オート・サヴォワ

ウルトラトレイルランニングの世界に比較的遅く足を踏み入れたセブだが、すでに数々のユニークな経験を積み重ねていた。フランスの“平地“であるヴィエンヌで育ったセブは、ロードバイクと陸上競技で活躍した後に、障害物競走を専門とするようになった。生涯を通じて自然を愛する彼は、アンティーブにある水族館の研究所で働いた後、フランス陸軍の山岳部隊に加わり、30の山に登ったのだった。

陸上競技とアウトドアへの情熱を併せ持つセブが、トレイルランニングの楽しさに気づくのは必然だった。退役後の2001年、フェリオン山で行われた50kmのトレイルランに参加しその魅力に取り憑かれた彼は、より長い距離のレースにむけたトレーニングと研究を開始。2007年から2009年までリビア・チャレンジで3回優勝し、2009年のウルトラ・トレイル・デュ・モンブランでは2位、2012年と2013年のトランス・グラン・カナリアでは優勝。しかし、トロフィーよりも思い出を大事するのが彼らしいところ。2013年にアメリカのハードロック100で優勝した際には、メダルを手にするのと同じくらい、荒涼とした風景や野生の動物たちを見て喜んでいたのだった。

セブは現在、フランスのオート・サヴォワ地方の美しい山々に住み、家族との時間を大切にしながらトレーニングのスケジュールをこなしている。よく子どもたちの写真を撮っては、ランニングのモチベーションにしている。近年に負った怪我や病気を克服した彼は、新たな夢と地平線を求めて、自分の想像力をかきたてるウルトラトレイルレースに照準を合わせ、より多くの時間を旅と冒険に捧げている。持久力、栄養学、トレーニング科学の専門家であるセブは、現在、このスポーツにおける知見に長けた存在であるが、まだその学びは止まることがない。