―20世紀のただなか、球は三角に分割された。
最小から最大を導くために。
発明家リチャード・バックミンスター・フラーは、表面積に対して内部容量が最も大きくなる球という効率的な立体形状を、強度に最も優れた図形である三角形の集合体によって構築を試みる。
「最小限の資源を適切に用いることで、最大限の効率と持続性をもたらす。」
彼のデザイン哲学”Do more with less”により導かれるその構造体はジオデシック・ドームと名付けられ、自然/宇宙の摂理をもとに全人類=地球の向上を志すフラーの壮大な信念を具象化する。
―70年代、球は天幕(テント)へと展開された。
見果てぬ冒険を支えるために。
The North Faceは、普遍的な技術が世界の限界を押し上げるというフラーの思想に共鳴し、効率的かつ先駆的なジオデシック構造を用いた、一線を画するエクスペディションテントの開発に乗り出した。従来のそれらより広い居住空間、無情な自然環境に耐えうるストラクチャー、必然がもたらす美的なフォルム。Oval InTENTionと名付けられた楕円型のプロダクトは、未踏のフィールド、新たな探求の可能性を切り拓いていく。
―そして球は、もう一度形作られる。
弛まぬ変化を続けていくために。
2025年、Oval InTENTionは新たな構造体として再構成される。
ちょうど半世紀前に生まれたものを受け継ぎながら、半世紀の革新を編み込みながら。
数十億年の球体。地球は、みずからを可能な限り最適な状態へと変容させてきた。
地球と、そこに息づく自然と共に在るということは、常にうつろい続けるということ。
うつりゆく土地、文化、時代。
数千年の歴史から紡がれるこの”人工の球”は、私たちがまだ見知らぬものへと、これからも変わり続けていくのだろう。
世界の果てパタゴニアへの遠征、風速200km/hとも言い伝えられる苛烈な環境を唯一耐え抜いた、叡智の結晶としての革新性。
社会の歪みに異を唱え、人々が自然回帰を志すその最中、彼らの果てしないwilderness(原生地域)への旅路を支えた、カウンターカルチャーとの思想的共振。
その歴史的な誕生から50周年を記念し、The North FaceはOval InTENTionを復刻販売します。
画期的かつ合理的なデザイン/基本構造は当時のプロダクトを踏襲しつつも、二酸化炭素由来のメインファブリック、遮蔽率を高める特殊コーティング、跳ね上げ式の入り口や後部からのアクセス確保など、近年の技術的発展を組み込んだ構造を新たに採用しています。
かつてフラーは、ある微生物の殻(シェル)の立体写真を見て、自身のドーム構造との驚異的な類似に圧倒されたと言います。
不断の思索がいつしか自然の摂理へと導かれるように、私たちはこれからも自然と共に歩み、学び、まだ見ぬ領域へと探求を続けていきます。