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          Woman in Motion
          Woman in Motion

          Woman in Motion

          動き続ける想像力

          舞台の上で、身体だけでなく、光や音、空間そのものを含めてひとつの「環境」として表現をするハラサオリ。
          NEUTRALWORKS.が大切にしているのは、心身がニュートラルな状態に整うことで、人間の最も本質的なテクノロジーである想像力が自然に働き出すこと。それは、身体の表現を通じて、人間の可能性を探求するダンサーの姿勢に、どこか重なっているように感じられる。
          「想像力が持つ豊かさ」や「立ち止まらずに動き続けること」について、ハラサオリ自身の言葉を通してひも解いていく。

          Woman in Motion
          Woman in Motion

          自分が作っている作品は、何か一つの答えを伝えるというより、それを観た人一人ひとりの自由な想像を引き起こす“装置”のようなものだと思っています。

          一つ一つ言葉を選ぶように語るハラサオリのその間合い自体が、舞台の上のダンサーの身振り、光、音、舞台美術、それらを丁寧に組み上げて作る彼女の作品を雄弁に物語る。

          最近よく思うのは、人は“誰かが踊っているのを見るのが好き”というより、本当は“自分が踊りたい”という気持ちを、誰もが持っているんじゃないかということなんです。舞台で踊るというよりは、盆踊り、クラブ、フェスみたいな場で没入して踊り続ける間に普段意識している<自分>という意識を一度手放して、意識をニュートラルに整えるというか、もっと原始的な感覚に戻ろうとする欲望がある気がしていて。

          その“抽象的な身体の感覚”を、もっと共有したいという考えがあります。もちろん作品に込めた想いなどもあるけれど、それはごく一部でしかなくて、劇場に来て作品を観ることで生まれる抽象的な運動や共感の感覚は、その人の中に確実に宿るものだと思っていて。それを持ち帰ってもらえたら、それでいいなと。

          ハラの踊ることの原体験は、幼少期に遡る――

          学校の成績は良くなかったし、運動も苦手で、点数やタイムがつくものは全部ダメ。それにずっと劣等感や不安感があったんです。ただ、絵を描いたり踊ったりしているときだけは、それを忘れられました。数値化されない世界が確かにあって、子どもながらその世界に自分は救われたし、そういうものが社会に必要だと身をもって確信していました。

          評価や比較から解放される場所。ハラにとってアートは、幼い頃から“セイフティスペース”だった。それから中学・高校とダンスを続けたのち、大学では一度デザインの道へ進む。

          デザインを学んでいるうちに、自分のクリエイティビティの軸は、やっぱり身体なんだと確信しました。大学の課題を通して、プロダクト、グラフィック、空間、いろいろ学びましたが、どんな媒体でも“身体がどう関わるか”という視点で考えていたんです。コップのデザイン一つでも、どこを持たせたいのか、どう触れてほしいのか、という身体感覚が前提にありました。

          ただ、2011年の卒業のタイミングで進路が大きく変わりました。自分は芸術やデザインを通じて社会とつながることを求めていたのに、それらに関連する展示会やプロジェクト、自分の大学の卒業制作に至るまであらゆるものが、明確な理由があるわけではなく“自粛”という形で中止になってしまった。芸術は役立たずだと社会に突きつけられたような気持ちになりました。ただ自分にはそれが必要だという気持ちだけは消えなかった。

          ハラの踊ることの原体験は、幼少期に遡る――

          学校の成績は良くなかったし、運動も苦手で、点数やタイムがつくものは全部ダメ。それにずっと劣等感や不安感があったんです。ただ、絵を描いたり踊ったりしているときだけは、それを忘れられました。数値化されない世界が確かにあって、子どもながらその世界に自分は救われたし、そういうものが社会に必要だと身をもって確信していました。

          評価や比較から解放される場所。ハラにとってアートは、幼い頃から“セイフティスペース”だった。それから中学・高校とダンスを続けたのち、大学では一度デザインの道へ進む。

          デザインを学んでいるうちに、自分のクリエイティビティの軸は、やっぱり身体なんだと確信しました。大学の課題を通して、プロダクト、グラフィック、空間、いろいろ学びましたが、どんな媒体でも“身体がどう関わるか”という視点で考えていたんです。コップのデザイン一つでも、どこを持たせたいのか、どう触れてほしいのか、という身体感覚が前提にありました。

          ただ、2011年の卒業のタイミングで進路が大きく変わりました。自分は芸術やデザインを通じて社会とつながることを求めていたのに、それらに関連する展示会やプロジェクト、自分の大学の卒業制作に至るまであらゆるものが、明確な理由があるわけではなく“自粛”という形で中止になってしまった。芸術は役立たずだと社会に突きつけられたような気持ちになりました。ただ自分にはそれが必要だという気持ちだけは消えなかった。

          Woman in Motion
          Woman in Motion
          Woman in Motion

          誰にも頼らず、自分一人で完結できる表現。その手段として、ハラは再び踊ることを選ぶ。

          学生なりに“社会のためのデザイン”を本気で考えていたのに、こんなふうに排除されるなら、最初から自分のエゴだけでやって“無意味でいい、一人でやる”と言えるほうが健康だと思った。誰にも依存しない手段として自分の“踊る身体”を思い出したんです。この出来事が今のところは最も大きなキャリアの分岐点です。

          その後、ハラは、デザインとアート、身体と社会の関係において歴史的に重要な運動であるバウハウスを生んだドイツへと渡る。

          バウハウス大学への交換留学から始まり、在外研修やベルリン芸大での研究、作家活動を含めて約10年間、ドイツと日本の二拠点生活をしていました。ベルリンはアーティストにとても寛容かつ支援する環境も充実していて、フリーランスのダンサー向けのレクチャーやワークショップが至る所で開催されており、理論と実践を濃厚に学ぶことができました。

          一方で、幼少期から専門的に訓練を積んできたダンサーたちに囲まれ、焦燥感も大きかったという。

          23歳からダンスアーティストになりたいというのは完全に手遅れみたいな状況で、人の何倍もやらなきゃと思って。ドイツへ留学した最初の年は年間でダンスを200本観ると決めて、オペラハウスのバレエからアングラのパーティーまで、とにかくあらゆる空間へ飛び込んで知らない“ダンス”と出会いました。それが今の自分のベースになっていると思います。

          渡独当初は日本のアートやダンスを取り巻く環境への失望から「二度と帰らない」とさえ思っていたハラ。しかし、次第に心境に変化が訪れる。

          昔は理解されないことにフラストレーションがありました。デザインをやっていた頃は“100%伝わらないこと=失敗”と評価されていたので、すごく怖いとも感じていました。それに、私が素材として使うのは自分=女性の生身の身体なので、社会的に消費されがちで理論武装にすごく執着している時期もあった。でも年を重ねて、経験や技術がつくにつれて、“言わなくていいことを言わない”ことへの抵抗がなくなりました。

          今は、踊りを再開したときの“一人でもやる”という孤独な覚悟と、その上で自分のチームや観客といった“他者”を信じて創作すること、その両方を同じくらい大事にしています。

          Woman in Motion
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          それと同時にハラは、予期せぬアクシデントを「強く望んでいる」とも語る。想定外の出来事にどう対処するかによって、自分がこれまで何を積み重ねてきたのかが、最も鮮明になるからだ。

          予期せぬ事態に試されること自体がワクワクする瞬間で、そこには、これまで知らなかった自分自身に出会う可能性があります。自分の作品に出演してくれるパフォーマーにも、そこはすごく期待しています。切り抜け方を見れば、自分のアイデアがどこまで伝わっているのか、哲学を本当に共有できているのかが、すごくよくわかる。

          忘れられないアクシデントで言えば、自分が制作した作品で、演者の一人が雨で濡れた床で、転んだんです。でも彼女は咄嗟の機転で、転んだ時と同じ身体の動きを何度も繰り返して、振り付けの一部にした。普通だったら自分の身体に何が起きているのか全くわからなくてもおかしくないのに、一瞬のうちに身体が床に触れるまでの全身の動きを記憶して再現するのはダンサーならではの身体的な記憶力だと感動し、それと同時に、自分の作品づくりのプロセスが間違っていなかったと確信を持てました。

          ハラが一貫して大切にしているのは、完成にたどり着くことではなく、状態が変わり続けていることそのものなのかもしれない。

          寺山修司が“満腹は不幸だ”と言っていますが、すごくわかる気がします。満たされきった状態は自分にとっては不幸に近いというか、不快なんです。むしろ欲望が満たされつつある、その途中のプロセスが一番いい。

          完成形を目指すことや、表現を確立することは、ハラの関心の中心にはない。むしろ、変わり続けている状態に身を置き、とどまらずに動き続ける自由のほうが、はるかに本質的だという。

          作品も、誰にも定義されない状態を、毎秒つくり続けたいという感覚があります。それは踊っているときに、特に強く感じます。硬直した状態が続かないように、“呼吸”を思い出させるような時間をつくりたい。ユーモアやウィットもすごい大事ですね。これは、パフォーマンスに限らず、硬直・停滞した社会に余白をつくってくれるという意味で、想像力や文化はやっぱり必要だと信じています

          彼女にとって何かが満ちきる直前、変化の只中にある時間こそが、もっとも生き生きとした瞬間なのだ。定型を拒み、変化を歓迎し、呼吸を保ち続ける??立ち止まることなく、常に現在進行形であることで想像力と可能性はひらき続ける。

          Woman in Motion

          Q & A

          Q1

          行き詰まった時の解決策は?

          “アイデアは水辺に宿る”と聞いたことが
          あって、水辺で長めの散歩をしたり、
          湯船に沈んだりします。

          Q2

          職業病はありますか?

          些細な動作でも、
          こっそり時間や空間のリズムをとってしまう。

          Q3

          朝起きてからのルーティンはありますか?

          家中の窓全開で換気とストレッチ。
          寝ている間に空気が淀んでしまう
          気がしていて、リフレッシュをして
          酸素濃度を上げています。

          Q4

          カラダやココロのコンディションが
          良い時のサインはありますか?

          目がぱっちり開いている。
          今日は2mmくらい開き足りないかも。

          Q5

          内緒にしている
          ギルディープレジャーはありますか?

          普段カットしているPたち
          (パン・パスタ・ピザ)を好きなだけ食べる!

          Q6

          いつか行ってみたい場所はどこですか?

          ホーリー・マウンテン

          Q7

          もしダンサー/アーティスト以外の
          職業になれるなら?

          ラッパー

          Q8

          無人島に何か一つ持って行くとしたら、
          何を選びますか?

          乗馬。山や川辺を走る
          ウエスタンスタイルです。

          Q9

          落ち込んだときの、
          ささやかな立て直し方は?

          自分に花を贈る

          Q10

          今の自分に一言かけるとしたら?

          からだに貞(き)きなさい

          PROFILE
          ハラサオリ

          SAORI HARA

          振付家、ダンスアーティスト。約10年のベルリン滞在を経て、現在は東京を拠点に活動。創作においては、特定の環境下での知覚体験を振付的に再解釈し、「上演」という行為を通して感覚と記憶の編成プロセスへの介入を試みる。
          舞台、現代美術、音楽、ファッションなどの分野を横断しながら、自らのダンスの実践領域を拡張している。これまでのコラボレーターに、小田朋美、大谷能生、森山未來、Kyoka、山川冬樹、小金沢健人、角銅真実、蓮沼執太、U-zhaan、HATRA、NIKE、BLESSなど。
          東京藝術大学デザイン科修士、ベルリン芸術大学舞踊科修士修了。2025-2026年度セゾン文化財団セゾン・フェロー。

          ハラサオリ

          photo by Nanako Kobayashi

          Publication date : 2026 02 20

          Creative Director : SUB-AUDIO

          Art Direction: ampersands

          Photographer : Yuri Iwatsuki

          Photographer assistant: Miru Fujimura

          Hair & Make : Yuka Toyama

          Interview: Yusuke Nishimoto (SUB-AUDIO)