ーーまずはmurren(ミューレン)という雑誌について教えて下さい。

「“街と山のあいだ。”というテーマで、身近な山や自然を他にはない視点で展開しています。特集は毎回思いつきですね(笑)。年2回、その時々の自分の興味や状況によって、周りの人に相談しながら決めています」

ーーザ・ノース・フェイスとのスペシャルエディションはどういったきっかけだったのでしょうか。

「ザ・ノース・フェイスとmurrenで始めた“山でパンとスープの会”というイベントがきっかけです。女性限定で、山が好きな方はもちろん、山に行ったことのない初心者の方が気軽に参加できる企画です。山に登って、スープを作って食べるだけのイベントなんですけど、そういったなんでもないことも山の楽しさのひとつじゃないかなと。今号はそのイベントで作ったスープのレシピと登った山のガイドをまとめているのですが、山に持って行けるよう、半分に折りたためる仕様になっています」

ーーここに掲載されている登山コースはどういった所なのですか?

「初心者の方でも登れる、おすすめコースです。もちろん、こんないい加減な手描き地図で行かれたら困るんですけど(笑)。ここではコースの概略を説明しているだけですので、行く時はしっかりとした地図を持って行ってくださいね」

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ーーイベントで作るスープのレシピは若菜さんご自身が考えているんですか?

「そうです。この12月で15回目を迎えるので、レパートリーが減ってきて、だんだん困ってます(笑)。でも、山での料理は持って行けるものが限られますし、手早くできなければいけないし、いろいろな縛りがあるので、山に慣れている人間でないとわからないことが多い。“食材はこういう状態で持って行くといい”とか、なるべく皆さんの参考になるように考えています。イベントには多くの方が来てくれますが、自分たちでわいわい作る感じが楽しいのだと思います」

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ーー山は昔から好きだったのですか?

「山と溪谷社に編集者として入社して、仕事として否応なしに山に行かされたことで登るようになりました。でも昔から自然は好きでしたし、行っているうちに山のよさを実感するようになりました。山は意外と身近にあるし、自分さえその気になれば簡単に行ける場所もある。8000m越えのヒマラヤから100mの裏山まで、いろんな山があることを知りました。そのうちのどれかひとつが山登りではなく、自分の生活スタイルや好みで山登りをチョイスすればいい。“山”というと頂上まで行かなきゃいけないとか、高い山に登れなければ偉くないとか、そういったことではなく、もっと自分に合った山登りがある。自分の身の丈にあった、でも自然や山のよさを感じられる山登りをすればいいんだと思ったんですね。そして、そうした山のすばらしさを編集者として伝えたいと思っています。」

ーーその後に山と溪谷社を退社し、フリーランスとして再出発されたわけですが、不安はありませんでしたか?

「不安はもちろんありましたが、フリーの編集者でなければできないことをやりたいと思っていたので、結果的にはよかったです。」

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ーー若菜さんは自分が好きなことを仕事にして生活をしていらっしゃいます。そういう生き方に憧れている人も多いと思いますが、それができる人とできない人の差はどこにあると思いますか?

「仕事に対する考え方じゃないでしょうか。世の中には、好きなことを仕事にしたい人と、好きなことは余暇でやって仕事はお金を稼ぐ手段と考えている人の2通りいると思います。好きなことを仕事にするということは決して甘くないし、大変なことなので、絶対に自分はこれでやっていくんだという信念と努力がなければできないと思います。そのためにはしっかりとその仕事の基礎を身につけた上で、時間はかかっても納得できることをひとつずつやっていけば、必ずうまくいくと私は思っています。なにかをやる前に足踏みしている方はすごく多いですよね。でも、やらないと始まらないし、やめることはいつでもできる。まずはやってみること、そして続けることが大切だと思います。続けていれば必ず見ていてくれる人がいて、力になってくれると思います」

ーー若菜さんの言葉に勇気づけられた方も多くいると思います。今後はどのようなビジョンを描いていますか?

「自分が作りたいもの、伝えたいことを本(紙)いう形で出し続けられればいいなと思っています。もちろん本は読者の方があってのものなので、読んで下さる方には感謝しています。本は独りよがりで作っても誰も読んでくれない。やっぱり一番大事なのは、読者の方になにをどう伝えたいか、だと思います。山だったりお菓子だったり、対象は変わりますけど、そのもののもつ本来のよさを伝えることができればと思っています。」

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プロフィール
若菜晃子(わかな・あきこ)編集者。

山と溪谷社入社後、『wandel』編集長、『山と溪谷』副編集長を経て独立。山や自然、旅に関する雑誌、書籍を編集、執筆。著書に『東京近郊ミニハイク』(昭文社)、『東京周辺ヒルトップ散歩』(河出書房新社)、『別冊 徒歩旅行』(暮しの手帖社)、『地元菓子』(新潮社)など。「街と山のあいだ」をテーマにした雑誌『murren』編集・発行人。