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2019.5.15 | SIDE A

スキルよりも、自分にしかできないことを

ギネス世界記録を10種目保持し、その申し分ない技術力で唯一無二の存在となったフリースタイルフットボーラー・sitz(シッツ)。その目線は、すでに次なる高みへと向けられている。

Interview & text : Hiroaki Nagahata (STUDY)
Photography : Takao Iwasawa (The VOICE MANAGEMENT)
Styling : Momomi Kanda
Hair Make-up : Maira Tsuboi
Edit : Kentaro Okumura

-最初に打ち込んだスポーツは何ですか?

意外って言われるんですけど、小学生の頃は野球に夢中でした。小学生だったし、半分は遊び感覚でしたが。最初はただ、当時仲の良かった友達がサッカー部に入っていて、よく「サッカーボール蹴りに行こうよ」って誘われていただけで。僕はけっこう嫌々な感じだったんっですが、だんだんと思いっきり蹴る快感を覚えちゃって。小5からサッカー部に入って、中学校でもずっとサッカーやってました。

-当時サッカーに関しては他の人よりも上手いという自信があった?

ただサッカーが好きっていうだけで、1番になりたいっていう欲はありませんでした。でも、中2くらいから徐々に試合に出られるようになって、チームも県大会の上位に進んだりしたんで、ちょっと本気でやってみようかなと。

-当時、サッカーチームの中ではどういう立ち位置だったんですか?

チームを引っ張る人とも、引っ張られる人とも上手くコミュニケーションを取れるタイプでした。技術的にも上手いのか下手なのかよくわかんないような、中間の位置。ポジションもミッドフィルダーだったし(笑)。僕はどこか保守的なところがあって。真ん中だと、攻撃にも守りにも転じることができるじゃないですか。ボランチに関しても、全部できちゃう1番おいしいポジションだと思っていました。

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-高校に入るころにはすでにプロを目指していた?

そうですね。親にもそのことを言わず、静かに燃えてた感じです。高校はそこそこの強豪に入ったんですが、学校内ではわりとヤンチャに遊んでたタイプだったので、親は「なんで?」って思ってたはず。喧嘩もしょっちゅうで、腰パンで肩揺らして歩いていましたし(笑)。当時は自分に自信がなかったんだと思います。

-自分の夢のことを誰にも言わなかったのはなぜ?

本当に成し遂げたいものは、人に言わないようにしているんです。

-憧れの人はいましたか?

当時のサッカー日本代表。同じピッチに自分も立てたらなって。「やべっちF.C.」のようなサッカー番組をずっと観ていました。それがのちのちフリースタイルフットボールと繋がるんです。
高校に入って、2~3ヶ月くらいで部活を辞めちゃったんですよ。高校には全国各地からトッププレーヤーが集まっていたんですが、自分のレベルとあまりに次元が違いすぎて……「自分はこんなレベルでプロになろうとしていたのか」って。自分の見ていた世界が狭すぎた。サッカーをやらなかったら学校にいる意味もなかったので、学校も辞めることにしたんです。毎晩親に相談していましたね。

-そして、フリースタイルフットボールと出会った。

そうです。部活をやめようか悩んでる時に、「やべっちF.C.」でフリースタイルフットボールの世界大会の映像が流れていて、ショーアップされたステージでリフティングを競い合っている、その光景が印象的でした。あのとき、気持ちが完全に(辞めるほうに)移っちゃいました。幸い僕の親族には中卒の人が多くて、すんなり辞めさせてくれました。そのあとは、図書館のパソコンで「フリースタイルフットボール リフティング 凄技」で検索して、何とかヒットする画質の荒い映像を自分のガラケーで録画して、技を真似していました。

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-そもそもリフティングは得意だったんですか?

そんなには得意ではありませんでした。ただ、当時地上波の番組で見たフリースタイルフットボールの映像があまりにもかっこよかったので、自分が全くリフティングができなかったとしても手をつけていたはずです(笑)。ストリートのカルチャーなんて今まで無縁だったから、ジーンズにTシャツ姿でボールを蹴りあってて、後ろにはDJがいるっていう、その光景にただただ衝撃を受けたんです。

-映像だけが練習のヒントだった?

いつも学校の帰りに通る橋の下に、ずーっとリフティングしているおじさんがいて、僕と友達は勝手に「リフティングおじさん」って呼んでたんです。ある日、僕が地元の公園で練習していると、その人が声をかけてくれた。そして、リフティングおじさんは地元で活動していたフリースタイルフットボーラーのUG(ユージ)さんだということが判明(笑)。そのUGさんが、今度はジンさんっていう相方を紹介してくれました。駅で待っていたら、向こうから金髪のイカつい人が歩いてきて……そのオーラがめちゃくちゃかっこよかったんですよね。ある時、ジンさんが地元の駅前でブレイクダンサーたちとダンスバトルみたいなことをしていたんですが、ポールを使って逆立ちはするわ、バク転、バク宙はするわで。それを目の当たりにして、僕のリフティングの概念が完全に壊されました。それまで自分は「どれだけボールを回せるか」っていうことばかり考えていたので。

-当時はどんな生活を送っていたのでしょう。

アルバイトが終わったら家の前で練習。1日10時間以上はやっていました。技ができないから、悔しくて泣きながらやっていたこともあります。 しばらくは地元の山口で開催されているお祭りとかでパフォーマンスをやっていたんですが、18歳になった年に初めてフリースタイルフットボールの大会に出場したんです。夜行バスで15時間かけて会場のある渋谷まで行きました。結果、東京予選をトップ8で通過。次へと繋がるよいきっかけでした。ただ、もちろん全体的なレベルは高いんですが、勝ち上がる人たちを見ても「ジンさんの方が全然上手いじゃん」と思っていましたね。

-ジンさんはやはり自分の中で特別な存在なんですね。

なんというか「攻めまくったバイブス」が、他の人とは全然違うんですよね。フリースタイルフットボールに人生の全てをかけていた。逆立ちとか、ブレイクダンスの動きを用いた派手なスタイルをとるようになったのも、ジンさんの影響が大きいかもしれません。「自分もそういうパフォーマンスが好きなんだ」って気づかせてくれた。

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-sitzさんは最近バンドともコラボレーションしていましたよね。ジャンルを横断してきたいっていう思いは強く持っていますか?

はい。僕がもっとも意識するのは、見た人に何を感じてもらえるかということ。ボールが上手く扱えるだけのスキルは正直、どうでもいいんです。

-すでに肩リフティングなど9種目でギネス記録を達成しています。そろそろ次のステージにいきたいという気持ちもあるのでは。

そうですね。フットボールの技術をこれ以上伸ばそうとは思っていません。それよりも、今は身体能力を上げることに集中しています。フリースタイルフットボールに10年取り組んで、大会でもそれなりに満足のいく成績を残せたので、今後は自分にしかできない唯一無二のパフォーマンスで人を感動させたいと思っています。

-そういえば最近、「しばらくはバトルに出ない」と発表されていましたよね。

勝って人生が変わるようなインパクトのある大会は存在しないですからね。今は他ジャンルのパフォーマーに混ざって勝負していきたい。それこそシルク・ドゥ・ソレイユとかも見据えていて。実は、ギネス記録を狙ったのは、ワールドワイドで戦う時に必須の武器だったからなんです。ギネスは日本よりも海外の方がはるかに大きい影響力を持っているので。

-そこまで見据えているんですね。

「淡々とコツコツ」が座右の銘なので(笑)。偉業を成し遂げた人たちは、ものすごい年月をかけて、コツコツ積み上げてきている。スポーツ選手は20代がピークで、30代からは下り坂だとよく言われますよね。でも、30代・40代になっても衰えずに若い頃と同じようなパフォーマンスをし続けていれば、見る人に間違いなく勇気を与えられるじゃないですか。そのために、毎日繰り返すことが一番重要なんだと思います。イチロー選手も「これから自分のピークが来るかもしれない。なぜ誰もそう考えられないんだろう」と言っていました。自分の場合だって、ピークは30代、いやもしかしたら40代かもしれない。感覚的には、身体能力もモチベーションもどんどん上がっているから、できなくはないはずなんですよ。

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Profile

  • sitz

    山口県生まれ、東京を拠点に活動するプロフリースタイルフットボーラー。16歳の時にパフォーマーの道で生きていく事を決意。国内外問わず、これまで数多くのステージを経験し、いくつもの賞を受賞。モデルやインフルエンサーとしても精力的に活動しており、型にはまらないスタイルを確立。現在、フットボールに関するギネス世界記録を日本人スポーツ選手の中で最多、10種目を保持している。

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