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ウィンドサーファー・新嶋莉奈の覚悟と素顔と情熱と。

最高時速60km近く——水面を飛ぶように疾走する「iQFOiL」で、世界の頂を目指すウィンドサーファー・新嶋莉奈選手。幼少期からの挫折と葛藤、過酷な体調不良や怪我を乗り越えてなお彼女が海に立ち続ける理由は、胸の奥に秘めた「不完全燃焼では終われない」という強い信念にある。

危険と隣り合わせの極限状態のなか、頭脳と肉体を最大限に駆使して挑む彼女のパフォーマンスを支えているのが、〈ヘリーハンセン〉のオーダーメイドウェアだ。アスリートとしての覚悟と、一人の女性としての等身大の素顔、そして海へかける情熱に迫る。

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新嶋莉奈
鎌倉のウィンドサーフィン・SUPスクール&ショップ「セブンシーズ」を営む父の影響で4歳からウィンドサーフィンをはじめ、全日本ジュニア5連覇や最年少でユース五輪7位入賞を達成。種目「RS:X」を経て、「iQFOiL」では2022年に国内プロツアーを全制覇。現在も世界の舞台でさらなる高みを目指し、第一線で活躍中。

勉強が親への反抗だった。

海沿いの町で生まれ育った新嶋莉奈選手が、初めてウィンドサーフィンに乗ったのはわずか4歳のときだ。本格的に競技を始めたのは小学4年生からだが、原体験として鮮明に覚えている記憶は、小学2年生で勝ち取った全日本ジュニア選手権での初優勝だという。

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「ウィンドが特別好きというより、とにかく負けるのが嫌だったんです。学校でも『私、日本一だから』って言ってたくらい(笑)。その悔しさや負けたくない思いが、いまもずっと原動力になっています」

だが、その華やかな実績の裏で、幼少期の新嶋選手は決して順風満帆ではなかった。当時の練習は週に1回程度。思春期を迎えるにつれ、親が敷いたレールに乗ることと厳しく指導される環境に嫌気がさし、「辞めたい」と父親に何度も訴えた。そのたびに父親の泣き落としで(笑)、渋々続けることに。
反抗期には、あえてウィンドサーフィンと真反対の学業に没頭することで逃げ場を作ろうとしたことすらある。しかし、並々ならぬ努力の末に慶應義塾大学へ進学し、インカレでの同世代の仲間との出会いやプロ転向を経て、彼女は自然に自らの意思で覚悟を決めていた。

iQFoilの苦しみと不完全燃焼の悔しさ。

大学卒業後、パリ五輪を目指すなかで迎えたのが、新種目「iQFOiL」への移行だった。ボードの下に取り付けられた水中翼(フォイル)によって水面を浮走するこのギアは、最高時速60km近くに達する。それまでの種目「RS:X」を苦しいマラソンに例えるなら、iQFOiLは1レースの時間が短くなり、スピード感と一瞬の判断力が求められる中距離走だ。

「スピードが速い分アドレナリンが出ますし、最初は初心者に戻ったみたいで楽しかったんです。でも、そこからは苦しみへの入り口でした」

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iQFOiLでは、水圧による浮力を選手の体重で抑えて推進力に変えるため、体重はあればあるほどアドバンテージとなる。女子のベストとされる70kg前後を目指し、新嶋選手も過酷な増量に取り組んだ。
しかし、もともと内臓が強くない体質に過度な食事量がたたり、慢性的な逆流性食道炎を発症。連日吐き気に苛まれ、血糖値の乱高下からパニック障害や過度な体調不良にまで追い込まれた。過酷な増量生活で65kgまで増やした体重は、一気に55kgまで激減。万全とは程遠い満身創痍の状態で挑んだパリ五輪選考会では、納得のいく走りができず、出場枠を逃す結果となった。

「体調不良で自分の計画していたことを何一つやり切れないまま終わってしまった。それがどうしても悔しくて、不完全燃焼で終わりたくなかったんです」

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一度は競技から離れ休養をとったものの、胸の奥にくすぶる負けん気が再び彼女を海へと向かわせた。今年2026年の大会では、直前にギックリ腰にも見舞われ、歩くのもやっとの状態で出走。しかし、肉体的なハンデを経験と頭脳プレーで補い、見事に準優勝を果たしてみせた。

「もう最後は根性でした(笑)。でも、パンピングができない分、風の筋を読んで最小限の最短コースを通る組み立てができたのは大きな収穫でした」

ヘリーハンセンと開発した美しく勝つためのギア。

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過酷な環境で戦う新嶋選手にとって、約3年前からサポートを受ける〈ヘリーハンセン〉のウェアは、単なる衣服ではなく、ともに戦うギアであり、精神的なお守りでもある。

時速60kmの世界では、海面に浮かぶたった1枚のビニール袋や魚との衝突が、そのまま激しい落水事故へとつながる。鞭打ちになるほどの衝撃と危険に晒される現場だからこそ、ウェアによるストレスは極限まで削ぎ落とさなければならない。〈ヘリーハンセン〉は、アスリートとしての新嶋選手の細かな要望を反映させたオーダーメイドウェアを提供している。

「ウィンドサーフィンは上半身、特に腕の筋肉を使うので、既製品だと腕周りが締め付けられて加圧トレーニングみたいになってしまうんです。そこを少しゆったりしたシルエットにカスタマイズしてもらったことで、腕がパンプアップせず、前よりも長く力強く漕げるようになりました」

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また、女性アスリートとして徹底しているのが「日焼け対策」だ。肌が弱く荒れやすい新嶋選手のために、レギンスとブーツの隙間を埋めるトレンカ仕様や、手の甲まで覆うラッシュガードなどを考案。ラッシュ生地とウェットスーツ生地のハイブリッド型で現在の難しい気温にも対応できるように、保温性と動作性を確保したカスタムユニフォームも開発している。さらに機能性だけでなく、デザインにも妥協はない。ステッチなどにさりげなくあしらわれたピンクのカラーリングは、彼女のこだわりだ。

「増量して体型が変わると、どうしても見た目のストレスも増えてしまう。直接成績に関係なくても、ステッチに好きなピンクを入れたり、自分らしくいられるウェアを着ることで、辛いときでもテンションを上げられる。精神的なお守りなんです」

オフの日には〈ヘリーハンセン〉のワンピースやフリース、速乾性の高いトレーニングウェアを愛用し、オンとオフの両面で彼女のライフスタイルに深く寄り添っている。

新嶋莉奈にとっての海とは?

新嶋選手の視線は、すでに次なるステージへと向けられている。さらなる高みを目指し、日々のトレーニングと競技に向き合う。限界への挑戦は、これからも続いていく。また、一人のアスリートとして、まだまだ認知度の低いウィンドサーフィンの魅力を広め、体験者を増やしていきたいという思いも強い。

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最後に、「新嶋選手にとって海とは何か」を尋ねた。

「海は……私にとっては『戦場』ですね。海を見ると交感神経が優位になっちゃうので、ほっと落ち着く場所とはちょっと違うかもしれません(笑)。でも、生まれ育った鎌倉の海には自分の歴史がすべて詰まっています。砂浜が削れたりゴミが浮いていたりする変化を間近で見てきたからこそ、大切に守っていきたい場所でもあります」

時に試練を与え、時に疾走する歓喜を与える海。限界に挑み続ける新嶋選手の傍らには、これからも〈ヘリーハンセン〉が共にあり続ける。

Photo_Kaz Nakajima
Text_Shinri Kobayashi
Edit_Hibiku Kataoka, Ryo Komuta