Vol. 02

旅好き3人で行く
1泊2日のテント泊山旅

モデル/写真家/ライター 大石 学/根本 絵梨子/櫻井 卓

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9:00

登山口に到着
急登を乗り越え燕岳へ

今回の山旅のメンバーはモデルの大石さん、写真家の根本さん、そして僕ことライターの櫻井。3人とも旅好きということもあって、いつか一緒に登りたいと思っていたメンバーだ。今回選んだのは燕岳。
「合戦尾根って北アルプス三大急登のひとつですよね」と過去に登ったことのある大石さんが言う。
その言葉どおり序盤からなかなかに急な登りが続く。シーズンはじめで体力は落ちているし、テント泊装備を担いで登るのも数ヶ月ぶりだ。こういう時は息が上がらないぎりぎりのペースを保ってゆっくり登るのが良い……のだけど、大石さんも根本さんも健脚。過去の海外旅の話で盛り上がりながらすいすい足を運ぶ。息を整えようと足を止めて見上げると、雪と岩のまだら模様が美しい北アルプスの山々が待ち構えている。

11:00

それぞれの個性がでる
行動食を食べ比べ

「あ、イワカガミ!」
根本さんは、高山植物を見つけながら楽しそうに歩く。登山口の中房温泉から登り始めて約3時間。合戦小屋に到着する。根本さんがパッカブルになるウィンドシェルを羽織る。山での休憩中は体が冷えないように、こまめに上着を着るのが大切。この小屋は夏場になるとスイカを食べられるのだが、あいにく今日はお休み。各自持参した行動食を取り出す。根本さんはジップロックに入ったブルーベリー。
「山で食べるフルーツって格別ですよね。プラムやリンゴなどもよく持っていきます」
大石さんは「THE POWBAR」という100%自然由来のエナジーバー。僕は最近お気に入りの燻製ナッツ。複数人で登ると、行動食にも個性が出て楽しい。みんなでシェアしながらゆっくりと休憩。

13:00

まだ雪が残るテント場に
今夜の寝床を設営

5月下旬の燕山荘のテント場にはまだ雪がかなり残っている。ペグが効きにくいから、ワンポールテントなどは張りにくい状況だ。今回大石さんが持ってきたテントは自立型だからどんな地面にでもしっかりと張ることができる。ペグを雪で固めて仕上げに石を上に置けば、かなりの安定感だ。他にも木の枝をペグがわりにして雪に埋めるのも効果的。
根本さんはさきほどからスコップを振るっている。
見れば雪を利用した天然の冷蔵庫。そこに持参したアスパラガスやリンゴなど傷みやすい食材を入れていく。もちろんビールも。
「雪のテーブルと椅子も作っちゃいましょ!」
その場にあるもので最大限に楽しむのも旅で鍛えたスキルだ。

※残雪期の登山は、天候が変わりやすく、融雪による雪崩の危険もはらみます。十分な下調べと装備で臨んでください。

15:00

目まぐるしく変わる光の中
カメラを携え山の撮影会

テントを張り終えたら、2人はアタックザックに水や行動食などの最低限の荷物を背負い、愛用のカメラを肩にかけて稜線へと向かう。大石さんは「ニコンF3」、根本さんは「ハッセルブラッド」。
山での撮影のポイントを聞くと、とにかく居続けること、だそう。
光と影が目まぐるしく変わる山では、シャッターチャンスは一瞬。それを逃さない忍耐力が必要なのだ。
しばらくすると、少し風が出てきた。僕だけ一足先にテント場に戻ることにする。振り返ると、稜線の向こうに、光待ちをしている2人の姿が小さく見える。

※残雪期の登山は、天候が変わりやすく、融雪による雪崩の危険もはらみます。十分な下調べと装備で臨んでください。

17:00

最高のロケーションの中
山の宴が始まる

撮影を満喫した2人がテント場に戻って来た。ここからは、暮れていく夕陽を眺めながらのまったりタイム。大石さんはワイン用のプラティパスに入れた赤ワインをカップに注ぐ。山に割れやすいビンを持参するのはナンセンス。なので、こうしたソフトフラスクに入れ替えて持ってくるのがおすすめ。僕はといえば、おなじくプラティパスに入れたイェガーマイスター。
「えぇ! イェガーって若い頃にイッキさせられた記憶しかないです」と根本さんが笑うけど、実は水割りにしてゆっくり飲むと、清涼感があって山に合うのだ。ついつい飲み過ぎてしまう傾向にある僕としては、2日酔いになりにくい感じも気に入っている。

※残雪期の登山は、天候が変わりやすく、融雪による雪崩の危険もはらみます。十分な下調べと装備で臨んでください。

19:00

好みと工夫が詰まった
それぞれの山飯時間

太陽の残滓がわずかに残る中、夕食を摂る。荷物が多いテント泊の場合、いかに食糧を軽くするかも大事。だから美味いフリーズドライを見つけ出すというのは、テント泊好きには永遠のテーマなのだ。根本さんが最近気に入っているという「Small Twist」は、八ヶ岳のレストラン「DILL」が手がけたもの。
「ついつい家で食べちゃうくらい美味しいんです」
水350ccに「Small Twist」を入れて、沸騰したら蓋をして15分ほど待てば完成という手軽さ。大石さんは「尾西」のアルファ米に、「無印良品」のレトルトカレー。アルファ米の袋にそのままカレーを注ぎ込むという大胆な食べ方。でも、できるだけ洗い物を出したくない山では、そのNO食器スタイルは、かなり理にかなっている。食事を終えたあとは、それぞれのタイミングでテントへと潜り込む。

21:00

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山時間のハイライト
日の出を待ちわびる

まだ薄暗い中起き出した2人は、雲の動きを予想してベストな撮影場所を探る。日の出をいまかいまかと待ちわびるこの瞬間は、山で泊まる時のハイライトかもしれない。
「山小屋で働いていた時はほぼ毎日見ていたんですが、同じ日が1日もない。いつもワクワクします」。
白馬山荘で働いた経験を持つ根本さんが言う。体感温度はかなり低いので、しっかりとシェルを着込んで防寒対策。待ちの間はお互いのこだわりであるフィルム撮影の話で盛り上がっている。
「微妙なニュアンスが出るのはやっぱりフィルム。デジタルよりも階調が多い印象がありますね」と根本さん。
2人とも、国内の山はもちろん、海外の山に行くときも必ずフィルムカメラを持参するという。

05:00

ホットサンドに自家製ジャム
雪のテーブルで賑やかな朝食

「コーヒー、カフェオレ、ココア、いろいろありますよ」
大石さんがバックパックから次々に取り出す。朝食用にホットサンドメーカーまで持参している。
「みんなでシェアしましょう」
出発前に試しに大石さんのバックパックを持ったとき、なんで45リットルなのにこんなに荷物が重いのかと思っていたらそういうことか。このバックパックにはホスピタリティが詰まっている。
根本さんは、パンと自家製ジャムの組み合わせ。
「庭になっている昔いちごを使ってます。今回のパンは市販品ですが、自分で酵母から作ってパンを焼いて持ってくることもあります」
ベーコンとアスパラ、そして卵を鍋で炒めてみんなでシェアして食べる。標高2700mオーバーとは思えない豪華さだ。

07:00

すぐにまた来たくなる
名残惜しい下山の時

ついに下山の時。テントを撤収して燕山荘を後にする。大石さんも根本さんも、小休止のたびに行動食を口にいれる。登山中の消費カロリーは、荷物を持たない状態でだいたい1時間あたり300kcal。この下山だけでも少なくみても1000kcalは消費する計算になる。だからこまめな食糧補給は必須。山でダイエット? ぜったいにNG。ハンガーノックという恐ろしい症状が待っている。
根本さんはときおり首元のネックレスを顔に近づけている。
「ハーバルノートというお店で買ったんですが、好きなアロマオイルを入れておけるんです。テントで眠るときとかにも良いんですよ」
下山はいつもあっという間。3時間ほどで登山口まで下りてきた。
大石さんが名残惜しそうに、山の方を眺めながら一言。
「下りたばっかりですが、もうすでに次の山に行きたくなってます」

※残雪期の登山は、天候が変わりやすく、融雪による雪崩の危険もはらみます。十分な下調べと装備で臨んでください。

山を旅するということ

テントを含め生活道具全般を担いでの登山は、どこか旅に似ている。すべてが自己責任だけど、その分、自由も多い。だから今回も山登りという言葉よりも山旅というほうがしっくりくる。
大石さんは山でのテント泊は2度目。でも旅慣れているからか、そうは思えないほど満喫していた。
そもそも山の入りからして大石さんは旅なのだ。
バックパッカーで世界一周をしたのち、再訪したネパールでアンナプルナのベースキャンプまで歩いたのが初の本格的な登山。なんとも贅沢な山デビューだ。帰国後はほぼ週に1度山に行くようになった。
根本さんもパタゴニア、ニュージーランド、ネパールなど、登山も同時に楽しむスタイルの旅を続けている。この撮影の直前もアメリカのアパラチアントレイルを歩いてきたという。
そして大石さんはと言えば、7月にジョンミューアトレイルに行く。
もちろん、テント泊装備を担いだ完全自立型の旅だ。
また一緒にテント泊をしながら、それぞれの新しい旅の話をしよう。そう約束して、それぞれの日常へと帰っていく。

※残雪期の登山は、天候が変わりやすく、融雪による雪崩の危険もはらみます。十分な下調べと装備で臨んでください。

Camper’s Profile

モデル

大石 学

20歳の時にモデルとして本格的に活動を開始。「OCEANS」など数々のファッション誌をはじめ、テレビCMなどでも活躍。37歳の時にバックパッカーとして世界中を巡る。山の魅力に気付いたのはその後、再訪したネパールでアンナプルナのベースキャンプまで歩いたことがきっかけ。帰国後は精力的に登山を続けている。

Camper’s Profile

写真家

根本 絵梨子

2010年にオーストラリア留学を経験。その後スタジオアシスタントを経て写真家として独立。アウトドア関連の撮影だけでなくファッション写真の分野でも活躍。海外旅の経験も豊富で、アルゼンチン、ニュージーランド、アメリカ、アフリカなど世界中を巡り、美しい風景をフィルムに焼き付けている。日本の山々への造詣も深く、年に1ヶ月ほど白馬山荘で働く。

Camper’s Profile

ライター

櫻井 卓

「TRANSIT」など旅系を中心に、「PEAKS」など登山・アウトドア関連の雑誌などでも執筆中。趣味は海外の国立公園巡りで、これまで訪れた国立公園はヨセミテ、デナリ、レッドウッド、アーチーズ、グランドキャニオン(アメリカ)、サガルマータ(ネパール)、エイベルタズマン(ニュージーランド)など。

Camp Site

燕山荘

長野県安曇野市穂高有明中房国有林内 燕岳
090-1420-0008

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