THE NORTH FACE MOUNTAIN

LAYERING THEORIES #1
2021 SEPTEMBER

“EXPEDITION DRY DOT” IMPRESSION

秋は季節の端境期。天気や時間帯で気温変化が大きいこの時期の登山で何を着るかは、とても悩ましいものがあります。そこで9月はTHE NORTH FACE新開発のベースレイヤーとミッドレイヤーを2人の視点から読み解きます。まずは汗冷えを防ぐベースレイヤー「EXPEDITION DRY DOT」に着目します。

“EXPEDITION DRY DOT” IMPRESSION
SCROLL TO DISCOVER MORE

秋は季節の端境期。天気や時間帯で気温変化が大きいこの時期の登山で何を着るかは、とても悩ましいものがあります。そこで9月はTHE NORTH FACE新開発のベースレイヤーとミッドレイヤーを2人の視点から読み解きます。まずは汗冷えを防ぐベースレイヤー「EXPEDITION DRY DOT」に着目します。

秋から冬の登山でのウエアリングで重要なのは「汗冷え」対策です。晴れた日中は夏のように暑く、樹林帯や急登でかいた汗はベースレイヤーを湿らせ、休憩時や風の稜線上で急速に体を冷やします。これが山では禁物の「汗冷え」。単に不快なだけでなく、体温が奪われることで、状況によっては致命的な低体温症に結びつきます。

汗冷え対策には「疎水性レイヤー」または「0.5レイヤー」と呼ばれるアイテムが効果的です。これはベースレイヤーの下に着るドライメッシュアンダーのことで、ポリプロピレン(PP)のように水分を吸収・保持しない疎水性素材の働きで、濡れた生地と肌との緩衝材となって未然に汗冷えを防いでくれます。

現在では肌寒い季節の必須アイテムになっているこの疎水性レイヤー。汗処理のために通常のベースレイヤーを必ず上に重ね着しますが、これがストレスになることもありました。ベースレイヤーといえども、やはり2枚の重ね着はわずらわしく、気温の高い日には余計な暑さも感じます。

この点に着目したのが、新開発の「EXPEDITION DRY DOT」ベースレイヤーです。これは2枚で一組だった疎水性レイヤーの機能を1着に集約させたもの。一見、1枚に見える素材はダブルフェイス構造になっており、疎水性と吸汗速乾を両立させた点が最大の特長です。

肌側の生地は、糸の段階から撥水加工を施したポリエステルニットで、これがPP素材と同じ役割を果たします。肌側の生地を素通りした汗は表面生地に吸収拡散され、速乾を促します。ドット部分で点接結している表地と裏地はまるで2枚の生地のように離れているため、肌面はドライに、表面はより乾きやすくなっています。

この1枚2役のベースレイヤーは、秋から冬、春までの汗冷えを防ぐベースレイヤーとして、または秋口や春のような比較的温暖な気候では、単体でも快適に着用できます。

オーバーヒートタイプ (暑がり)
年間60日の山行をこなすAさんの場合

THE NORTH FACEのスタッフであるAさんは、年間50〜60日の山行を続ける登山好き。夏は沢登り、秋はクライミング、冬はアイスクライミングや雪山登山と通年で山行を続け、最近ではトレイルランニングも楽しんでいます。山行中は運動量が多いこともあって、かなり汗かきのオーバーヒートタイプです。

「EXPEDITION DRY DOTはサンプルの段階から使い続けて1年半になります。薄手なだけに、最初はホントに冬山で使えるのかと半信半疑でした。でも、実際に山で使ってみると見かけによらず保温力があり、肌当たりもやわらかで着心地が良くて気に入りました。
ベースレイヤーは好みが分かれると思いますが、私はずっとメリノウールひと筋でした。湿気を含んでも肌に冷たさを感じないのが一番の理由です。また、できるだけ着る枚数は少なくしたい派だからドライメッシュアンダーは着用せず、冬でも夏でもメリノベースレイヤー1枚で通してきました。

私はすごく汗かきなんですよ。冬山のアプローチでさえだいたい汗だくになるので、そうなるとメリノウールはなかなか乾きませんよね。そこが難点だったんです。
それが昨年からこのEXPEDITION DRY DOTを使い始めて以来、メリノの出番がほとんどなくなりました。今までは、山に行く前に天気や気温を調べてレイヤリングを考えてきましたが、今はほぼこれ一択。あとは条件に応じて、上に何を着るかを考えるだけなので、かなり気に入っています。

テストを兼ねて夏でも着るようにしてきましたが、さすがに真夏は暑い。北アルプスのように高い山に行くときは、アプローチはメリノの半袖、標高が上がればEXPEDITION DRY DOTを上から被るような使い方をするので、夏でも必ず持って行きました。
秋は9月上旬くらいまでは夏と同じで、それ以降はこれを単体で着て、寒いときは上にシェルを重ねていました。10月に入れば山は寒くなるので、薄手フリースやライトダウンなどもバックパックに加えています。

メリノウールと同じく、さすがに汗だくになると生地から汗がしたたり落ちます。そんなときは表面をタオルでさっと拭いてあげれば、乾きは早まります。メリノのように生地が重くなることもないし、不快には感じたことはありません。
ほかにクルーネックタイプもありますが、やはり汗かきの私は胸元を換気できるジップアップを選んでいます。多少襟が立っているぶん、ロープを使ったときの首回りの擦れも防げますしね。

ヒートロスタイプ (寒がり)
アルパインクライマーBさんの場合

同じくTHE NORTH FACEのスタッフBさんは、ヒマラヤ遠征経験のある経験豊富なアルパインクライマー。山行はクライミング中心で、無雪期はフリークライミングとボルダリング、冬季は冬壁でのアルパインクライミングとアイスクライミングに傾倒しています。クライマーらしい痩身で体脂肪の少ない、寒がりタイプです。

「サンプル段階からずっと着ています。なにより乾きが速いし、着心地がやわらかですね。何度洗濯してもやわらかな感触は変わることなく、端的に言って非常に気に入っています。
今まではドライメッシュアンダーの上に、無雪期ならポリエステルベースレイヤー、冬なら薄手のフリースを着る2枚重ねでした。冬は今でも2枚重ねはアリだと思いますが、EXPEDITION DRY DOTの時は1枚です。2枚分を1枚でまかなう一粒で二度美味しい的な機能性は十分に体感しています。

ドライメッシュアンダーは気化熱でスースーするような冷え方もひとつの特徴ですが、EXPEDITION DRY DOTにはそれがない。それでも、しっかり乾いてくれますね。

夏の暑い日はさすがに厳しいですが、秋や春にはいいですね。特に秋口や夏場でも標高の高い稜線を行くときには、EXPEDITION DRY DOTを薄手フリースのように上に着ることもあります。超薄手の保温着という捉え方もできるわけです。

秋口なら、朝の歩き始めはTシャツの上にEXPEDITION DRY DOTを着て、暑くなったら途中で脱いで、午後遅く涼しくなったらまた上から着る。テントや山小屋泊なら防寒着代わりですね。

9月中旬以降なら、最初からこれ1枚を着て歩き始めます。その際、SWALLOW TAIL JACKETのような超薄手のウインドシェルをバックパックのすぐ出せる位置に入れて、薄手フリースかVENTRIX JACKETのような防寒着と、レインシェル上下は必ず持っていきます。

あとは、胸元のストレッチポケットが隠れたポイントです。あれがアクセントになることでアンダーウエアっぽく見えないから、上高地のような観光地の中も大手を振って歩けます。

“大きな岩壁では日の出から日没まで行動することがあるのですが、ずっと着ていてまったく違和感を感じません。寒さをシャットアウトしてくれるし、蒸れる感じもない。クライマーにとって非常にいいんじゃないでしょうか。動きを妨げない着心地も非常に魅力的ですね”

平山ユージ(クライマー・THE NORTH FACEアスリート)

“気になるのは、汗冷えが防げるかどうか。この点、かなり効果的でした。外側がはっきり濡れていても、肌面の濡れた感じは非常に少ない。1枚でここまでの効果があるならとても嬉しいアイテムです”

好日山荘横浜西口店スタッフ

“とてもいいという感触を得ていますが、なにがどういいのかを言葉に表すのが難しい製品でもあります。調子が良いので、山に行くときはつい出番が増えるモノってありますよね。そんな感覚です”

森山憲一(山岳ライター)

Aさんは「EXPEDITION DRY DOT」をベースに、寒い時期には薄手フリースかアクティブインサレーションを選択。バックパックには超薄手ウインドシェルとゴアテックス3レイヤーシェルを。

Bさんは比較的天候が安定した日は「EXPEDITION DRY DOT」を単体で行動し、バックパックには軽量な防水透湿性3レイヤーシェルを常備し、時期が深まれば薄手フリースも携行し、休憩時の保温、稜線の風、不意の悪天候に備えます。

LAYERING ITEMS IN THIS ARTICLE この記事のレイヤリングアイテム

寺倉 力
CHIKARA TERAKURA

ライター+編集者。高校時代に登山に目覚め、大学時代は社会人山岳会でアルパインクライミングに没頭。現在、編集長としてバックカントリーフリーライドマガジン「Fall Line」を手がけつつ、フリーランスとして各メディアで活動中。登山誌「PEAKS」では10年以上人物インタビュー連載を続けている。

2021.10.20
WRITER : CHIKARA TERAKURA
PHOTOGRAPHER : -

STOP PLAY