NEUTRALISM – 35

皆さんは「Surf and Turf（サーフ ＆ ターフ）」というフレーズを聞いたことがありますか？料理のスタイルで海と陸、例えばシーフードとステーキ両方を一度に食べるメニュー名として使われることが多いのですが、カリフォルニアでは食事に限らず「サ―フィンとゴルフ」を表します。海ではサーフィンをして、陸ではゴルフを楽しむという、カリフォルニアらしいライフスタイルです。今回は、そんな遊び上手なカリフォルニアローカルから学ぶ「楽しみ」の追求についてのお話です。

CHAPTER
01　柔軟マインド
02　ピュア⽬線
03　「楽しい！」は広がる

西海岸には、沢山のサーフポイントとゴルフ場が点在していて、ローカル達は昔から「サーフィンできないからゴルフしよう！」と、波の無い日や風が吹きやすい午後にはサーフボードをクラブに替えてゴルフを楽しんできました。このカルチャーは今も健在で、多くの人がゴルフとサーフィンの両方「サーフ＆ターフ」をエンジョイしています。
波乗りをする人とって、海に入れない状況は大きなストレス。自然を相手にするスポーツだから、自分ではコントロールできない状況が殆どです。日常生活でも予定や計画が急遽キャンセルになったり、プラン通りに進まないことは多々ありますよね。サーフ＆ターフを楽しむ人達は、そういったコントロールできない状況を「楽しめない＝ストレス」として処理するのではなく、「楽しい」へ導く事ができるみたい。この「マインドの柔軟性」こそが、サーフ＆ターフの神髄なように感じます。

同じ波は決して2回来ないから、サーフィンは何年続けていても毎回が初めて同様。海の中では、出身も職業も性別も年齢も経歴も関係ありません。個性を表すのは、その人が「その時、その場面で、瞬間にどう動くか」のみ。だからかカリフォルニアサーファーにはいつまでも謙虚で純粋、物事に対してニュートラルなスタンスな人が多い気がします。
そんなフリースタイルな感性が全てのサーフィンと、細かなルールのもと完璧に管理された芝でプレイする知的なゴルフ。対極なようですが実は共通点も多く、芝の凹面や風を読む感覚や、スウィングする時のカラダの捻りと波でターンする時の体勢などは、意外にも共通しています。一見プレイヤーもスタイルも異なるスポーツでも、双方で使うポイントが多々あるのです。

こういったことに素直に気付き・吸収できるのも、違いを偏見なく受け入れ、純粋に様々な事をチャレンジしてみようというマインドセットだから。その感覚は、「“楽しむ”ってこういうことだったんだなぁ」とピュアに思わせてくれるものでした。

私自身カリフォルニアでサーフィンをしてきたものの、ゴルフに挑戦する勇気が持てず、サーフ＆ターフは未経験でしたが「挑戦あるのみ！」という事で、最近ゴルフのスウィング練習を始め、ようやくサーフ＆ターフを実践。まだ今は数回だけですが、海からターフまで行動範囲を少し伸ばせたことで既に驚くほどの気付きを得ています。沢山のアスリートがクロストレーニングを推奨している理由も、改めて実感。これまでヨガ・ラン・サーフをミックスしていたのに、新たに感じたことのない箇所に筋肉痛を覚えました。そして何よりも、普段の生活でも純粋に「楽しい」を追及できれば、私達は偏見や仕切りをもたずに、色々なもの共通点や気付きを見つけ、もっと沢山の人と通じ、行動範囲・遊び場は大きくなり「楽しい！」が広がるのだと感じました。

サーフ＆ターフの遊び心は、私達を“楽しみ上手”へ成長させてくれる強力なマインドセット。新生活が始まったばかりなこの時期は、新しい環境に違和感があったり、不安を感じることもありますよね。そんな時はサーフ＆ターフをお手本に、異なる様にみえるものにも必ず潜んでいる“気付き”を探して、自分の「楽しい！」を広げてみるのも良いかもしれませんね。

Photos by: SSNRS