THE NORTH FACE 2015-2016 FALL & WINTER

INTERVIEW 04

TRAIL RUNNER

TSUYOSHI KABURAKI

鏑木 毅/トレイルランナー

トレイルランニングの装備は自然を見据えた“想像力”で選ぶ。

 トレイルランニング用のウェアやギアは、年々進化し、軽量化され、高機能化が進んでいる。エンデュランスレースで一昼夜走り続けるランナーは、ウェアやギアをグラム単位で減らし、走る山によって装備も変える。世界を駆け抜ける日本屈指のトレイルランナー、鏑木毅にその実戦での体験と心得を聞く。
「季節や天候によってフィールドのコンディションは大きく異なりますからウェアは状況に応じたものを選ばなければなりません。どのように自分の身体が自然の中にさらされるのかをしっかりと予測できる“想像力”こそが重要になってきます。さらにレースともなれば軽量化と、いかにストレスのないウェアやギアを選べるかが大事になります。ただ軽ければよいというものではなく、厳しいコンディションのなかでもしっかりと自分を守ることができるものを選ぶ必要があるのです。昨年の、アメリカ・コロラド州で開催された『ハードロック100』で、深夜に4,000mピークを越えるセクションがありました。レースなので素材が薄めのジャケットを持っていきたいところですが、月光の彼方、ピークにかかる黒雲を見て、即座に張りのある『エンデュランスジャケット』を選びました。やはり、登りの途中で天候は急変し嵐のような雨。もしジャケットの選択を誤っていれば完走どころか、命の危険もあった状況でした。長時間にわたる自身と自然との闘いに集中できるウェア、装備を的確に選べる行為も含めてランナーの実力だと思います。普段は、低山では『スカイランニングフーディー』のような高機能でストレッチ性の高いジャケットを使っていますが、高山でのトレーニングが多いので、基本は『エンデュランスジャケット』のようなしっかりとした張り感のあるものをよく着ています。天候の急変に対しても安心感があるのはいいことなのです。パックはトレイルランにしてはやや大きめの16Lを最近は愛用しています。オフ着もここに入れ、アフタートレイルランも楽しむスタイルが気に入ってます」

2014年、アメリカ・コロラド州南部のサンファン山脈を走る100マイルレース、「ハードロック100」に出場した鏑木。コースは平均で標高3,300mを超え、最高で4,280mに達する、アメリカでも最もハードな山岳レース。レース中、落石が顔にぶつかる事故に見舞われながら、6位でフィニッシュ。

SHO FUJIMAKI

ULTRA-TRAIL Mt. FUJI

富士山の山麓、登山道、歩道、林道をつなぎ走る、
100マイルトレイルレース「ウルトラトレイル・マウントフジ」。

誰かに勝つためではなく、自身の限界に挑戦するために。

 富士山麓を一周するトレイルランニングレース、「UTMF(ウルトラトレイル・マウントフジ)」。世界のビッグレースと同様に、ランナーたちは100マイルを昼夜かけて走り続ける。2009年、世界最高峰のレース「UTMB(ウルトラトレイル・デュ・モンブラン)」で日本人最高位となる3位に入賞したトレイルランナー・鏑木毅さんを実行委員長に、2012年、本格的な100マイルレースとして「UTMF」はスタート。現在、「UTMB」とは姉妹大会として、さらに昨年より始まったウルトラトレイル・ワールドツアーの10大レースの1つにも数えられている。
 富士の雄大な自然の中を走る素晴らしい体験を得られることは間違いないが、レースは過酷そのもの。総距離はフルマラソンの4倍の、およそ167㎞。平坦な道を走るわけではなく累積標高差は8,300m以上。この標高差がランナーたちを苦しめる。そして、この険路を参加者は46時間以内の走破を目指す。(2014年の覇者は19時間でゴール。)過酷なレースゆえに、エントリーには運営が規定する国内外のレースで一定の実績を持つ者だけに限られるが、この大会は過去の日本の山岳レースと異なり、多くの人が参加意識を持つことができる点に特徴がある。2県11市町村の協力により、各所に設けられたエイドステーションは、地元の人々やボランティア、応援者とランナーを繋ぐ場所となっている。この大会が大きな刺激となり、トレイルランニングの普及に貢献していることは間違いない。第4回大会となる今年は、9月25日の13時にレーススタート。