『重要』ゴールデンウィーク期間中の出荷に関して
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        WORKING FISHERMAN Vol.07

        犬山市観光協会・木曽川うかい稲山 琴美

        名古屋駅から車で北へ40分。現存する最古の天守を持つ国宝犬山城があり、「尾張の小京都」とも言われる犬山市は、木曽川が濃尾平野に流れ出る場所に位置し、古くから物流や政治の要所として栄えてきた。木曽川の風物詩でもある鵜飼は、海鵜を飼い慣らして鮎などの川魚を獲る伝統漁法のひとつ。犬山では340余年前に、犬山城3代目城主成瀬正親が御料鵜飼として始め、鵜匠を保護したのが始まりと言われ、現在は観光を取り入れながら、毎年、鮎漁の解禁される6月1日から10月15日まで木曽川で鵜飼が行われている。稲山琴美さんは、2013年、東海地方初の女性鵜匠としてデビュー。出産・産休を経て、犬山市観光協会の職員として「木曽川うかい」のPRにも奔走している。

        小さい頃から外で遊ぶのが好きなタイプで、動物も虫も大好きでよく捕まえて遊んでいました。兄と妹がいる三人兄弟の真ん中で、性格の悪い嫌なやつでしたね(笑)。大人を困らせてやるという気持ちがあって、笑ってと言われたら笑いたくないし、お遊戯なんかも全然やらないような、あまのじゃくだったんです。習い事はダンス、水泳、ピアノ、習字、そろばん。一番長くやったのは、3歳から中学卒業まで続けたジャズダンスでした。母親がジャズダンスをやっていたので、同じ先生の教室に行くことになって、市民祭りで発表会に出たりしていましたね。中学の部活ではバドミントンをやって、高校では友達と遊ぶためのお小遣い稼ぎでバイトばかり。高校に入る前、ちょうど反抗期で先生とケンカしてしまって、ダンスは辞めました。私の子供が今1歳半で、最近少しずつ踊れるようになったので一緒に踊っています。男の子なのですが、名前は奏(かなで)。私が"琴"美で楽器なので、子供は演"奏"するという繋がりから。

        高校を卒業してからは特にやりたいことがなく、大学に行く気もなかったんです。でもまだ働きたくなかったから、専門学校の道を選びました。動物の専門学校に応募しようと思い立って体験学習に行って、合格。私が入ったコースは、動物園・動物飼育専攻のアニマルトレーナーコースといって、動物園の飼育係になるコースでした。動物園のこと以外にも、牧場の羊や牛の餌の分量を勉強したり。2年で卒業して、爬虫類や猛禽類、小動物をメインに扱うペットショップに就職したのですが、契約社員から正社員になるというタイミングで退職しました。その後、ハローワークに通いながら次の仕事を探しているときに、犬山市の鵜匠募集の記事を見つけたんです。少し興味を惹かれながらも、どうせ男の仕事だろうから応募しても受からないと思っていたのですが、応募してみるとトントン拍子で犬山市観光協会に入社することになって。それから入社二日目に市長の前で花束を貰ったり、あれよあれよという感じで辞める間も無く現在に至ります。

        面接をして、合格通知を受け取るというような流れはなく、「次はいついつに来て」という感じでした。鵜匠としての仕事がシーズンオフの時は、毎日鵜の世話をしながらお米とったり、藁を叩いたり、薪割りをしたりする仕事のほか、観光協会なので犬山を広めていくための仕事もあります。鵜が可愛いからいいかと思っていましたが、意外と鵜と触れ合う時間も少なくて。いろんな葛藤もありましたが、辞める間もなくここまできました。「東海地方初の女性鵜匠がデビュー」なんて記者会見を開かれた時は、やられたなと思いましたね(笑)。ネットとかテレビとか全国ニュースにもなって複雑というか、正直はじめはついていけなかったです。素人なのに2ちゃんねるにも無茶苦茶悪口を書かれて心も折れるし。でもその2ちゃんねるの記事を見せてきた人に、「どうせすぐ辞めるんでしょ」と言われた時、子供の頃のあまのじゃく精神が出てきて、「これは辞めるわけにはいかない」と思ってしまって。今となっては笑い話ですけど(笑)。

        頑張って続けているうちにいろんな人に声をかけてもらえるようになりました。先輩の鵜匠の方々もみんな優しいので、聞けばなんでも教えてくれます。先輩方の動き方の動画を撮って見ながら覚えたり、分からないことがあったらすぐ聞いて、体で覚えています。今となっては楽しいことも増えてきましたが、毎年辞めようと思っていましたし、今でも思っています。嫌になったらいつでも辞めればいいやと思っていないと続かないんですよ。鵜飼のシーズンは一年の4ヶ月間だけなので、やっとできるようになってきたと思うとシーズンが終わってしまう。私は妊娠後、育休期間を経て今年復帰したばかりなので、また一からやり直しです。

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