ZiNEZ
Make It Beautiful 時代と遊べ。

ZiNEZ

2019.6.05 | SIDE A

何でもアリにすること。可能性を信じること。

ボールを使って、描く。フリースタイルバスケの世界チャンピオン、ZiNEZ a.k.a KAMIKAZEにとって、プレイすることはスポーツであると同時に、芸術表現でもある。

Interview & text : Hiroaki Nagahata (STUDY)
Photography : Takao Iwasawa (The VOICE MANAGEMENT)
Styling : Momomi Kanda
Hair Make-up : Maira Tsuboi
Edit : Kentaro Okumura

-ZiNEZさんは友人からの誘いで何となくバスケを始めた、と他のインタビューで拝見しましたが、もともと運動神経は良い方だったんですか?

運動神経はどうか分かりませんが、球技に関してはドッジボールで怖くて泣いてしまうくらいに苦手でした(笑)。小学生の頃は漫画家志望だったんですよ。僕の父は、本業の翻訳家とは別に版画とジャズベースをやっていて、芸術肌だった。その影響からか、僕はかなり引っ込み思案で、心の拠り所がモノづくりだということに幼少期から気づいていたんです。

-小学校のときに漫画家を志すきっかけになった作品や作家を教えてください。

「漫画ってすごいな」って思わせてくれたのは、『ゴン』(1991〜2002年まで『モーニング』に掲載された田中政志の作品)。セリフが一切なく“絵で読む”漫画なので、読んだ人によって解釈が変わってくる、というつくりが面白いなと。物語の最初と最後を同じように解釈をしていても、人によって中身の解釈が違ったりするんです。あとはジャンプが好きだったので、『ドラゴンボール』と『ワンピース』は夢中で読んでいました。でも、スポーツ系の漫画にはハマらなくて、『スラムダンク』は周りから「間違いないから!」ってゴリ押しされて、しょうがなく読んだって感じでした。それよりもSFとかファンタジーが好きで『NARUTO』とか『ワンピース』みたいに、主人公が何かを目指して強くなっていく姿に魅力を感じていました。子供でも空想できる世界感が好きでしたね。

-音楽もお好きでしたか?

音楽も、最初は嫌いだったんです。父親に「楽器をやってみろ」って言われて弾いてみても、明確な答えがないから、急に「違う!」とか言われて、どうしていいか分からなくて。でも、一人でバスケットボールをやってる時に、音楽が自分のテンションを上げてくれることに気づいて、そのとき初めて好きになりました。『マトリックス』のサントラとか、QUEENのアルバムとか、当時流行っていたものから聴きはじめて、カナダに移住してからは本格的に音楽にのめり込むようになりました。

-お話を伺っていると、想像以上に文化系でびっくりしました。『スラムダンク』にも感化されなかったとなると、バスケは本当に受け身で始められたんですね。

完全にそうです。仲良いヤツがバスケ部に入ったから、と本当にそれだけで。あと、帰宅部ってなんとなくダメな印象があったんで(笑)、何か入るならバスケ部かなと。

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-ストリートバスケットボールとの出会いはいつ頃ですか?

中学校の頃です。プレステで「NBA ストリート」っていう、ストリートバスケのゲームでよく遊んでいたのと、よく行くスポーツ用品店でストリートバスケのDVDを見つけて。ルール無視で派手な動きをしているニューヨークのプレイヤーたちを見て、「ボールを使って自由に“描いて”いるところが、漫画と近いな」と思ったんです。

-その頃は日本でもちょうどストリートバスケが盛り上がっていましたよね。

有明コロシアムで海外選手のエキシビジョンマッチとか、よくやっていましたね。そこではいわゆる “悪い” ヒップホップがかかっていて、観客たちがコートの中に入ってくるくらい熱狂していた。部活だとのバスケでは協調性を求められるけど、ストリートバスケはみんなダボダボな格好で、寝っ転がって前転しながらドリブルしてたりする。自由な姿にシビれたんですよね。

-そこで自分でもやってみようと?

そうです。さっき話したゲームに登場する技を全部真似してみようと思って。もちろん、ゲームの方が現実よりも技が派手なんですけど、その演出が子どもの自分には刺さって、「これを現実世界でできるヤツは少ないんじゃないかな。それってアートになりうるよな」って。だから全部独学ですね。

-根が文化系で球技が得意なわけではないのに、自分でもできる気がしたんですね。

一人でできる、というのが大きかったのかもしれません。ナードだからこそ、ストリートバスケが逃げ込む場所になった。家の前でゲームの真似をしてたら、郵便のお兄ちゃんが「すごいね!」とか言ってくれたりして、それが自信の種になりました。その小さい種が僕を光らせてくれたんだと思います。

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-バスケ部はいつまで続けたんですか?

中2でカナダに引っ越すまで。でも、カナダでもバスケは続けてました。高校を卒業するまでは普通のバスケとストリートバスケを平行してやっていたんですが、20歳くらいからは他のカルチャーを盛り込んだストリートバスケで自立したいと思うようになって。

-両立していた期間が長いということは、チームの規律を重んじるバスケの文化に対して嫌悪感を持ってたわけではなかったんですね。

そもそもカナダではそういう雰囲気ではなくて。日本にいる時は「自分はチームプレーが苦手なんだな」と思ってたんですけど、カナダではその場で集まった人たちでチームを組む場面が多くて、ノリがストリートだから、直感重視なんです。それを目の当たりにして、バスケがもっと好きになりました。向こうではNBAを目指したいと思ったこともありましたね。ストリートからトップレベルまで上がっていきたいなって。

-それを目指せるくらい、自分の実力に自信がついてきた?

ドリブルは誰よりも上手かったと思います。毎日続けていたから。15歳から今まで13年間、ドリブルをつかない日は1日もなかった。それが自信の根拠ですね。

-継続することは強く意識していましたか?

最初の3年は楽しくてしょうがなかったのと、家庭の状況が状況だったので、とにかく現実逃避したかった(笑)。ドリブルしている間は無心になれたんです。途中からは毎朝シャワーを浴びるような感覚で、すっかりルーティンになりましたね。

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-カナダという土地は、ご自身にどういう影響を与えましたか?

嘘が全て剥がれていった時期なのかもしれません。カナダに移住してから、英語の先生だった母が失業してうつ病になっちゃったんです。それで父親を家から追い出して、お金もなくなって……その時に「自分の存在意義ってなんなんだろう?」って自問自答しました。(失業の原因が)僕が「カナダに行きたい」って言ったせいじゃないか……とか、いろいろ考えてしまって。そんなときに自分を救ってくれたのが、バスケと向き合う時間だった。
当時90年代のヒップホップをよく聴いていて、中でもNasとCommonは曲の中で「逆境こそ自分が成長するチャンスだ」とか「自分はできる」みたいな言葉を並べていて。その歌詞を思いながらボールを触ってる時は本当に何でもできるような気持ちで、唯一未来が見えていました。僕にとってフリースタイルバスケットボールは、スポーツでありながらアートなんだって思ったんです。絵を描くのと同じで、ボールがペンなら音楽は紙。でも家に帰ると現実が待っている……その状況が、僕をさらにストイックにさせたような気がします。

-以前ある取材で「日本のストリートバスケのレベルはすごく高いのに、積極的に表現してこなかったせいで、世界ではその状況があまり知られていない」とお話されていましたよね。

多くの日本人は、自分の実績を言いふらすのではなく、心の中でとどめて支えにするけど、アメリカ人は周りに見せつける(笑)。これって、心のバランスの違いだと思うんですよ。何を自然体だとするかの違い。僕はそのバランスを見極めたくて、そのためにいろんな国に行くことは多くの気づきを与えてくれると思っています。

-理想的なバランスを模索していく中で、ご自身では今どのフェーズにいると捉えていますか?

年々その像はクリアになってきているんですが、今は逆に細かい汚れが目立ってきて。汚れっていうのは、欲。なので、今は自分が正しいと思うことを長く続けることに集中しています。欲に屈しず、毎日同じことをする。

ー新しいフリースタイルバスケットボールのスタイルを築くために必要なことは何だと思いますか?

何でもアリにすること。可能性を信じること。すべての方向に可能性があることをポジティブな形で人に伝えることができれば、それはいつか「可能性」から「現実」になる。バスケにしたって、本来はドリブルをちゃんとついてバスケのユニフォームを着てプレイするほうがいいのかもしれません。でも、僕がこの活動を続けていくうちに、(バスケ自体の概念を)もっと広げられるんじゃないかなって。エンターテインメントとして磨けば磨くほど、何を取り入れても説得力を失わなずにいられる。そうやって壁を壊していくことが「今までなかったフリースタイルバスケットボール」に繋がると思っています。

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Profile

  • ZiNEZ

    1990年生まれ。日本とカナダのハーフ。 2004年バスケットボール選手を目指しカナダのVictoriaへ。カナダでフリースタイル・バスケットボールを始め、2008年、2009年と日本で行われたフリースタイル・バスケットボール日本一決定戦において、史上最年少優勝記録と初の連覇を成し遂げる。現在はパフォーマーとしての活動のみならず、日本国内でタレント・モデル・ラジオDJとして活動している。

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