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          MOUNTAINEERING

          vol.1

          大自然に誘われて。原生風景が広がり、ヨセミテ国立公園など数々のアウトドアの聖地を擁するアメリカ・シエラネバダ山脈。その多様な地形や気候の変化にも対応できるTHE NORTH FACEの最新プロダクトとともに、登山へ。アメリカを拠点に世界各地でのアウトドア体験を発信するメディア『Field Mag』の編集長Graham Hiemstraによるコラムも合わせてお届けします。

          Photography: Brian Chorski

          COLUMN

          The Legacy of
          the John Muir Trail and
          Must-Have High Sierra Gear

          ジョン・ミューア・トレイルの歴史と
          ハイシエラで欠かせないギア

          Text & Photography: Graham Hiemstra

          カリフォルニア州の壮大なシエラネバダ山脈の端に沿って北へと延びるイースタンシエラは、ハイカーにとってまさに楽園です。 このエリアは、標高4,000mを超える険しい山々や手つかずの高山湖、美しい高地の砂漠、そして初心者から上級者まで楽しめる整備されたトレイルで知られています。 マンモスレイクやアメリカ本土で最も高いホイットニー山といった象徴的な目的地に加え、ジョン・ミューア・トレイル(JMT)やパシフィック・クレスト・トレイル(PCT)といった有名なロングトレイルも存在します。 アウトドア愛好家であれば、一生に一度は自分の足で体験すべき、素晴らしい地域です。

          私自身、イースタンシエラから北に約1,400km離れたワシントン州シアトルで育ったこともあり、ハイキングや自然の中で過ごす喜びや素晴らしさを熟知していますが、シアトルの気候はマンモス周辺の乾燥した高地砂漠とは大きく異なります。 また、ハイキング好きの方なら共感いただけると思いますが、仲間と共有する景色は格別です。最近の暖かい週末に、他州からやって来た2人の旧友と合流しました。 私たちの目的は、共にトレイルを歩きながら自然の中で心身を充足させ、私たち互いのつながり、母なる自然とのつながりを思い出す旅でした。

          イースタンシエラでのハイキングは、ネイティブアメリカンの交易ルート、ゴールドラッシュ時代の探鉱者、そして初期のアメリカ入植者たちの歴史に深く根ざしています。 しかし、この地域が真に脚光を浴びることになった理由は、博物学者ジョン・ミューアの著作と活動にあります。 スコットランド系アメリカ人の環境保護主義者であったミューアは、19世紀後半にシエラネバダの原生地で精神的かつ科学的なインスピレーションを得ました。 彼は現在のヨセミテ国立公園を含む地域を広範に調査し、その成果を文書化しました。これがアメリカの自然保護運動に活気を与え、シエラネバダの多くの地域の保護へとつながっていきます。 彼の名を冠したジョン・ミューア・トレイル(JMT)も創設により、彼がこの地域に与えた影響は今もなお色濃く残っています。 ミューアとこの地への深いつながりによって、後世のハイカーたちのために原生風景として保存する原動力となり、現代の冒険者たちがミューアが称えた自然の美を同じように体験できるチャンスが残されています。 今日、JMTやPCTなどを含む、イースタンシエラを横断する260kmに及ぶトレイルが、ミューアの遺志を受け継ぎ、彼の原生保護のビジョンを作り上げた谷や山頂をたどるルートとして親しまれています。

          風景を楽しみながら、ジョン・ミューアと同じ道のりをたどりたいと考えた私たちは、原生の地形を体感し、新鮮な空気を吸うためだけに、マンモスに集合しました。
          しかし、そのためには適切な装備が必要です。生涯ハイカーでありたいと日頃から考え、アウトドア雑誌の編集に長年携わり『Field Mag』誌の創刊にも至った私の経験が活きました。 普段ニューヨークに住む私にとって、お気に入りの装備を棚から持ち出して使用できる機会は何であれ大歓迎ですが、目的地が象徴的な場所であって、友人たちが一緒ということであれば、なおのことです。
          イースタンシエラの日帰りハイキングでは、この地域特有の多様で時に厳しい地形にしっかり備えることが重要です。 安全を確保し、「Leave No Trace(リーブ・ノー・トレース:自然に痕跡を残さない)」という原則を守るため、ハイキング用装備のバックパッキング・チェックリストを作成しました。

          1. バックパック:必需品をすべて収納できる、サポート力が高く快適で軽量なデイパック(容量:20~30リットル)。
          2. シューズ:足首までフルサポートするトレッキングシューズ。あまりスキルを必要としないハイキングであればトレイルランニングシューズでも構いませんが、岩場や起伏に備え、フルサポートタイプを推奨します。
          3. ウェア:吸湿速乾性のあるベースレイヤーとミッドレイヤーは、体温調節を助け、移動中や休憩中でも快適に過ごすために不可欠。急激な天候の変化に備え、フリースのレイヤーと薄手の防水・防風シェルも用意しました。さらに、パッキングリストの中でも重要な項目「ウェア」の締めとして、日差し対策の帽子と、標高の高い場所での冷え対策用の手袋。
          4. ナビゲーションツール:紙の地形図やGPSアプリなど。個人的には『AllTrails』がお気に入りです。多くのトレイルには道標が配置されていますが、少し離れた場所になると道に迷いやすくなります。
          5. 水と水分補給:Nalgene(ナルゲン)のような再利用可能なウォーターボトルは不可欠。ほとんどのハイキングコースには水源があるため、濾過フィルターを持参すれば大量の水を持ち運ぶ必要はありません。常に1~2リットルあれば十分です。
          6. 行動食:トレイルミックス、エナジーバー、ドライフルーツなど、高エネルギー食品は長時間のハイキングには欠かせません。もちろん、アメリカの伝統的な行動食『GORP(ゴープ:Good Old Raisins and Peanuts/古き良きレーズンとピーナッツ)』も楽しみました。
          7. 日焼け対策:日焼け止め、SPF入りリップクリーム、サングラスなど(標高が高いと紫外線にさらされるため)。
          8. トレッキングポール:急勾配、特に岩場や起伏のあるトレイルでの安定性を高めてくれます。
          9. ヘッドランプ:ハイキングが予想以上に長引いた場合、または早朝にスタートする場合に備えて。
          10. 救急キット:バックパックの上やアクセスしやすいポケットに入れて、すぐに取り出せる状態にしておくことが重要。包帯、鎮痛剤など、普段から使い慣れた救急キットでも、フィールドに出る前に見直して携帯することをおすすめします。

          これらの装備を詰め込み、私たちはコンビクト湖の周りをループハイキングし、その後ホットクリーク・ジオロジカル・サイトの地熱地帯を訪れました。
          コンビクト湖はイースタンシエラの壮大な山々の麓に広がる、美しく澄んだ高山湖です。この湖は最終氷河期の氷河活動によって形成され、そのターコイズブルーの水面は、太古の石灰岩と変成岩からなる壮大な崖で囲まれています。 ループトレイルでのハイキングは、目まぐるしく考えすぎる心のスイッチをオフにし、風や湖の波、セージブッシュのすれる音に耳を澄ませ、その刹那に没頭する時間を与えてくれました。 湖の東端にある峡谷の奥深くまで進むと、バックカントリーに続くトレイルが私たちを誘っていました。 この地域には数多くの目的地が点在していますが、ほとんどがトレイルのネットワークでつながっているため、スタミナと装備さえあれば、誰でも好きな場所に行くことができます。

          この日は、壮大な目的地を追うよりも、景色をじっくり楽しむことを重視し、忙しく移動することはありませんでした。 そのおかげで、珍しいハクトウワシを目撃し、陽射しを楽しんだ後、夕陽を眺めに近くのホットクリークへ向かいました。

          ホットクリークへの曲がりくねった砂利道を下っていくと、まるで古い西部劇の中にいるような気になります。 見渡す限りの壮大な丘陵が連なり、一日の最後には鮮やかなオレンジやピンクの光が辺りを包みます。谷底では、緑がかった青色のセージブッシュが湯気を立てる湖面を取り囲んでいます。 ビューポイントに近づき、私は目を見張りました。地表下のマグマによって熱せられ、時の流れによって風景に刻み込まれた湯気の立つ小川と、その向こう側にあるごつごつした山々とコントラストをなしていました。 非現実的で、まるで見る者を驚かせ、写真の被写体となるべく特別に作られたかのようでした。

          私たちは、岩群の周りをトレッキングポールとシューズを駆使しながら進み、時に立ち止まって自然観察をしながらハイキングしました。 特別な装備として私が持参した、1995年製の富士フィルムGA645中判フィルムカメラ。 ハイキングには少し重いのですが、撮れる写真は他と比べようもありません。 この瞬間を記録し、ずっと記憶に残る一枚を撮るためなら、余分な重量を背負うことも全く苦になりません。 結局のところ、私たちがハイキングをする理由は、こうした瞬間を体験するためです。 思い出を作り、歴史や自然の美しさに触れること。そして、その美しさを友人たちと共有することこそが、ハイキングの醍醐味なのです。

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