THE NORTH FACE MOUNTAIN

LAYERING THEORIES #8
2022 MARCH

“EXPEDITION DRY DOT” Part. 2 IMPRESSED BY 田中陽希

2021年春に発売以来、1枚で汗冷えを防ぐベースレイヤーとして話題を集めてきた「EXPEDITION DRY DOT」。長期間使用し続けたアスリートからのフィードバックが集まりつつあります。そのなかから、「日本百名山ひと筆書き」で知られる田中陽希さんのインプレッションをご紹介します。

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2021年春に発売以来、1枚で汗冷えを防ぐベースレイヤーとして話題を集めてきた「EXPEDITION DRY DOT」。長期間使用し続けたアスリートからのフィードバックが集まりつつあります。そのなかから、「日本百名山ひと筆書き」で知られる田中陽希さんのインプレッションをご紹介します。

田中陽希さんは日本を代表するプロアドベンチャーレーサーであり、ご承知の通り、2014年から「日本百名山ひと筆書き——Great Traverse」に挑戦し続けてきました。

全国に点在する日本百名山を、文字通り、ひと筆書きのようにつなげて登る一大プロジェクトは、密着取材を続けたNHK BS放送でも人気を博しています。

ユニークなのは、山から山への移動もすべて人力にこだわった点です。車や鉄道、バスなどを使うことなく、海の上もシーカヤックで移動しました。また、その翌年は「日本2百名山ひと筆書き」を達成し、最後の「日本3百名山ひと筆書き」では、これまで登ってきた200の名山をもう一度登り直して、という徹底ぶり。

2014年4月1日に屋久島の宮之浦岳をスタートから足かけ7年。3度の挑戦の途中には、人生初の骨折、新型コロナウイルスによる緊急事態宣言、北海道の厳冬期による長い停滞など、さまざまな出来事がありましたが、実質4年9カ月間に、のべ501座の山頂に立ち、総移動距離は36,000km。その間、ほぼ毎日のように行動を続けたというのは驚異的です。

田中さんは昨年8月に北海道・利尻山に登頂して「日本3百名山ひと筆書き」を達成しています。その後半では、EXPEDITION DRY DOT ZIP HIGHを秋から夏まで、ほぼ毎日のように着用していました。現在は群馬県を拠点にアドベンチャーレーサーとしての毎日に戻っていますが、そこでも日々のトレーニングで愛用しているといいます。

ほかの誰よりも圧倒的に長時間、EXPEDITION DRY DOTを着用しているのは間違いないでしょう。その田中陽希さんのインプレッションです。

——日本300名山ひと筆書きを達成した

田中陽希さんのインプレッション

汗かきな自分は、汗処理能力の高さに助けられた

最初にEXPEDITION DRY DOTを手にしたのは2020年の秋です。発売前のサンプルウェアで、紫色のL/S ZIP HIGHモデルでした。その頃は「日本3百名山ひと筆書き」の終盤で、着用し始めたのは北海道に入ってからです。

八甲田山を終えて津軽海峡を渡ったのが9月末ですから、そこから翌年6、7月の大雪山縦走あたりまでは、ほぼ毎日。真夏以外のほぼ1シーズン着ていたことになります。

山を登るときは、僕はいつも汗をかきます。汗をかかないようにと思っても荷物が重いし、ファスナーを開けたり閉めたり、脱いだり着たりしながらこまめな体温調節を心がけますが、それでも汗をかきます。

運動強度が高いこともありますが、発汗量は明らかに人より多いですね。普通の登山者と比べると倍ぐらいは汗をかきます。海外のアドベンチャーレースに出るときも、ほかのメンバーの倍の量の水を持つように指示されるほどで、とにかく、脱水症状にはすごく気をつけています。

秋から春にかけてのベースレイヤーは、EXPEDITION GRID FLEECE HOODIEを単体で、その下に100 DRYを着て行動していました。ただ、僕の運動量にしては保温性がありすぎるようで、よく汗をかきました。

汗濡れがひどいときは、いったん脱いでから水分を絞り、もう一度着てから上にシェルを着て、動きながら体温で乾かすようにしています。それでも生地に厚みがあるため汗を含む量が多く、乾きも遅い。

メリノウールを使っていたこともあります。メリノは濡れてもあたたかいという性質がありましたが、やはり、厚みのある生地が汗を吸うと乾きにくく、重さも気になりました。

これまでは、あと一歩、もうちょっと……というモノはあったのですが、自分の運動量と発汗量に見合うベースレイヤーと出合えず、けっこう苦労してきたのです。

そんなときに、このEXPEDITION DRY DOT ZIP HIGHを手にして、汗処理能力の高さにとても助けられました。濡れても肌を冷やすことなく、乾きがとても速くて、なにより着心地がいい。これはホントにいいなと思いましたね。

9日間着続けた残雪期の日高山脈縦走

4月下旬の残雪期の日高山脈縦走のときは、入山から下山まで、ドライドットを9日間着続けました。1回だけ、宿泊予定地で乾かすために脱いで干しましたけど、それ以外は昼の行動中も夜寝るときも着っぱなしです。

そのときは、ドライドットの下に100 DRYを着て、寒いときには上にベントリックスの一番薄いVENTRIX TRAIL JACKET。パンツはMAGMA PANT。生地が薄いのに丈夫で防風性があり、汎用性の高さを感じました。シェルは軽量なゴアテックスのCLIMB LIGHT JACKET、シェルのパンツは70デニールのALL MOUNTAIN PANTSを選びました。日高山脈ではブッシュに引っかける可能性があったので、軽さよりも丈夫さを重視したからです。

普通、たっぷり汗を吸った生地って、乾くと少しずつゴワゴワしてくるじゃないですか。でも、それがドライドットにはほとんどない。汗をかいてビショビショになって、それが乾いて、というのを1日に何度も繰り返しながら進むのですが、最後までやわらかな着心地を失わず、快適な着心地を維持していたというのも大きいですね。

ドライドット1枚で行動した日もありますが、僕の場合は下に100 DRYのタンクトップを重ね着することが多かったです。

ドライドットは肌面に撥水生地を使って汗冷えを防ぐ機能がありますが、やはり、僕の場合は発汗量が多すぎるので、100%ポリプロピレンの100 DRYを重ねました。ドライドットとの間に空気の層もできて、そこに空気が滞留することによる保温効果もありますしね。

クールダウン効果の高いハーフジップ

このEXPEDITION DRY DOT ZIP HIGHは、フードのないジップアップタイプという点も大きいです。

僕はクルーネックよりも温度調整しやすいハーフジップタイプを選ぶのですが、そのなかでもジッパーがどこまで開くかかがけっこう大事です。胸までなのか、それともみぞおち近くまで開くのか。それで良し悪しが変わってきます。

大きく開けば、それだけ空気を取り入れて素早く体温を下げられますが、開く範囲が狭いと、やはり胸元の熱が出にくかったりする。わずか10cmあるかないかの違いですが、それでクールダウン効果は大きく違うんです。

あとはフード。この手のウェアにはフードが付いているタイプが比較的多いんですよね。寒いときはバラクラバのように使えるようにと。

でも僕の場合、基本的に行動中はフードは使いませんし、いざ使おうとしたときには、たっぷり汗を含んで濡れています。行動中に首から背中の汗を吸収してしまうんですね。

できれば、バラクラバやネックウォーマーは、普通にセパレートされたものが使いやすい。装備の数は増えるんですが、汎用性は高いです。

フードには良し悪しがあると思います。ベースレイヤー、ミッドレイヤー、シェルと、着用するウェア3枚すべてにフードが付いていることもあると思いますが、そうなると、どうしても首回りがごわついてしまう。やはり、首元はシンプルなほうが快適です。

これまで逆はありましたよね。春、夏、秋と3シーズンに対応するウェア。でも、このドライドットは秋、冬、春と逆側の3シーズンで使えるという点がいいですよね。汗冷えが命取りになる季節に、薄くて、軽くて、乾きやすく、これ1枚でカバーしてくれる。そこまで機能的なベースレイヤーに出会ったのは、このドライドットが初めてです。

今はアドベンチャーレースの世界大会目指して、毎日トレーニングの日々ですが、そこでもやはり、このドライドットは欠かせません。かなり気に入っています。

EXPEDITION DRY DOT ZIP HIGH 詳細を見る

LAYERING ITEMS IN THIS ARTICLE この記事のレイヤリングアイテム

  • Base-layer(田中陽希さん)

    100 DRY TANK

  • Base-layer(田中陽希さん)

    EXPEDITION DRY DOT ZIP HIGH

  • Base-layer(田中陽希さん)

    EXPEDITION DRY DOT TIGHTS

  • Mid-Layer(田中陽希さん)

    VENTRIX TRAIL JACKET

  • Pants(田中陽希さん)

    MAGMA PANT

  • Shell Jacket(田中陽希さん)

    CLIMB LIGHT JACKET

  • Shell Pant(田中陽希さん)

    ALL MOUNTAIN PANTS

寺倉 力
CHIKARA TERAKURA

ライター+編集者。高校時代に登山に目覚め、大学時代は社会人山岳会でアルパインクライミングに没頭。現在、編集長としてバックカントリーフリーライドマガジン「Fall Line」を手がけつつ、フリーランスとして各メディアで活動中。登山誌「PEAKS」では10年以上人物インタビュー連載を続けている。

2021.10.20
WRITER : CHIKARA TERAKURA
PHOTOGRAPHER : -

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