Protein Materials: A Revolution in Manufacturing

地球上で最もタフネスの高い素材であるクモの糸は、無限の可能性を持つタンパク質のひとつに過ぎません。20種類のアミノ酸の組み合わせ方を高度にデザインすることによって、未知なる機能を持つ特別な素材を、無数に生み出せる可能性があります。スパイバー社は、既に600種類以上の人工的なタンパク質を設計、合 成、分析し、膨大なデータを蓄積しています。遠くない将来、金属やガラス、プラスチックのように、人類がタンパク質を「基幹素材」として使いこなす時代が到来します。私たちは、志あるパートナーとともに、その新時代を切り拓きます。

Background

11年間の技術革新

コストの障壁

ではなぜ素晴らしいポテンシャルをもつタンパク質素材が普及していないのでしょうか。その最も大きな理由は「コスト」です。発酵の世界には、微生物によるリコンビナントタンパク質の製造コストは1キログラムあたり100ドルを下回ることは困難であるという「常識」がありました。一方、素材の世界では、1キログラムあたり20ドルから30ドルを下回らなければ大規模な普及は困難であることが「常識」とされています。さらに100億ドルを超えるような大きな市場規模を目指すのであれば、1キログラムあたり10ドル以下を目指す必要があります。「発酵」と「素材」、このふたつの世界のコスト水準には大きな隔たりがあり、投資に見合う市場の開拓が困難であったため、これまでタンパク質が「素材」として使いこなされるこ とはありませんでした。

圧倒的なコストダウン

圧倒的なコストダウンを実現するためには多くの技術革新が必要でした。クモの糸をつくりだすためには、タンパク質の分子・遺伝子の設計技術、DNAの化学合成、遺伝子組換え技術、発酵工学、精製技術、紡糸加工技術など、必要な技術分野は多岐にわたりますが、この全てをカバーできる研究チームは世界中に存在しませんでした。私たちは、このテーマに取り組む上で必要な全ての技術要素を内製化し、各プロセス開発の分業化を撤廃、分野横断的な研究体制を構築し、トータルプロセスをゼロから見直しました。そして、技術領域にまたがる多くの課題に対し、地道に、徹底的に考え抜き、合理化と高度化を進めてきました。機能性と生産性の両立、素材のテーラーメイドデザインを可能にする私たちのフィードバックサイクルは、新素材開発のための革新的なプラットフォームです。

Breakthrough

スパイバーは、このフィードバックサイクルを核とした11年間の技術革新の積み重ねにより、産業化に向けた大きな課題となっていた発酵プロセスにおける圧倒的な低コスト化を実現しました。発酵生産実験を本格的に開始した2008年から、生産性は4,500倍にまで向上。その結果、発酵プロセスでの製造コストは 1/53,000になりました。そしてついに大規模な普及を目指せるコストでの生産が視野に入りました。

Breakthrough

Initial Target

アウトドアアパレルから実用化へ

アパレル分野は全産業の11.7%の規模を誇る巨大な産業です。そして輸送機器分野や医療分野に比べれば開発から市場への投入までの期間が短いため、早期 の普及を目指すのであればアパレル分野から実用化を進めるのが合理的です。その中でもより高度な機能性や環境性が求められ、市場規模も大きく、タンパク質 素材が切り拓く世界観との親和性が高いアウトドアは、タンパク質を素材として産業的に使いこなすための入り口にふさわしいフィールドです。

Initial Target