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BOOK #1

Sep, 2020

「共生」からNATUREを考える

●ソーヤー海『都会から始まる新しい生き方のデザイン』エムエム・ブックス、2015年
●マヤ・ルンデ『蜜蜂』NHK出版、2018年
●津久井五月『コルヌトピア』早川書房、2017年

環境問題が深刻化し、絶滅の危機に瀕している動植物も増えている世界にあって、自然との「共生」はわたしたちにとって喫緊の課題として浮かび上がっている。これまで人類は(当たり前ながら)自分たちにとって快適な環境をつくり出すべく文明を発展させてきたけれど、もはや動植物のみならずモノも含めた人間以外の存在を利するような世界をつくらなければ、人類もじきに滅亡してしまうのかもしれない。

とはいえ、ひとくちに「共生」といってもそのあり方はさまざまだ。手始めに身近な生活から考えてみるのであれば、ソーヤー海の『都会からはじまる新しい生き方のデザイン』を読んでみるのがいいかもしれない。「パーマカルチャー」と呼ばれる、持続可能な生活・文化・社会のシステムをデザインする営みの実践者でもある著者のソーヤー海は、都会の中で生きながら自然との関係性のリ・デザインを試みる。本書が「EDIBLE」「DIY」「EDGE」「GIFT」「STOP」という5つのキーワードに沿って紹介する事例は、コミュニティガーデンや電力のオフグリッド化からまちづくりのデザインまで、じつにさまざま。数々の実践からは、これまでの都市生活とは異なるかたちでわたしたちが自然と共生する可能性が学べるだろう。

ノルウェーの作家マヤ・ルンデの『蜜蜂』からは、さらに視野を広げた共生の問題について考えられるだろう。ドイツでは2017年のベストセラーに輝き33カ国以上で刊行されている本作は、1852年のイギリスと2007年のアメリカ、2098年の中国を舞台に、蜜蜂にかかわる3つの家族をめぐる物語だ。本作は「蜜蜂が滅亡したら世界はどうなるのか」という問いから発して過去・現在・未来の物語を交錯させていくけれど、これは現にわたしたちが生きる世界の問題でもある。実際に2000年代以降には世界各地で蜜蜂の大量死が問題となっており、その原因は農薬に含まれるネオニコチノイドなる物質にあるといわれているからだ。本作ではすでに蜜蜂がいなくなった世界で人間までもが絶滅の危機に瀕する様子が描かれるが、それは未来のわたしたちの姿でもあるのかもしれない。人類がいかに自然=NATUREとの共生のバランスのなかで生きているのか、わたしたちは小さな蜜蜂の姿から学ぶことになるだろう。

かように、文学の想像力はさまざまな共生のあり方を教えてくれる。津久井五月による『コルヌトピア』は、SFを通じてオルタナティブな可能性を提示しているともいえそうだ。本作が舞台とする2084年の世界では植物の生理機能を演算に応用する技術が生まれており、東京は緑に覆われた世界有数の「計算資源都市」として描かれている。都市や建築に緑を取り入れようとする試みはもちろん現代においても盛んに行なわれているが、なかには“共生”に失敗することも少なくない。植物に覆われた2084年の東京は、果たしてわたしたちの未来でもあるのだろうか。NATUREとの共生の可能性は、数多の物語のなかにもまだまだ眠っていそうだ。