山に行きたい! と思っているなら、「行ってみたい山」がもうすでにあるかもしれません。それなら、「行ってみたい山」を大事にしましょう。ただ、同じ山を登るにもいろいろなコースがあります。ガイドブックを参考にして、無理をせず、まずは初心者コースを試すのが安全です。段階を踏んでレベルアップしていくのがいいでしょう。
行ってみたい山がまだ見つかっていない人は、登山専門誌の初心者向けの特集(バックナンバー含む)などを参考に情報収集を。ネットの情報は玉石混交であり、また、個人投稿の場合その人のスキルや装備等、状況がまちまちなため初心者には参考にならないこともしばしばです。
コースと所要時間、高低差などがひと目でわかる「山岳地図」を、紙で手に入れましょう。山岳地図には基本的に解説本もついており、そこに定番のルートが書いてあるので、大いに参考になります。
山岳地図として著名なものに、『山と高原地図』(昭文社)や国土地理院の地形図が挙げられます。『山と高原地図』はアプリにもなっていますが、山でスマートフォンの充電が切れるリスクや、山全体を俯瞰する一覧性などの点から、紙の地図を入手してください。登山時にはこの地図と、コンパス(方位磁針。これもアプリではなくコンパスそのもの)をセットで持っていくようにしましょう。
※このページの一番上に掲載している写真内の地図は、『山と高原地図 木曽駒・空木岳 2019年版』(昭文社発行)です。
テント泊の場合、車やバス、ロープウェイなどでどこまで行けるのか、そこからテント場までどれほどの距離や高低差があるかを事前に確認しましょう。目的地とテント場の位置関係によっては、テント場に荷物を置いた状態で頂上まで往復するということも可能です。(※今回のコンテンツではテント泊を扱っていますが、山小屋での宿泊という選択肢もあります。山小屋の場合、初期費用や荷物がより少なくなります)
登山のルートと同時に、「エスケープルート」を設定しましょう。これは、天候や体調などの影響で計画通りに進めなかった場合、予定していたルートから分岐し、最短距離で下山できるルートを指します。エスケープルートを決める際は、あわせて「◯◯時までに×××(ある通過地点)に到着しなければ下山する」とあらかじめ想定しておきます。
登山時の時間管理は非常に重要です。夏でも15時までには行動(移動)を終えるようにしてください。写真を撮ったり、SNSに投稿していたりすると、気づいたら時間が過ぎ去っているので注意。真っ暗な中で狭い山道を歩いたり、テントを設営したりすることを想像してみてください!
パッキングする前にぜひ試してもらいたいのが、すべての持ち物を並べてみることです。自分が何を持っていくのかを確認して、不要なものや足りないものがないか、検討しましょう。また、テントは実際に使う前に自宅で一度組み立ててみることを推奨します。シミュレーションをしておくと、山での作業効率が飛躍的に向上します。
パッキングにあたっては、まず頻繁に使わないテントや寝袋などを下に配置。水や食料、クッカー等重いものは真ん中に。雨具や防寒着など、必要なときにすぐに取り出したいものを上に入れるのが基本です。また、『ウエア&ギア編』でも触れたように、雨対策が非常に重要なので、防水のスタッフバッグやファスナー付きビニール袋を駆使しましょう。荷物を小分けにするのもポイントです。
バッグの容量に対し、目一杯100%で荷物を詰め込むのは避けたほうがいいと言われています。容量の80~90%くらいにとどめておいたほうが、出し入れや山の上でのパッキングなどでも都合が良いでしょう。
登山に必要なモノは
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リスク管理のため必須なのが、「登山計画書」と「山岳保険」です。
参加者の情報(名前、住所、連絡先、緊急時の親族や友人の連絡先等)や登山の日時、ルート、装備などを記した「登山計画書」を必ず用意してください。①親族や知人に渡す用、②山域を所轄する自治体に提出する用、③自分で携行する用の3通を作成します。「もし何かがあったとき、誰があなたを助けてくれますか?」ということを念頭に置きましょう。(※②は地域によって提出先の自治体や提出方法が異なります。登山口に設置されたポストやオンラインで提出することが多いです)
また、怪我の治療費用のほか、遭難時の捜索費用(ヘリコプターが出動する可能性もあります)をカバーする「山岳保険」に、必ず加入してください。山岳保険も様々な種類があるので、比較・検討してみましょう。
登山当日の3日前くらいから、天気予報サイトなどで現地の天気の移り変わりを見ておいてください。特に初心者は、天候が悪いときに登山を決行するのは避けたほうがいいでしょう。「やめる」という決断も重要です。現地の宿泊施設や山小屋は、天気の状況などその場所の情報に詳しいので、天気予報が晴れだったとしても、登山前に立ち寄って情報収集しておきましょう。
上述の通りの天候や体調の見極め、時間管理などに加えて、いくつかの注意事項を記します。
- 高山植物を摘んだり、上に座ったりしないこと。
- トイレが限られているので、事前に場所を調べておくこと。
- 水を調達できる場所を確認しておくこと(テント場の近くに水場がないこともあります)。
- 落石の可能性があるので、足元だけでなく、周りの地形に目を配ること。
- ゴミはきちんと持ち帰ること。
食事は山の楽しみのひとつ!登山中の行動食は基本的に好きなものを選べばよいですが、ナッツ、チョコレート、ゼリー飲料等が選ばれることが多いです。テント場での食事もお好みで。道具や材料を持っていけば、カレーライスやパスタなどの手の込んだ料理も可能。一番簡単に温かい食事をする方法は、ガスバーナーとクッカーを持っていき、お湯を沸かして即席の食品を戻すことです。インスタントラーメン、レトルトやフリーズドライ食品、水でも戻せるパスタやアルファ化米など、選択肢は色々あります。
さて、万全の準備を経て、いざ山に入ったら、思う存分楽しみ尽くしましょう!息をのむような美しい光景や野生動物、貴重な高山植物など、非日常があなたを待っています。