中嶋徹君と四国ツアーに行ってきました。他のメンバーは11/1からでしたが僕は用事があったため1日遅れて11/2から参加しました。僕は岩場の経験も少なく、スポンサー活動の一貫での撮影が初めてだったので、ツアーに行く前から先輩達のように高難度の成果を出せるかどうかがすごく不安でした。またノースのスタッフの方たちともほとんど話したことのない人や初めてお会いした人もいたのでうまく打ち解けられるかどうかも心配していました。しかし行ってみるとみんな僕の事をすごく気遣ってくださり、すぐにメンバーとも打ち解けることができました。撮影というものは色々な指示などを受けながらやるのかなと思っていましたが、自分の希望や考えをすごく尊重してくださり自由に登る事が出来、5日間心地よい時間を過ごすことができました。自分で想像していたよりも多くの成果をだすこともでき、とても満足しています。これもノースの方々の手厚いサポートのおかげです。ただ一つ気になった事としては、岩と岩のエリア移動の為、ホテルが毎日変わってしまいなかなか落ち着かず、少し疲れを感じることもありました。

最後になりますが、今回ロックトリップを通して普段あまり会うことのできない徹君と登る機会を与えてくださって本当にありがとうございます。自分とスタイルや考え方がまったく違うので登りを見ていたり、話したりしてすごく勉強になりました。またこのようなツアーがあったら国内外問わず是非メンバーに加えてください。これからもどんどん成果を上げて行けるように日々トレーニングをがんばります。
TOMOA NARASAKI
楢崎智亜
1996年生まれ、 栃木県出身。10 歳でクライミングを始める。2013 年16 歳 リード日本選手権東久留米大会2位。2014年18歳ワールドカップ海陽大会5位。2015 年19歳 ジャパンカップ深谷大会3 位。2015年リードユース選手権印西大会優勝。2015年 ボルダリングユース選手権倉吉大会優勝。アジアユース選手権マレーシア大会優勝。2015年アジアユース選手権マレーシア大会スピード3位。近年は岩場での活動も活発に行 っており海外へも遠征。「Direct North V14」「The Mandala SD V14」など完登。今後もワールドカップ・ 岩場双方での活躍が期待される。
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