THE NORTH FACE®

SPORT CLIMBING NUMBERS

数字で紐解く
スポーツクライミング

競技性を強調した
“スポーツクライミング”

 ひと言で「クライミング」と言っても、登る対象やスケール、ロープの使用の有無などによってさまざまなカテゴリーが存在する。クライミングの進化とともに、純粋にスポーツ性を強調した、競技としてのスポーツクライミングが誕生した。始まりは、1950年頃の旧ソ連とされ、最初の国際大会は1989年に開催され、その歴史はまだ新しい。
スポーツクライミング競技の特徴としてまず挙げられるのは、登る対象が岩などの自然ではなく、人工壁であること。そこに設置されたホールド(突起物)を支えとし、手で掴んだり足場にしたりしながら、素手で登る。種目は、2人の選手が1:1で登り、速度を競う「スピード」、完登したルートの数を競う「ボルダリング」、どこまで高く登れるかを競う「リード」の3種目。ちなみに、日本選手はボルダリングを得意とする選手が多い。

3種目を複合した「コンバインド」とは

 現在、国際大会では種目別に開催されることが多いが、「リード」「ボルダリング」「スピード」のうち2種目、または3種目すべてを複合した「コンバインド」という採点方式もある。近年の大会で採用されている「コンバインド」では、それぞれの種目の順位を掛け算し、数字が小さいほど上位になる。たとえば3種目複合の場合、すべての種目が5位であれば、5×5×5=125ポイント。1種目が1位、残り2種目が11位なら、1×11×11=121ポイントで、後者のほうが上位となる。この例を掛け算ではなく足し算にしてみると、前者は5+5+5=15、後者は1+11+11=23と、前者の順位が後者を上回り、順位が逆転する。つまり、掛け算での算出方法では、3種目バランスよく成績を収められる選手よりも、優勝を狙える突出した1種目を持っている選手のほうが有利とされる
 なお、スポーツクライミングのルールは国際スポーツクライミング連盟(International Federation of Sport Climbing)によって定めてられている。観戦を楽しむのに欠かせないルールを、数字をキーに押さえておこう。

  • SPEED
  • 20 holds & 11 footholds

    ボルダリングやリードは、ルートセッターと呼ばれる専門家がルートをその都度設定するが、スピードの場合、国際スポーツクライミング連盟(ISCF)によって、ホールドは20個、フットホールド11個で構成された共通ルートが決められている。そのルートは、フランス人クライマーのジャッキー・ゴドフがデザインしたものが基準。

  • within 4 seconds

    【スタートは4秒以内に両手と片足をスターティングホールドにおく】 約6秒で勝負がつくスピードにおいて、スタートダッシュは最重要。選手は、スターターによる「At your marks」の指示から4秒以内に両手と片足をスターティング・ホールドに置かなければならないと。また、フォルススタートをすると一発で失格。2回トライできる予選では、2回目のトライでフォルススタートをすると、1回目のトライの記録も取り消されてしまう。

  • 15m

    【ウォールの高さ/ビル5階に相当】 ウォールの国際規格は高さ15m。幅は6m、傾斜は95度に前傾している。15mという高さは、日本だとビルの5階に相当し、目の前にするとかなりの威圧感がある。ウォールには同条件の2つのレーンが用意され、2人の選手が同時に、ほぼ呼吸せず6~8秒ほどで一気に駆け上がる。

  • 5.20 seconds

    【男子世界記録】種目名通り、ウォールをどれだけ速く登れるか、シンプルにその時間を競うスピード。男子の世界記録は、2021年5月のスピードクライミングW杯で、インドネシアのベドリク・レオナルド選手が、当時24歳でマークした5秒20秒。日本記録は、楢﨑智亜選手の5秒72。女子の世界記録はロシアのユリア・カプリナが持つ6秒96、日本女子記録は、野中生萌選手の7秒88。(2021年7月30日現在)

  • 16th hold

    【皆が回避する第16ホールド】スピードはルートが決まっているため、選手たちが導き出した最適な通過ルートがある。そのルートに則って登るトップ選手は全員、下から数えて16番目のホールドを飛ばしている。楢﨑智亜選手は、スタート直後のホールドも飛ばし、直線的に登る“トモアスキップ”というオリジナルのスタイルで知られ、そのルート選択によって0秒3~0秒5ほどタイムが縮まると言われている。

  • LEAD
  • 1985

    【初の大会開催年】3種目中、最も古い歴史を持つ。世界で初めて開催された競技会は、1985年。イタリアの岩場で行われたSportRocciaと言われている。初の国際大会は、1989年、フランスで開かれた。その後、欧州を中心に盛り上がっていったが、90年代に入ると日本やアメリカなどでも国際大会が開かれるようになった。

  • 12m

    【ウォールの高さ】 リードクライミングのウォールは、「少なくとも12m以上の高さを持つ人工壁」と決められている。その間に最大60手程度にもなるルートが設定され、どこの高さまで登れたか=“到達高度”を競う。最上部の終了点にロープをかけたら完登=“TOP”となる。途中で落下した場合は、到達した高さ(ホールド数)が記録される。3種目中最も長い距離を登るための持久力と、いかに効率よく登っていくのかの戦略性が問われる。

  • 6 minutes

    【制限時間】 1本のルートにかけられる時間は6分間。2017年のIFSCルール改正で、準決勝と決勝が8分間から短縮され、予選からすべて6分間に統一された。制限時間内に、パンパンにはった腕や、ふんばりがきかなくなってきた脚を休ませて回復させるレストを、どのタイミングで入れるかも勝負の分かれ目となる。

  • 1 try

    【トライできる回数】 1本のルートで、トライできる回数は1度きり。制限時間内に何度でもトライできるボルダリングに対し、落ちたら終わりの“一発勝負”なので非常にスリリングだ。トライ前には、実際に、もしくはビデオによるデモンストレーションでルートを確認できる。準決勝と決勝は、進出した選手全員で予めコースを確認するオブザベーションを行う。

  • 2m

    【確保支点の間隔】 選手は、ルートの途中にある確保支点にセットされたクイックドロー(2枚のカラビナを専用のスリングで繋げたもの)に、ロープをクリップしながら登っていくのがリード。それぞれの確保支点は、約2m間隔で設置されている。地面落下など事故に繋がる可能性もあるため、クリップをひとつでも飛ばすと失格になる。

  • BOULDERING
  • 4 to 8

    【ボルダー(課題)のハンドホールド数の平均は4個〜8 個の間でなければならない】 ルートにおける手数は最大12個で、予選、準決勝、決勝のいずれのラウンドでも、平均は4~8個の間でなければいけない。リードでは、どのホールドから初めても構わないが、ボルダリングでは開始位置が指定されている。スタートとゴール、ゾーンのホールドは、選手がわかるように色テープでマーキングされている。

  • 2 minutes

    【オブザベーション】 競技が始まる直前に、全員で一斉に、すべてのルート対して2分間オブザベーションを行い、ルートの攻略法を考える。競技順が後ろの選手が記憶が薄れそうで不利に思えるが、トップ選手は、一度オブザベーションしたルートは忘れないと言われている。また、ライバルにも関わらず、選手同士がルートを相談し合う光景は、クライミングならではだ。

  • 4 minutes

    【1課題の制限時間】 1ルートにつき制限時間は4分間。ただし、予選と準決勝は5分間。ボルダリングは制限時間内であれば、途中で落下しても何度でもトライできるので、より大胆な技が繰り広げられるのも観戦の大きな見どころだ。1度のトライで完登することを“一撃”と呼ぶ。完登数、ゾーン獲得数、そして完登とゾーン獲得に要したトライ数(アテンプト数)によって、順位が決定される。

  • 5m

    【ウォールの高さ】 ウォールの高さは5m以下と規定されている。そこに、スタートからゴールまで最大12手程度のホールドを使用するルートが複数設定されており、そのルートを制限時間内で何本登れたかを競う。最上部にあるトップホールドを両手で触り、安定した姿勢をとった時点で完登となる。

  • 4 boulders

    【決勝課題の数】通常、予選、準決勝、決勝の3ラウンドで構成される。予選のルートは5本、20名が進出する準決勝と、6名で競う決勝でのルートは2本少ない4本が用意される。それぞれスタートとゴールの間に「ゾーン」というホールドが設定されており、ゾーン獲得数は完登数に次いで順位決定の基準となる。完登数とゾーン獲得数が同じ場合には、アテンプト数によって順位が決まる。