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        interview 03

        みんな違ってみんないい、というのが
        私の大好きな言葉であり、人生のテーマ

        Mami Kida | 木田まみ

        Maulea Yoga Studio オーナー、マインドフルネス講師、ヨガインストラクター

        ―木田さんの一日はどう始まりますか?

        まずはベッドの上で生きていることを確認して「ありがとう」と感謝します。その後、タンクリーナーで舌磨きしてから、明かりを落としたお風呂で10〜15分ほど湯船に浸かり、今日の予定をおさらいしたり瞑想したりして整えます。お風呂から出たら、専用のオイルで膣ケアをしたり、パックをしたりすることも。ドライヤーで髪を乾かしながら、洗面台に足を乗っけてストレッチ。このルーティーンは、オリンピック選手の方がやっていると聞いて私も真似しています。その後は夫と一緒に朝ご飯を食べて、余裕がある日は歩いて、そうでなければバスで仕事に向かいます。

        ―1日の終え方を教えてください。

        いつからそう思うようになったのか自分でもわからないのですが、自分の先祖はもちろん会ったことのない夫の先祖も含めて、自分という存在につながる人々への感謝で1日を締めくくるようにしています。たとえネガティブなことが起きても、一人じゃない、見守られていると感じることで、物事がいい方向に運ばれていくという、ある種、根拠のない自信のようなものが湧いてくるんです。その感覚は、自分を律するという行動にもつながっていると思いますし、助けてもらっているのだから、自分がやれることはやろうという気持ちになります。

        ―人間関係などで疲弊することはありますか?

        年齢を重ねるごとに自分への理解も深まり、人間関係で疲れることは少なくなってきたかもしれません。とくにマインドフルネスを始めてからは、自分軸で生きる時間が長くなったことで「べき・ねば」の思考ではなく自分は何が好きで嫌いなのか、心地いいのか心地悪いのかを知り、他者との違いも受け入れられるようになりました。それまでは、他者を優先して自分の気持ちを抑圧することが多かったし、嫌われるのが怖かった。でも、自分に嘘をつかずに生きることを実践していくと、自分の軸ができて生きるのが楽になっていきました。面白いことに、そんなふうに自分が変化するにつれ周りも変わっていくんです。今は、そんな生き方に自信が持てるようになってきたところです。

        ―怒りや苛立ちといった感情にはどう対処していますか?

        実はいままさに、自分への理解を掘り下げていくなかで、自分が気づいていない怒りのポイントやそのメカニズムを学んでいるところです。もともと怒りのエネルギーは少ない方だと思うのですが、怒りとまではいかなくても毎回同じパターンで自分の感情を抑えられないことがありました。なぜそうなるのかを理解したいと思っていたのですが、マインドフルネスの実践を通じて自分の内面の深いところに目を向けるようになると、次第に、自分でも認められていない部分、例えばコンプレックスや短所などを指摘されたときに、過剰に反応していることに気づきました。自分のダメなところを認めたくなかったんだと思います。でも、そういうところもあるな、と受け入れられるようになると、苛立ちや怒りを感じることも減っていきました。

        一方で、怒りの感情が自分を成長させるということもあると思います。例えば「#MeToo」運動について学んでいたとき、自分が当事者ではなかったとしても、「許せない」という感情が未来の女性たちのために声を上げたり行動に向かわせるエネルギーに転換されていくことを実感しました。つまり、怒りがよい社会変革の原動力や結束になることもあるということを学んだのです。もちろん、その逆もあり得るので注意が必要ですが。

        ―木田さんは、ご自身の乳がんの経験を積極的に発信されています。改めて、「健康」について思うことはありますか?

        心と体の健康はリンクしていますが、いつもそれに自覚的でいられるわけではないですよね。癌が健康を脅かすほど大きくなるには10年かかると言われていますが、自分の経験を振り返ると、癌が見つかるまでの10年間の心の状態は必ずしも悪くなかったと記憶しています。仕事も楽しかったし、上昇していくことへの充実感で満たされていました。一方で、食生活は乱れ、睡眠時間は明らかに足りていなかったのに、それに気づいていませんでした。つまり、いくら自分では元気で大丈夫だと思っていても、本当の意味での心身共に健やかな状態ではなかったのだなと思います。だから、心と体の状態に気づいて、自分に優しい行動を取るって大切なことだと思っています。

        癌が見つかり手術した後は、一人で何も出来ないと落ち込みましたが、リハビリを経て自分でも意外なほどに回復していったとき、ああ、体が私を応援しているんだ、と実感しました。それからは、心と体が一致して、たとえ何か一部を失ったとしても大丈夫、そのときなりにできることがあるのだと思えるようになりました。

        ―年をとることに対する不安はありませんか?

        年齢を重ねていくことへの恐怖はないどころか、楽しみです。年をとるほど自分の中の幸福度が高まっていると感じているので、むしろ若い時って大変だったなと思います。更年期についても、とくに心配していません。そのときはそのときで、対処すればいい。

        以前はそんなふうに思っていなかったけれど、長生きしたいと思うようになったんです。それは、家族以外でも人との強いつながりを育むことができることを知り、孤独への恐怖が消えたからかもしれません。みんな違ってみんないい、というのが私の大好きな言葉であり、人生のテーマなんです。一人一人が自分軸で生きているんだけど、みんながいる中で、あなたという個人を受容する。困ったら、サポートし合おうねっていう。時間があればあるほど自分にできることも増えると思うから、長生きして、社会に対してできることをやって、終わりたいなという考えにたどり着きました。