自らが常に「READY」で楽しむことこそが、良い農業と信頼に繋がる
加藤かい

“PEOPLE” by NEUTRALWORKS.
PEOPLE
さまざまな分野で活躍する人々への「READY」な状態を紐解くインタビューを通じて、日々の活動のマインドシフトをサポートするメディア“PEOPLE” by NEUTRALWORKS.。父親が植えたオリーブの樹を受け継ぐ形で農業を始め、小田原市南足柄で化学肥料・農薬不使用で西洋野菜作りをし、オリーブ栽培に真摯に向き合う加藤かいさんにインタビュー。食を通した自身のココロとカラダとの向き合い方について、お話を伺いました。
CHAPTER
01 “0か100は必要ない。そのバランスが大事。”
02 “葛藤を乗り越えた先にある、考え方の変化”
03 “楽しむことが、「休む」ことに繋がる”
04 “美味しさ、安全性、環境への負荷”
05 加藤さんにとってREADYな状態とは
06 READYを作るための具体的なアクション
01
“0か100は必要ない。そのバランスが⼤事。”
── 加藤さんにとって、「ココロもカラダも心地良くバランスが取れている」と感じるのは、どのような状態ですか?
暇なのがダメなので、まあまあ忙しい時ですね。ある程度働いて週一度休むくらいで、家族と一緒に過ごせている時がちょうどいいバランスなのかなと思います。忙しくて身体的に疲労があるときでも、心の状態は変わらないですし、夏だから食欲が落ちるとかもないです。程よく忙しいのがちょうどいいですね。
── 常にバランスが良い状態でいるために意識的に実践されていることや大切にされていることはありますか?
自分で作っていることもあり、食事は気を遣っていますね。野菜はあるものを選択していると、自ずと旬のものを食べています。でも、僕はファストフードも食べますよ。笑
ファーマーズマーケットに出店していると、周りの出店者の方々とも仲良くなって、卵や加工品をはじめ、僕が作っていない野菜を作っている人もいるので、余ったら交換することもあります。自然とオーガニックライフを送っているからこそ、オーガニックが全てじゃないって言えるんだと思うんですよね。普段気をつけていて、なるべく摂るというのはいいと思うけど、0か100は必要ないかなと思っていますね。
あと身体を使う仕事なので、睡眠時間はしっかりとっています。ほぼ外に飲みにいくことはないですね。毎日動いていると不調はすぐ出てくるし、そのまま畑に出ると作業効率が落ちたりするので、寝ないと体力は回復しないなと思っているからこそ、睡眠は大事にしていますね。
02
“葛藤を乗り越えた先にある、考え⽅の変化”
—— オリーブなどを育てる上で、日々色んな条件下でアップデートされながら作業されていると思いますが、実際に向き合ってみて考え方の変化はありましたか?
僕は元々システム開発の会社をやっていたのですが、父が自らのレストランのために植えていたオリーブを、自分が業としてやってみようとオリーブづくりを始めました。元々家庭では自然食と呼ばれる食生活をしていましたが、今みたいに美味しい玄米ではなかったですし、僕はそういう食生活は元々は好きではないんですよ。でも自分が農業をするとなった時には、必ず「有機栽培・オーガニック」というのは耳にしますし、家庭の背景もあって、農薬ってどうなのかなと思ってはいたんです。
県立の農業大学に進み、そこでは慣行栽培という化学肥料と農薬でいかに安定的に大量生産をするかということをやっていました。はっきり言って農薬を使わないで作るというのは非常に難しい。やはり農薬も必要かなと思いながら帰ってきたものの、やっぱり使いたくないなとか、そういう葛藤はずっとありました。
オーガニックってなんだろうと思い始めて、じゃあ農薬を使うのが危険なのかなとか色々調べていくと、実際に国がテストをして、効能もあるし安全性も立証できているので特定農薬になっていたりもします。基本的には農薬を使わないようにつくれたらと思っていますが、頭ごなしに農薬を批判することも違うなとフラットに考えるようにしています。
オリーブにとって日本の環境は住みやすく、自分自身が葉っぱを広げて成長することから、周辺環境を整備しすぎず近くに生える雑草をそのままにすることで、適度なストレスで子孫を残すために実が大きくなるように育てている。
—— 実際に農業をやってこられて、加藤さんご自身の食生活に何か変化はありましたか?
今はあるもので作るようになりましたね。作り方も味に出ますけど、旬がやっぱり一番味に出るんじゃないかなと思うので、旬をすごく大事にするようになりました。
「身土不二(しんどふじ)」という考え方を大切にしていて、どんな作物であれ「自分の生活をしている気候に合ったものを食べる」という事です。夏野菜は人の体を冷やし、冬野菜は人の体を温めるというように、自分が住んでいる場所で採れたものというのは自分の体に合うんだなということからなんですよね。 実際にそういうことを考えて野菜を作っていると、土地の傾向が分かってくるので、自分の作るものもそれに合わせようと思っています。例えば、人参だと、冬の人参は甘く、夏に向かう人参は水を多く持つんです。なので、僕は人参を冬に向けてしか作らないんですよ。大きく刻んで煮込みとかに使って欲しいなと思うし、6月に採れる人参は小さい姪人参しか作っていなくて、そのままディップして食べれるなとか。作る野菜もそれで分けていますね。
03
“楽しむことが、「休む」ことに繋がる”
—— 忙しい毎日だと思いますが、仕事に取り組む際の気持ちの切り替えはどうされていますか?
オリーブの収穫をすると一年が終わっていないのにフッと落ちた感じがします。そこから冬になるので、作ることがなくなるんです。出荷はしていても、冬は種を蒔くことがないので。オリーブを採るという行為は、僕の中ではすごくキーポイントになっているんですよね。
—— 加藤さんにとって「休む」とはどういう状態を指しますか?
楽しいことをやっている時ってレストな時間だと思っているんですよね。釣りも実際は川の中歩いたりするので肉体的な疲労はすごいんですけど、休みだと思いますし。前はサーフィンもよく行っていました。
—— リカバリー方法はありますか?
僕はお酒で全てを忘れるタイプで、ナチュラルワインが好きです。美味しいものを食べて飲んで、ですね。ネガティブな話は基本的にはしないです。好きなことをしていても、正直楽しい仕事とそうじゃない仕事があるじゃないですか。なので、オリーブオイルのパッケージデザインも自分達で考えちゃったりとか、楽しい仕事をします。
04
“美味しさ、安全性、環境への負荷”
—— 加藤さんのこれまでの経歴や仕事ぶりを拝見していると、周りからの声に流されず、強い意志を持って行動する力、習うものがないところから生み出す力や、先入観を持たないニュートラルさを感じます。仕事をする上で心がけていることを教えてください。
農業をやっていく中で「美味しさ、安全性、環境への負荷」という、絶対的な三つの柱がないといけないと考えるようになりました。
最初は全部、無農薬でやっていたんですよ。でもどんどん枯れていっちゃって実も取れなくて。オーガニックという括りに入れるために、生態系に影響が出るようなものを使っても良いとは思えなくて。オーガニックだから安全性が無くなってしまうのであれば、オーガニックは捨てた方がいいと思うようになりました。
僕はオリーブ栽培がしたくて農業を始めたので、既存の考え方に縛られ過ぎず、三つの柱を大切にするためにフラットに考えるようにしています。
—— 私たちが日常生活で意思決定をするときに、どういうものを選択していくと良いのでしょうか?
生産者が自ら販売することがすごく重要だと思っているからこそ、僕はファーマーズマーケットに出続けています。生産者がお客さんを見て売ることが大事で、お客さんが生産者さんを見て買うことが大事だと思っています。そうすれば、商品のことも、自分を曝け出して言えることをちゃんと言っていると思うし、「あなたが作っているものを買いたい」というお客さんとの信頼関係が一番大事だと思うんですよね。
もっと楽しく美味しく食べることが重要で、それが考え方含めて色んなことに繋がっていくと思うんですよね。
05
加藤さんにとってREADYな状態とは、
どのような状態ですか?
晴れた日の朝と、通勤時間。
毎日植物のペースに合わせて農業をしているので、
常にREADYな状態です。
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06
加藤さんの「READY」を作るためのアクション
01. 釣りをする
家の近くの川や、その上流に入ってフライフィシングをする事。道具もこだわりのもので、いい魚を求めて遠くまで出かけることも。川の中を歩く疲労感はあるけれど、楽しむことでREADYを保っています。
02. しっかりとした睡眠を取る
身体を使う仕事なので、睡眠時間はしっかり。毎日動くため身体の不調は出るもの。そのまま畑に出ると作業効率が落ちたりするので、寝ないと体力は回復しないなと思っているからこそ、睡眠は大事にしています。
03. ナチュラルワインを飲む
美味しいもの食べて、美味しいもの飲むのが大切な時間。特にナチュラルワインが大好きで、奥様ともよく一緒に飲むそう。ネガティブな会話はせず、夫婦の時間も大切にしています。
04. 野菜の価値がより伝わる写真を撮る
夫婦でカメラが趣味で、野菜の価値がより伝わるように一畑で一緒に撮影します。また新しいプロジェクトの写真撮影など、夫婦で楽しく取り組むアクションのひとつ。
加藤かい Kai KATO
Green Basket Japan代表。オリーブ・西洋野菜農家。大学卒業後は地元を拠点にシステム開発会社を立ち上げ独立。9年間経営をした後、「自然の中に入って仕事がしたい」と父親が植えたオリーブの樹を受け継ぐ形で2017年にオーリブ農家に転身。現在は神奈川県小田原市と南足柄市の畑でオリーブを生産、その他オリーブに合う西洋野菜を農薬不使用・植物性肥料のみで栽培している。2018年春に世界最大規模で行われたオリーブオイルの品評会「NYIOOC(ニューヨーク・インターナショナル・オリーブオイル・コンペティション)では、銀賞を受賞。「身土不二」を広義に捉え、健康や環境に配慮した土作り・野菜作りを行っている。
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Farmers Market @ UNU
毎週土曜日、東京・青山の国連大学前で開催しているファーマーズマーケットに出店されています。「いい生活は、いい食事から。」自分たちがつくったものを自分たちで目の前のお客さまとコミュニケーションしながら販売することで、フィードバックをもらいながらより良いものづくりをすること。ご夫婦でいらっしゃることもあるので、是非加藤さんに会いに足を運んでみてください。
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編集後記
今回は東京から車を走らせ、加藤さんが営まれるオリーブ農園とその作業場へインタビューに伺いました。想像している農園とは異なり、エディブルフラワー(食べられるお花)が綺麗に咲き乱れていて、農園の中の生態系を大切に設計がされていること、その想いの深さと今までの挑戦の連続に触れることができました。知っているようで知らないオーガニックのこと。実際成長している作物もかじって匂いを嗅いで体験させてもらうことで、加藤さんの言う「美味しいものを、生産者に触れて買うこと」が私たちの身体や地球のことへの入り口になっていることを体感を持って理解できました。毎週土曜日のファーマーズマーケットへ実際に足を運び、作り手と会話をし、選択し、購入する。私たちが実践しやすい体験なので、みなさんにもお楽しみいただけたら幸いです。
Publication date: 2022.05.27
Photographer: Tetsuo Kashiwada
Interviewer: Shota Fujii
Writer: Yukari Fuji