INTERVIEW “Sympathy with 小畑多丘” FIBERPILE®︎×小畑多丘

「原点」のキーワードのもと話を聞くのはB-BOY彫刻家の小畑多丘さん。「B-BOY彫刻家」の肩書きの通り、自身が愛するB-BOYカルチャーからインスパイアされた作品を生み出し続ける小畑さん。彫刻やドローイングと手段を変えながらも、必ず表現の原点であるB-BOYを軸にし続けるその理由や、今感じていることについてお話を伺いました。

―B-BOYのカルチャーとの出合いをお聞かせください。

小学生の時に「天才・たけしの元気が出るテレビ!!」の「ダンス甲子園」やダンス・ボーカルユニットのZOOやM.C.ハマーを見て、「超かっこいい!!」と興奮したのが一番はじめのきっかけですね。自分でもダンスをやりたい!と思っていたのですが、当時、身の回りにダンスができる環境もやっている人もいなかったので、その思いを胸にヒップホップを聴いていました。ちょうど同じ頃、NBAを見るようになって、それからバスケを始めて中学・高校ではバスケ部に所属。ヒップホップカルチャーにどっぷりハマっていた高校生のときに、兄が突然ダンスを始めて、自分もついにダンスを始めました。

―高校卒業後は、浪人時代を経て東京藝術大学に進学されていますが、美術を志すきっかけは何だったのでしょうか。

高校は商業科で必然的に簿記関係の職に就くんだろうなと思っていました。ですが、心のどこかで嫌だなと思っている自分もいたんです。そんな時に兄が美術予備校に通い始めて、「自分も好きなことをやればいいんじゃないか」と思うようになった。ずっとダンスをやっていたので、自分が出演する側で映像に関わりたいと思ったんです。友人の勧めで映像の分野に強いという美術予備校に進んだのですが、入ってみたら「出演する側」ではなく、「製作側」の分野だった(笑)。完全に僕の勘違いだったのですが、勉強してみたら製作側に興味が出てきたんですよね。予備校時代にヤン・シュヴァンクマイエルというチェコのアニメーターの作品と出合って衝撃を受けて、自分も粘土でダンサーを作り、映像作品を作ったことがありました。この頃から立体での表現に惹かれ、彫刻科を受けて進学しました。

―小畑さんの作品は、ダンス、映像、彫刻と表現の手段が変わっても、モチーフはいつもB-BOYからブレることはありません。違うモチーフのものを作りたいと思ったことは?

「B-BOY彫刻家」と名乗っている通り、表現の原点はいつもB-BOYにあります。単純に、「自分が好きだから」というのがその理由で、「アートをやりたい」ということよりも、自分が好きなB-BOYをどう表現するかというモチベーションで物を作っているんですね。流れる水も、受け止める器がなかったらただ流れて広がって蒸発して、それで終わりじゃないですか。最初に「B-BOY」という器を決めて、そこに思考を蓄積させていく感覚。いいものでも悪いものでも、蓄積させることで何かしらの形になると思っています。ひとつの物から派生して、新しいものができることが面白いから、「B-BOY」から表現することができなくなったら、それは自分がクリエイティブじゃなくなったということだと僕は思っているんです。

―表現の幅を広げていったり、生活して他のものから刺激を受けたりしたときに、「B-BOY」という原点に立ち返るために意識的にしていることはありますか。

人が作った物以外、自然からは大いに影響を受けています。具体的には自分のテーマである「重力と空間と動き」のことを考えているのですが、それは「B-BOY」の表現にも繋がっているものですし、自分の中でブレることはないんですよね。「どうしてそんなにB-BOYに惹かれるんだろう」と自分の興味を掘り下げていった時に、自分はダンスの「体が急に反転する動き」や、「重力を感じさせない動き」に面白さを感じていると気がついたんです。そうやって分解していくことで、新しい表現が生まれる。例えば、ドローイング作品は、キャンバスを立てずに床に置いた状態で制作しています。キャンバスを立てると、上から下に重心が作用しますよね。天地の概念をなくして制作し、ダンサーの重心が移動する様を重複的に描いています。

―作品を通して、受け取る側の人に感じて欲しいことはありますか。マクガフィンの読者には、ダンサーやダンスファンも多いので、「これは見ておくべき」というシーンがあれば教えてください。

作品を作る時はかなり主観的なので、「これを観た人がこう思ってくれたらいいな」と考えていることはありません。自分にとって面白いか面白くないかということでしかないので、それが人の目を介してどう伝わるかは結果でしかないですね。単純に「かっこいいな」とか「面白いな」って思ってもらえたらありがたいですし、僕の作品をきっかけに「B-BOY」やダンスカルチャーに興味を持ってもらえたら嬉しい。 自分が好きなのは、80年代とか90年代の「B-BOYカルチャー」で、オールドスクールとニュースクールが混在するその時代のものだけでここまできている気がします。ただダンスも時代に伴ってどんどん新しくなっていくし、進化していると思うので、“新旧”の枠に囚われずになんでも見てみると良いと思います。大切なのは、自分が好きだと思った物事があったら「どうしてこれが好きなんだろう」「何に感動したんだろう」と掘り下げて、自問自答して自分を理解することが大切だと思います。

―今回コラボレーションしたFIBERPILE®︎ですが、どうしてこのデザインにしたのでしょうか。

以前、自分でTシャツを作ったことがあって、その時には友人にボディとなるTシャツを着てもらって、その背中にいきなりインクを乗せてドローイングしたものをサンプルにして、それを再現してTシャツを作りました。多くはPC内でデザインしたものを、縮尺を決めて配置する、という作業になると思うのですが、そうやって直接背中に描くことでデザインの縮尺、配置を後で考える必要が無くなる。今回も、ボディを床に置いてFIBERPILE®︎の大きさで型紙を作り、そこに感覚に従ってドローイングしたものをベースにしています。FIBERPILE®︎の立体感を出すために、刺繍の間にスペースを作ったのがこだわりですね。実際仕上がったものを見てみて、ドローイングの濃淡の再現性や、ショルダーのラインをまたいでダイナミックに刺繍されているところが気に入りました。

―どんなシチュエーションで着たいですか。

今回コラボレーションすることになって、ヘリーハンセンの原点が林業従事者の作業着だったと聞いて驚きました。自分にとっては90年代のヒップホップシーンで着用されていたイメージが強かったので、意外でしたね。自分もその原点に近い形で、彫刻の作業をしているときに着用したいです。

―最後に、同世代の視聴者に向けて何かメッセージをお願いします。

好きなことや何かを表現したいという気持ちがあるなら、それに対する自分の直感を信じるのが大切だと思います。周りから色々な影響を受けると思うけれど、自分が純粋に好きなものに向き合って欲しいですね。たくさん自問自答して、直感でいいと感じたものにはどんどん反応していって欲しいです。

HELLY HANSEN×小畑多丘
FIBERPILE® Jacket

Price: ¥25,300
Color: ネイビー(N)
Size: WM、WL、M、L
(GOLDWIN WEB STOREではノベルティは商品とは別に1か月程度で到着します。)

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PROFILE
小畑多丘

B-BOY彫刻家。自らもB-BOY *であり、木彫による人体と衣服の関係性や、B-BOYと彫刻を端緒に生まれる空間、動き、重力を追求、彫刻以外のメディアでも精力的に表現し続けている。 *B-BOY(ブレイクダンスをする人)

Instagram: @takuobata

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