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        数百年生き抜いた木と向き合い続ける二人の、物事に向き合う真摯さ
        澤 太一郎 & 山田 景

        “PEOPLE” by NEUTRALWORKS.
        PEOPLE
        数百年生き抜いた木と向き合い続ける二人の、物事に向き合う真摯さ 澤 太一郎&山田 景
        さまざまな分野で活躍する人々への「READY」な状態を紐解くインタビューを通じて、日々の活動のマインドシフトをサポートするメディア“PEOPLE” by NEUTRALWORKS.。
        鳥取で数百年という時間を生き抜いた天然木のみを扱い、20年以上もの歳月をかけて一枚板のテーブルを制作する「鳥ノ木」さんの澤太一郎さんと山田景さんにインタビュー。数百年という、人間のスケールを超えた時間を経た木々と向き合い、共に過ごす中で変化したというお二人のニュートラルな考え方をはじめ、普段の生活の中でのココロとカラダとの向き合い方について、木のパワーが漲るアトリエ兼ショップでお話をお伺いしました。
        CHAPTER
        01 “感じるままに、内にある自然のリズムに従う”
        02 “数百年もの時間を生き抜いた木の力強さと表情の豊かさ”
        03 “人生に寄り添い、手放せなくなるもの”
        04 “失敗の積み重ねが、良いものを生み出す糧になる”
        05 二人にとっての「READY」な状態とは
        06 澤さん & 山田さんの「READY」を作るためのアクション
        01
        “感じるままに、内にある⾃然のリズムに従う”
        ── 鳥取で数百年生き抜いてきた木々と日々向き合っていらっしゃるお二人ですが、自然と人間のリズムが乖離する中で、どのように歩調を合わせていらっしゃるのでしょうか?
        山田さん:太一郎さんは時間が読めないんですよ。アトリエにいるだろうなと思ったらいないし、いないだろうと思ったらいて、めっちゃやってるし。笑 すごく忙しい時でも息抜きはきちんとするところを見ると、熟練の技なんだなと思いますね。
        澤さん:とにかく縛られたくないので、自由にやっています。いつも寸前になってからやり出しますね。笑
        山田さん:期限を決めてやっていても面白いことは生まれなくて、いざやるとなった時にひらめきが生まれたりする。人が計算せずにできる「即興」というのがすごく大事だなと思っていて、まさに木を仕上げる時も、大きさや幅を決めて作っていても、こんなに面白いものは生まれないと思うんです。いざ木と向き合った時に、「どうする?ここ切ろうか!」と決めて、スパンと切ってしまうとか。そういう姿を見た時に、良い仕事や良いパフォーマンスって計算じゃなくて、その人の人間味とか悩んだ末に出た答えみたいなものなんだと思いました。僕はそういうものが美しいなと思うし、その方がやっていて面白いと思うようになりましたね。
        構えすぎた時の仕事やパフォーマンスってつまらないし、それなりのものになってしまう。誰かの意見を参考にした答えではなく、もっと一人ひとりの人間的な部分を見て物事を提案していきたいと思っています。自分は誰かの意見を参考に生きていた部分もあったのだなと思うと、木の仕事をし始めてからはそこの感覚が全然違ってきているなと感じます。木と対峙した時やテーブルを仕立てる職人さんたちと関わる中で、少しずつ自分が出せてきたなと思っています。
        澤さん:自分を出すつもりでいないとね。自然体でいいんじゃないですかね。この木も、一枚しかないのでね。これが誰の手に渡ろうと、木の魅力やパワーを感じて分かった人に持って帰ってもらうという方向でいいと思うんです。下手に味をつけたり装飾したりということは一切やらない。それが私らがやっていく、せめてもの提案です。どこに傷があろうと、それが姿ですから。
        02
        “数百年もの時間を⽣き抜いた⽊の⼒強さと表情の豊かさ”
        ── 鳥ノ木で選ばれた木が一枚のテーブルになるまでには、どのようなプロセスがあるのでしょうか?
        山田さん:まずは素材となる原木を調達します。木が立っている段階から伐採してそのまま乾かすこともあれば、原木市場で競りをして原木を手に入れることもあります。そうして手に入れた原木を土場に置き、自然の中で10年から20年乾燥させます。木は伐採した段階だと水をたくさん含んでいて、そのままテーブルにしてしまうと捻れたり曲がったりしてしまうので、自然に水が抜けていくのを待ちます。
        澤さん:木を水に浸けると浸透圧の関係で馴染んでくるので、乾燥させるのには一番早い方法なんです。買った木を水に浸けてひっくり返すというのを何年も続けて乾燥させることで、繊維が生きるんです。水にさらすのには40年くらいかかるんですが、そんなスパンでは待てないので、私たちは自然の中で雨風に晒して、ほっとくんですよ。そうすると、ダメなものは腐って土に還るので。
        ── アトリエに並ぶ一枚板たちからは木の力強さを感じます。実りある時間を過ごしてきた木と、そうでない木にはどのような違いがあるのでしょうか?
        澤さん:この子はえらい目に遭っているなあとか、すごいことがあったんだなあというのが分かるかどうかですね。雷に7回撃たれても生き残った樹齢900年の木がありましてね、その木は手にした皆さんが感動するという力を持っているんです。その木を割ってみると、色んなところに傷があるんですよ。それが我々の手に入った時は、もう飛び上がるくらい喜びましたね。その木に出会うことができる、そして迎え入れられるということ自体、大変なことなんです。
        ── 木との巡り合わせは、運命のようなものなのでしょうか。
        澤さん:そういうものがあるんでしょうね。物事は自分達が決めた通りになるかといったら、そうはならないんですよ。それが当たり前なんです。木は自然のサイクルの中で生きている。数百年生きた木ばかり見ていると、その中に木の生きた過程が全て見えちゃうんですよ。木は正直なので、切って中身を見てみると、どこで育っていつ伐採されたのかということまで分かってくるんです。同じ顔がないんですよ、木には。人間の生き方とすごく似ていますね。
        03
        “⼈⽣に寄り添い、⼿放せなくなるもの”
        ── 民藝では、「つくり手八分、使い手二分」という考え方がありますが、ものを作る上で大事にされていることはありますか?
        澤さん:自然を崩さないということですね。数百年もの時間を一生懸命生きた木が誰かの手に渡って崩されてしまったら跡形も残らないですし、そんなことって悲しいじゃないですか。私は買った時の顔をみんな覚えていますので。個性のない木はないんでね。ある日、お客さんが一枚のテーブルを迎え入れてくれた時に「この木があったらもう少し頑張れそうな気がします」と言ってくれたことがあります。伝わったんでしょうね。とても嬉しい出来事でした。木に種類があるように、人間にも種類があるので、バタッと合うものがあるんですよ。そうして選ばれた木が一番その方に寄り添うことができる。いいなと思ったら目が肥えてきますから。そうすると考え方も変わってくるし、判断力も出てきて、偽物もいらなくなる。
        山田さん:テーブルを迎え入れたことで生活が楽しくなったり、色んなことが変わってきたという声を聞くと、やっていてよかったなと思いますね。良いものに出会うと、ものを見る目も変わっていく感じがします。素材ってすごく大事ですよね。永く使おうというよりは、永く使っちゃう。経年変化を楽しむことがまたよかったりするなあと思います。
        澤さん:永く使うというよりも、放せなくなる。やっぱり自然体でいられるものには飽きが来ないので、何年でも使えるんです。たとえ汚れても、とにかく永く使えるものがいいですね。
        04
        “失敗の積み重ねが、良いものを⽣み出す糧になる”
        ── 木と向き合い、テーブルを制作する際に大切にされていることは何でしょうか?
        澤さん:とにかく失敗をしないと良いものは生まれないということですね。何回も失敗していますよ。
        山田さん:土場で木を乾燥させていく際に、朽ちていく場所があるんです。でも太一郎さんは、「朽ちたら朽ちたでいいじゃないか」と言うんです。「朽ちたのも、それは自然が作った絵なんだから」と。人が形を作る必要はなく、生きたまま残っていくというのが僕はすごく好きです。
        澤さん:見た方の感覚を満足させようということはできません。皆さんが見た時の感覚は違いますから、それを合わせるなんてことはできないんです。朽ちたら朽ちたまま、その姿でいいんですよ。良いものを生み出すために何が大事かといったら、とにかく失敗することです。失敗を怖がっていたら何もできませんよ。いいこともできない。でもそれでよかったと思っていますから、失敗して後悔することはないですね。
        山田さん:太一郎さんは、「人間は勘違いだ」とよく言うんですが、それがすごくいいなと思っています。失敗と捉えるか、それが次への一歩だと思えるか。失敗しても意外とどうにかなったという積み重ねって絶対に必要だと思っています。それをどうにかする臨機応変さとかは経験の数だと思っているので、そういう意味では、失敗は多い方が対処法も沢山出てくると思いますね。
        05
        お⼆⼈にとって「READY」な状態とは、どのような状態ですか?
        “何にも縛られないこと。自由にやれている時”
        澤 太一郎さん
        “好きなものに囲まれていること。自然体でいられる環境に身を置いている時”
        山田 景さん
        数百年生き抜いた木と向き合い続ける二人の、物事に向き合う真摯さ 澤 太一郎&山田 景

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        06
        澤さん & ⼭⽥さんの「READY」を作るためのアクション
        数百年生き抜いた木と向き合い続ける二人の、物事に向き合う真摯さ 澤 太一郎&山田 景
        01. 好きなものに囲まれる(山田さん)
        自分が身を置く環境を大切にされている山田さんは、ご自身の部屋づくりにもこだわりが。朝、大切なテーブルの上でお気に入りのマグカップに淹れたコーヒーを飲み、レコードを聴く瞬間がとても豊かだと感じます。
        数百年生き抜いた木と向き合い続ける二人の、物事に向き合う真摯さ 澤 太一郎&山田 景
        02. 断食でリセットする(澤さん)
        普段から食事には気を遣っており、旬の食材を取り入れたり、体調に合わせて食べるものを選択しています。一方で、身体の調子が悪いなと感じたら断食を行い、カラダの中をリセット。断食が終わった頃には、カラダの調子が完全に元通りになっています。
        数百年生き抜いた木と向き合い続ける二人の、物事に向き合う真摯さ 澤 太一郎&山田 景
        03. 自然の中に身を置く(山田さん)
        自然の中に身を置くことでリセットできるので、木を見に行ったり、温泉に行ったり、疲れた時は海へ行きます。
        数百年生き抜いた木と向き合い続ける二人の、物事に向き合う真摯さ 澤 太一郎&山田 景
        04. 何もしない(澤さん)
        毎朝のルーティンや、日々欠かさず行うことを決めていません。縛られず、自由に、やりたいと思った時に好きなことをします。
        澤 太一郎 Taichiro Sawa
        一級建築士、一枚板職人。1948年鳥取生まれ。
        20代から関西で建築に携わり、大型ビル建設や住宅設計など数多くの設計・施工を手がける。その後地元鳥取に戻り、建築事務所を開業。木造建築の設計にこだわり、同時に、鳥取の木の魅力に惹かれ、30年以上を掛けて鳥取産の原木のみを数千本買い集める。木への独自の考え方をもち、自身の経験をもとに、現在も一点物の一枚板テーブルを製作している。
        澤 太一郎 Taichiro Sawa
        ⼭⽥ 景 Kei Yamada
        TORINOKI FURNITURE ディレクター。1987年鳥取生まれ。
        大学卒業後、大阪中崎町の名店「Fethers goffa」にてキャリアをスタート。大手スポーツメーカーでの営業を経験した後、地元鳥取に戻り、株式会社トリクミに取締役として参画。飲食事業、宿泊事業などを立ち上げる。店舗をつくる中で約10年前に澤と出会い、木の奥深さ、物作りへの情熱に惹かれ、澤達と共に一枚板ブランド「鳥ノ木」を立ち上げる。2022年10月には、京都岡崎に実店舗「TORINOKI FURNITURE」をオープン。一枚板テーブルの新たな可能性を提案している。
        ⼭⽥ 景 Kei Yamada
        ⿃ノ⽊ TORINOKI
        鳥取の厳しい環境を生き抜いてきた樹齢300年を越える個性豊かな希少な天然木を厳選し、10年から20年の歳月をかけて木を寝かせ、職人の手仕事で一枚板テーブルをはじめとする、一点ものの家具を仕立てている。人それぞれに違いがあるように、木にもそれぞれの特性がある。悠久の時を経て木目に現れたネジレやヒビ、雷に打たれた痕すらも個性と捉え、自然の雄大さを日々の暮らしの中で楽しんでもらえるよう、製作している。22年10月28日(金)には、京都の岡崎に「TORINOKI FURNITURE」をオープン。
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        編集後記
        今回は鳥取にある鳥ノ木さんのアトリエ兼ショップ、そして場所が明かされていないという、木々を10年近く乾燥させるための土場を特別に見させていただきました。木を伐採してから一枚のテーブルができるまでには、なんと約20年という時間がかかるのだとか。自然による数々の苦労を生き抜いた証がそのまま残された一枚板がズラリと並ぶアトリエに足を踏み入れた瞬間、ものすごい木の力強さを感じたとともに、ずっとそこに居たくなるような心地良ささえ感じました。一つとして同じものがないという木の豊かな個性は、私たち人間と重なる部分がある。そんな木と向き合う時間は、普段の生活の中では気づけない、大切なことを私たちに伝えてくれているかのようでした。木と対峙する日々の中で培ったお二人のニュートラルな考え方や、ココロとカラダとの向き合い方はもちろん、お二人の柔らかく温かい雰囲気も記事の中から感じていただけますと幸いです。
        Publication date: 2022.11.28
        Photographer: Tetsuo Kashiwada
        Interviewer & Writer: Yukari Fuji