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          F26:Archetype

          WHAT LASTS.

          時間とともに、残っていくもの。

          ARCHETYPEのコンセプトは「10年着られる服、10年後も着たい服」。
          その価値を考えるとき、浮かんでくるのは服だけではありません。ものを選ぶこと、使い続けること、日々の習慣、そして、自分自身との向き合い方…。
          今回話を聞いたのは、スタイリストの金子夏子さん、LANDSCAPE PRODUCTS代表の池田陽介さん、HiKEI主宰の久川誠太朗さんの3名です。
          共通していたのは、流行や周囲の価値観に答えを求めるのではなく、それぞれの感覚を頼りに、自分にとって大切なものを選び続けていることでした。
          長く使うことで、ものは少しずつ自分のものになっていく。続けることで、何気ない習慣も自分らしい暮らしになっていく。
          「長く残るもの」の背景には、どんな時間があるのか。10年という時間を手がかりに、それぞれの暮らしと価値観を聞きました。

          金子夏子

          スタイリスト 好きなものと過ごす時間。

          服をはじめ、バッグや靴、時計など、身につけるものには、その人のスタイルが表れます。
          スタイリストとして日々さまざまなものに触れ、選び続けてきた金子夏子さんが大切にしているのは、流行に左右されず、長く愛せるもの。
          そして、使い続けることで少しずつ自分に馴染んでいくもの。ものが変わっていく時間と、自分自身が変わっていく時間。
          その両方を楽しむ金子さんに、長く続けていることや、ものを選ぶ基準、10年後の自分について聞きました。

          Q1. ずっと変わらず続けていることはありますか?

          20年ほど前に初めて登山を経験して、特にここ10年くらいは自分のライフスタイルのなかで欠かせない要素のひとつになっていますね。いろんな考え事を忘れて、目の前の山を登ることに没頭する時間というのが、自分の暮らしや性格にすごく合っているんです。登山だけじゃなく、スキーやSUPなど、季節ごとのアクティビティも同じ。スタイリストとしての仕事と、趣味として自然のなかで遊ぶ時間。そのバランス感は常に意識しています。

          Q2. 金子さんにとって、
          毎日を心地良く過ごすために大切なことは?

          新しい山に登れたり、
          スキーで今まで滑れなかったコースを滑れるようになったら、それはもちろん嬉しいこと。でも、必ずしも上達することや、何か結果を出すことだけが大事というわけではないんです。楽しい仲間と一緒に山に登ったり、スキーをしたり。スタイリストの仕事でも、スタッフと一緒にいい撮影ができたらハッピーだし、楽しい。そういう「気持ち良い」と思えることを続けていけることが、自分にとっては大事なんだと思います。

          Q3. 長く使い続けている愛用品を教えてください。

          ミリタリーパンツですね。いかに動きやすく、いかに着やすいか。機能に優れているものってデザイン的にも削ぎ落とされていて、そういう無駄の省かれた感じが好きなんですよ。メンズライクなアイテムが好きなこともあって、ミリタリーパンツはずっと穿いている気がします。

          Q4. そうした長く使い続けているものには、
          どんな魅力があるんでしょうか?

          最終的に長く愛するものに関しては、普遍的なものが好きなんだと思います。どんどん変わっていくものより、長く使いながら育てていく感じが好きなんですよね。ミリタリーパンツも、使っていくうちにどんどん自分の味になっていく。アウトドアで使う靴も、登って終わりじゃなくて、帰ったら掃除して、磨いて、必要ならソールを修理したりする。そうやって手をかけながら使っていくうちに、だんだん自分に馴染んでくるものが好きなんだと思います。

          Q5. そんな金子さんがものを選ぶときは、
          どういうところを見ていますか?

          やっぱり、長く愛せるものかどうかというのは大きいですね。使うことで自分に馴染んでいくものを選ぶことも多いですし、逆に、今の自分には少し背伸びかもしれないけれど、これが似合うようになりたいと思って選ぶものもあります。この時計がまさにそう。買ったときはまだ少し若くて、似合っていなかったような気がするんです。でも持つことによって、いつかこれが似合うようになっていきたいと思えたんですよね。ものと一緒に自分も10年くらいかけて育っていくというか、10年後の自分を想像して選ぶのも楽しいなと思います。

          Q6. 今回着ていただいたARCHETYPEの服はいかがでしたか?

          まず、すごく軽いなと思いました。それに動きやすくて、着ていて疲れない。長く着ることを考えると、見た目だけではなく、そういう着心地の良さも大切だと思うんです。どれだけデザインが良くても、着心地が悪かったら10年先まで着ようとは思わないですよね。そういう意味でも、長く付き合っていけそうな服だなと思いました。

          Q7. 10年後も変わらず続けていたいことはありますか?

          やっぱり自分が好きだと思えるものは、これからも大切にしていきたいですね。ずっと同じものを好きでいるというよりは、使い続けるなかで、自分にとっての意味が変わっていくこともあると思うんです。そうやって長く付き合っていくうちに、自分の一部みたいになっていくものがあったらいいなと思います。

          金子夏子

          ファッション誌や広告を中心に活動するスタイリスト。ファッションを軸に、登山やスキー、SUPなど自然のなかで過ごす時間を楽しむ。長く使うほど自分に馴染み、手をかけるほど愛着が増していく。そんなものとの関係を大切にしている。

          池田陽介

          LANDSCAPE PRODUCTS 代表 日々の習慣が、今の自分を形づくる。

          家具やプロダクト、空間など、暮らしを取り巻くさまざまなものを手がけているLANDSCAPE PRODUCTS代表の池田陽介さん。
          明確な用途や機能を基準にするのではなく、自分の感覚を信じて選んだものが、気づけば10年以上、暮らしのなかに残っている。
          そう話してくれた池田さんのもの選びから見えてくるのは、「好き」という感覚を軸に、仕事や日々をつくっていく姿勢でした。
          長く使うことで愛着が生まれるもの、そして、自分の「好き」という軸から広がっていくもの。
          そんな池田さんの暮らしともの選びについて、10年という時間を手がかりに聞きました。

          Q1. 暮らしのなかで、
          長く続けている習慣はありますか?

          ランニングはずっと続けています。それと、毎朝、土鍋でご飯を炊くのも習慣になっていますね。もともとは前に住んでいた家が狭くて、炊飯器を置くのが嫌だったことがきっかけなんです。でも実際に土鍋で炊いてみたら、そのほうがご飯がおいしくて。職業柄、家に炊飯器があるのがあまり好きじゃなかったというのもあって、それ以来ずっと土鍋です。前の日の夜にお米を研いで、朝起きて炊く。もうルーティンですね。

          Q2. 心と身体を整えるために、日々大切にしていることは?

          ここ5年くらいは朝5時に起きて、最初の20分で運動をして、次の20分でその日一日のことをパソコンやスマホを使わずに頭のなかで組み立てる。そして最後の20分は自分の趣味の時間にする。5時台の1時間で、その日の土台をつくるようなイメージです。もちろん一日の後半は、人に会ったり予定が重なったりして崩れていくこともあるんですけど、一日の始まりだけは同じスタンスで迎えることで、その後いろんなことが重なっても、ロスなく対応できる気がするんですよね。自分で決まった流れをつくっておくことが、安心して一日を過ごすことにつながっているんだと思います。

          Q3. 池田さんが考える「長く残るもの」とは、
          どんなものですか?

          やっぱり、人の暮らしのなかにどれだけ深く入っていけるか、ということだと思います。10年後まで同じ価値観で売り続けられて、同じスタンスで売れ続けているものが、定番になっていく。家具でもそうですが、値段が多少変わったとしても、同じスタンスでずっと売れているものには、それだけの理由があると思いますね。

          Q4. そんな池田さんが、
          10年以上使い続けているものはありますか?

          このボールペンですね。アメリカに買い付けに行ったとき、画材屋さんで売っていたものを買ったんです。最初から「10年以上使おう」と思って買ったわけではなくて、なんとなくいいなと思って買ったんですけど、気づいたらずっと使っています。書き味が好きというのもありますし、ちょっとふざけた感じのデザインなんですけど、意外とちゃんとしていて。中身を入れ替えながら、ずっと愛用しています。

          Q5. ものを選ぶとき、
          どんなところに惹かれますか?

          「ここがこうだから」と理由を考えて買うというより、本当にそのときに感覚的に「いいな」と思ったものを選ぶことが多いです。「ちょうどこういうものが欲しかった」という用途から選んだものよりも、なんとなくピンときて買ったもののほうが、結果的に長く使っている気がします。使いやすいサイズじゃなくても、意外とずっと使っていたり。それは昔からあまり変わっていないですね。その後に嫌いになったり、飽きたりすることもあまりない。自分が「好きだ」と思ったものは、ずっと好きでいられるのかもしれません。

          Q6. 今回着ていただいたARCHETYPEの服はいかがでしたか?

          すごく軽いことはもちろんですが、細かいところにすごく気が利いているなと思いました。ドローコードの付き方だったり、袖口の収まりだったり。ステッチがクロスするところにボタンが配置されていたり、よく見ると細かなこだわりがいろいろある。そういう、使っていくなかで気づくとうれしくなるような部分がいいなと思いました。

          Q7. 10年後も変わらず続けていたいことはありますか?

          ランニングや5時起きの習慣、そして土鍋でご飯を炊くことも続けていたいですね。仕事については、今の会社の形が10年後もそのままであることが正しいのかはわからないですが、好きなものや、やりたいこと自体は、たぶん変わらないと思います。形がどうなっていくかはわからないけれど、やっていることの軸は変わらないんじゃないかな。いろんなことは、自分が好きな軸から派生して生まれてくるものだと思うんです。そこが楽しいんですよね。

          池田陽介

          LANDSCAPE PRODUCTS代表。家具や空間、ショップや飲食など、暮らしにまつわる仕事を幅広く手がける。ランニングや早起きなど、日々の小さな習慣を積み重ねながら、自分なりのリズムをつくっている。

          久川誠太朗

          HiKEI 主宰 自分で考え、自分で選ぶ。

          アパレルやフレグランスを手がけながら、ものが生まれる背景や、つくることそのものの面白さを伝えているHiKEI主宰の久川誠太朗さん。
          日々の生活では、ランニングや散歩、洗濯など、身近なことにも自分なりのこだわりを持ち、気になったことは自ら調べ、試しながら答えを見つけていく。
          ものとの付き合い方から、これからの生き方まで。自分の感覚と思考を頼りに、日々を積み重ねる久川さんに話を聞きました。

          Q1. 日々の暮らしのなかで、
          長く続けていることはありますか?

          ランニングですね。特に5年くらい前からは習慣として続けています。100マイルレースのような大会を控えているタイミングだと、月300kmくらい走ったりすることも。ただ、何km走るとか、何曜日はこのメニューをやるとか、そういうルールを細かく決めるのはあまり好きじゃないんです。決めてしまうと、できなかったときに自分のなかでモヤモヤしてしまうので。走っているうちに自然とペースが上がって、気づいたら追い込んでいることはありますけどね。

          Q2. ランニングはどういうきっかけで始めたんですか?

          30歳になる前に自分の限界を少し伸ばしてみたいと思って、熊本の実家から福岡まで100kmくらい走って帰ったのがきっかけでした(笑)。高校までサッカーをしていたので、体を動かすこと自体は好きだったんですけど、ランニングを始めた理由は、痩せたいとか健康のためというより、自分がどこまでできるのか試してみたかったから。いろんな理由でサーフィンができなかった時期に、自然のなかで体を動かしたいと思って走り始めたこともあって、ただのランニングだけじゃなく、トレイルランなんかも楽しんでいます。そういう自然のなかで体を動かす時間が、心身を整えることにもつながっているんだと思います。

          Q3. 久川さんが長く愛用しているものを教えてください。

          ゴールドウインが展開しているブランド、〈アイスブレーカー(icebreaker)〉のウールのカットソーです。かれこれ6?7年着ているんですよ。もともとウールって暖かいものというイメージがあって、夏に着るという発想がなかったんですけど、実際に着てみたら、汗をかいても乾きやすいし、消臭性も高い。僕はかなり汗をかくので、「これ、めちゃくちゃいいな」と思って。それ以来ずっと着ています。この色はもう販売されていないんですけど、僕はこの色がとても好きだったので、色が抜けては自分で染め直して、というのを繰り返して着用しています。

          Q4. そんなふうに、ものを長く使うために意識していることはありますか?

          洗濯にはこだわっています。大切に着ていたとしても、何度も着ていると黄ばんだり、汗をかいたときに匂いが戻ってきたりするじゃないですか。それで、どうしてそうなるのかを調べ始めたんです。洗剤や洗濯方法をいろいろ試したり、柔軟剤を使うのをやめてみたり、お湯で洗ったり、乾燥させる方法を変えてみたり。そういうことをあれこれ試して、実際にやってみるのが結構好きなんです。SNSで調べれば、効率のいい方法はすぐに分かるのかもしれない。でも、僕は自分でやってみて、ちゃんと確かめたいんです。それでこそ、自分の知識や知恵になると思っているので。

          Q5. ものを選ぶとき、どんなところに惹かれますか?

          「もの」そのものももちろん好きなんですけど、それ以上に、どうやってつくられているのかを知ることにすごく興味があるんです。だからHiKEIでも、ものの背景やつくること自体の面白さを、いろんな人と共有したいと思ってて。小さい頃に田舎で育ったことも関係していると思います。農作業中に機械が壊れても、父親が家にあるものを使って工夫して直していたのを今でも覚えていて、それがすごくかっこよく見えたんですよね。山でも、限られたものをうまく組み合わせてなんとかやり過ごしてみたり。そういう「足るを知る」という感覚には、今でも憧れがあります。

          Q6. 今回着ていただいたARCHETYPEの服はいかがでしたか?

          生地の風合いがいいですよね。これから着ていくなかでついた傷や汚れも、味として馴染んでいきそうな雰囲気がある。サイドにポケットがあるのもありがたいですし、シルエットも流行を追ったものではないので、歳を重ねても着続けられそうだなと思いました。

          Q7. 10年後も変わらず大切にしていたいことはありますか?

          「考え続けること」は、これからも大切にしたいですね。パスカルの「人間は考える葦である」という言葉が好きなんです。人間は弱い存在だけれど、考えることができる。僕は、それが人間らしさなんじゃないかと思っています。考えて、悩んで、自分で判断する。その繰り返し自体が生きることなんじゃないかなと。だから、10年後に何をしているかは分からなくても、自分で考えて、自分で選ぶということだけは、ずっと続けていたいですね。

          久川誠太朗

          オーガニックコットンのニットや天然原料のフレグランスを展開するマテリアルブランド「HiKEI」主宰。背景にある産地やつくり手にも目を向けながら、ものをつくること、使うこと、その両方の面白さを伝えている。

          10年後も変わらず続けていたいことはありますか?
          そう尋ねると、3人からはそれぞれの暮らしを映す答えが返ってきました。
          好きなものを大切にすること。自分の「好き」という感覚を信じること。そして、考え続けること。
          10年という時間を考えることは、何かを変えずに守り続けることだけではなく、
          時間のなかで自分も変わりながら、それでも変わらず大切にしたいものを見つけていくことなのかもしれません。
          ものも、習慣も、価値観も。長く付き合うほど、その人らしさは少しずつ刻まれていく。
          10年後、いま手にしているものは、どんな存在になっているだろう。
          そして、そのときの自分は、どんなふうにそれを選んでいるだろう。想像は膨らむばかりです。

          • Photographer : Naoki Usuda
          • Designer : Rin Ueno(YO)
          • Writer : Naoya Tsuneshige
          • Producer : Ryo Abe(W)
          • Production : W inc.