TE ARAROA TRAIL

3000km THE LONG PATHWAY

About TE ARAROA TRAIL

先住民族マオリの言葉で「長い道のり」を意味するテ・アラロアは、ニュージーランド国内で最長の3000kmの距離を誇る自然遊歩道です。北島北端部のケープレインガを出発して最南端のブラフに辿り着くまでの長い道のりと景観は多様性に富み、旅人の目を終始飽きさせません。山や森に刻まれた稜線や海岸の砂浜、牧草地、市街地など、さまざまな土地を踏みしめながらこの国特有の自然や文化と触れ合う体験は、まさに冒険そのもの。その主な見どころを紹介します。

  • 全長:3,006km(1,900マイル)
  • 所要日数:3~5ヶ月
  • 累積標高:77,847km(高度上昇)・77,924km(高度下降)
TE ARAROA TRAIL MAP
90 Mile Beach

1.90 Mile Beach

砂浜の道が90マイル続くタフなセクション。
「長い道のり」は、ここからスタート !

Whanganui River

2.Whanganui River

国内で3番目に長い川をボートで渡る。
このエリアは動植物の種類も豊富で冒険気分が満喫できる

Tararua Ranges

3.Tararua Ranges

標高1500メートル級の山々を結ぶ、全長約80キロの尾根道。眼下には高山地帯ならではの壮大な景色が広がる

Lake Angelus

4.Lake Angelus

ネルソンレイクス国立公園内に位置する神秘的な佇まいの山上湖。湖畔には美しいHUT(山小屋)が建っている

Lake Hawea

5.Lake Hawea

氷河に削られてできた湖を見下ろしながら歩く尾根道。まるで鳥になったような気分が味わえる

macpacアンバサダーが語る
ロングトレイル〈テ・アラロア〉の旅

エリナ・オズボーン

 北端のレインガ岬から南端の町ブラフまで、およそ3000キロを繋ぐ〈テ・アラロア〉。macpacアンバサダーであるエリナ・オズボーンは、開発中のバックパックを背負い、およそ4ヶ月かけて踏破しました。マオリ語で〝長い道のり〟を意味するトレイルを歩いた映像作家に、母国を縦断する意義について聞きました。

 ニュージーランドは二つの島に分かれていて、北島はどちらかといえば文化的な体験を多くでき、南島はより大自然を満喫できる。例えば北島にはワンガヌイ川を漕いで下る箇所があって、マオリの諺に「Kõ au te Ãwa, kõ te Ãwa kõ au」という言葉があるんです。「私は川であり、川は私である」という意味で、つまり大地と人は繋がっていると。実際に北島ではマオリの信仰の言葉がリアルに感じられるんです。 一方で南島には、より険しい山があり、牧草地から離れて、山の奥深くに分け入ることができる。私が歩いた2021年は、かなり乾燥していましたが、それでも南島のトレイルどこを歩いても必ずぬかるみは付き物で、木の根の蔓延ったトレイルにも出くわしました。以前にアメリカのPCT(Pacific Crest Trail)を歩いた経験から言わせてもらえば、〈テ・アラロア〉の方が格段にワイルド。決して整備されたトレイルを期待してはいけません(笑)。ずっと美しい景色が続くわけでもないし、延々と牧草地を歩きながら「これは自然のランドスケープではない」と思ったとしても、それもニュージーランドの一部。その経験すべてが尊いと思うんです。「この国を歩いている」という実感を得たいなら、パドック(家畜の運動場)を歩くことも受け入れなければ。

〈テ・アラロア〉のとても大きな要素は、人との出会いだと思う。バックパックを背負って歩きながら、それぞれの土地で生まれ育った人々から暮らしについて聞く。それこそがもっとも得難い経験だったと思います。彼らは自分がどこから来て、どこへ行こうとしているのか、とてもよく知っているから。彼らの言葉は示唆に富んでいて、私を含めた多くのハイカーにとって人生のアドバイスになっていました。なにせロングトレイルを歩く人たちのほとんどは、変化を求めていたり、心に傷を負っていたりすることが多いから。私は映像作品のために、どうして歩く決断をしたのかと尋ねていたけれど、失恋が理由だった人たちの多いこと(笑)。ほとんどのハイカーは〈テ・アラロア〉を踏破すれば、日常生活でも大きなことができるはずだと考えていました。この長い道を歩くことによって人生の土台を築き、自信を持って未来へと進めると。それはおそらく事実で、とても素晴らしいステップだと思います。

私自身に関して言えば、PCTに挑戦した理由は失恋だったけれど(笑)、〈テ・アラロア〉を歩いて、より内面的な変化があったように思います。私は「外へ出たい」と強く思いながら育ったんですね。ニュージーランドで生まれ育つと、この国はとても小さく感じられるし、観光客として自分の国を旅行することは、それまでほとんどなかった。でも、コロナ禍で外国へ行くことが難しくなって、「今こそ自分の国を見る絶好の機会だ」と決断したんです。〈テ・アラロア〉を歩くハイカーは、みんなトラベラーですから。踏破してみると、自分の国に対する感謝の気持ちが、とても強くなりました。

〈テ・アラロア〉の道は、土地との結びつきを重んじるマオリの伝統的な信仰に由来します。この道のりをすべて歩いた私は、決してその結びつきを忘れない。どれほど自分がニュージーランドと深く結びついているのか、きっとまた新たな旅に出た時に、そのことに気がつくのだと思います。

エリナ・オズボーン

エリナ・オズボーン

ロングトレイル踏破の記録を映像作品として発表。〈テ・アラロア〉では開発中のバックパックを背負い、水筒ポケットの位置など細かな改良点をフィードバックしている。ニュージーランド人の父と日本人の母を持つ。 https://linktr.ee/elinaosborne

エリナ・オズボーンと風景写真

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ディラン
日本の妙高高原でスキーガイドをしていたこともあるディラン。
デイバック〈KAHUNA〉は、もう15年以上使っている。アーサーズパス国立公園の川に泳ぎに来ていた。
トモ
ハンターのトモは、テント、寝袋、レインウェアなど装備一式をすべて詰め込み、
山奥で眠って鹿を撃つ。バックパックに求めるのは、「とにかくタフさ」と語った。
クラークとマティアス
かつてネイチャーガイドとして働いていた麦わら帽のクラークとCAPを被ったマティアス。
「この素材が好きなんだ」と30年来の相棒であるバックを見せてくれた。