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Speedo / Concept Film "Water Baby"
Production Staff Credit
Creative Director : Bruce Ikeda
Director : Yu Nakajima, Yuki Fujinaga
Producers : Ryoichiro Honma, Bruce Ikeda
Music : Jun Miyake
DP : Carlos Toroya
AC : Mikael Senninge
Lighting : Jun Tanaka
Underwater Videographer : Masaaki Chichimatsu
Underwater Director : Daisuke Ishizuka
Cast : Raika Fujii Editor / Visual Effects : Yuki Fujinaga
Colorist : Elizabeth Hickey
Production Managers : Kenji Kinoshita, Carlos Toroya
PA : Ryunosuke Ishikawa
Production companies : JKD Collective, Hatch

Special Talk Session

三宅純 × 藤井来夏

競技用水着の雄として90年の歴史を持つSpeedoは、その長き歩みの中でトップアスリートから一般のスイマーまで、幅広く水に触れる人々をサポートし続けてきました。泳ぐ行為そのものが競技であるか?趣味であるか?ということは、言うまでもなく私たちがブランドとして水泳に関わるうえで存在し得ない境界であり、むしろより根源的な問いかけを続ける中で、あるひとつの書籍に巡り合うことが出来ました。

『なぜ人間は泳ぐのか?』(太田出版)リン・シェール 著/高月園子 訳 

生物の進化と水の関係や水泳の歴史、科学や生理学、心理学などさまざまな方向から、「なぜ人間は泳ぐのか?」を本質から探求したこの本に感銘を受けた私たちは、『WATER BABY』と銘打ったひとつの映像作品を制作し、6月に公開しました。この『WATER BABY』の完成を祝して、Speedoは6月13日(木)に東京・渋谷のTRUNK HOTELでトークセッションを開催。お招きしたのは神秘的とも幻想的とも言えるこの映像表現を可能にした、最たる二人の協力者。キャストであるオリンピックメダリスト(現在はプロ・シンクロナイズドスイマー)の藤井来夏さんに、音楽をご制作いただいた世界的な音楽家の三宅純さん。

制作秘話から日常のスイムライフまで『WATER BABY』のコンセプトを紐解きながら、異なる世界でご活躍のお二人が語った、泳ぐことの意味とは!?

Jun Miyake

三宅 純

三宅 純

photo by Hiroyuki Matsukaze

日野皓正に見出され、バークリー音楽大学に学び、ジャズトランぺッターとして活動開始。以後、作曲家としてCM、映画、アニメ、ドキュメンタリー、コンテンポラリー・ダンス等多くの作品を手掛ける。3000作を超えるCM作品にはカンヌ国際広告映画祭等、受賞作多数。ピナ・バウシュ、ヴィム・ヴェンダース、ロバート・ウィルソン、フィリップ・ドゥクフレ、オリバー・ストーン、ジャン=ポール・グード、大友克洋らの作品に参加、異種交配を多用した個性的なサウンドは国際的賞賛を受けている。
2005年よりパリにも拠点を設け、アルバム"Stolen from strangers('07)"、"Lost Memory Theatre act-1('13)"、"Lost Memory Theatre act-2('14)"は仏独の音楽誌で年間ベストアルバム賞・音楽批評家大賞等を受賞。
ギャラリーラファイエット・オム「2009年の男」に選ばれ、パリの街を三宅のポスターが飾った。主要楽曲を提供したヴィム・ヴェンダース監督「ピナ/踊り続けるいのち」は2011年ヨーロッパ映画賞でベスト・ドキュメンタリー賞受賞、2012年には米・英のアカデミー賞にノミネートされた。
リオ・オリンピック閉幕式における、斬新な「君が代」のアレンジが話題に。

Raika Fujii

藤井来夏

藤井来夏

プロ・シンクロナイズドスイマー
「RAIKA ENTERTAINMENT」主宰
シドニーオリンピック・銀メダリスト / アトランタオリンピック・銅メダリスト

6歳から地元のスイミングスクールで水泳を習い始め、8歳でシンクロナイズドスイミングを始める。小学校6年生の時、井村シンクロクラブに移籍。ナショナルチーム歴10年。数々の世界大会に出場し、メダルを獲得する。選手生活を18年でピリオドを打ち、2000年シドニーオリンピック後に引退。
その後、プロ・シンクロナイズドスイマーとして活動をスタート。
主にシンクロナイズドスイミングショーをはじめ、シンクロナイズドスイミングの体験会、リズム水泳セミナーなど、シンクロナイズドスイミングの普及につながる活動にも取り組む。現在はプロ・シンクロナイズドスイマー「RAIKA ENTERTAINMENT」主宰を務めるほか、テレビ・ラジオ・トークショーなどにも出演。

宙に浮かぶことの出来るチャンス
空を飛ぶ感覚に一番ちかいもの

(リン・シェール 著『なぜ人間は泳ぐのか?』より引用)

Speedo:「今日はお忙しい中お越しいただき、本当にありがとうございます。まず(藤井)来夏さんにお訊ねしたいのですが、今回のオファーを受けたときにどんなことを考えられましたか?」

藤井:「そのコンセプトの素晴らしさにはもちろん共感しつつ、それをどう実現するのか?ということが気になりましたね。水の中の環境に長けているのは制作陣の中でも自分だけでしたから。例えば水温。私たちが泳ぐうえで適温とされているのが約27℃から30℃とされていますが、最初にした確認では25℃でした。長時間に及ぶ撮影の中で、それをどうコントロールできるかは、まず始めに遭遇した課題でしたね」

Speedo:「それに演出における水深の問題もありましたよね。撮影に使ったのは水深6mのダイビング用プール。演出のプランは底から何回も浮かび上がっていただいて撮影する想定でしたが、水圧や体力面を考慮するとそれが無理だということも分かって。結果底からの蹴り上げなしで、水深2〜3mから泳力だけでこちらの要望に応えていただいたことになってしまって、その身体性に驚くとともに、深く感銘を覚えました」

内面への旅
水泳は精神を集中させ、
心を深い思考に導く

集中力を要求し、
同時に時間を一時停止し、

空想を連想させる

(リン・シェール 著『なぜ人間は泳ぐのか?』より引用)

三宅:「素朴な疑問なのですが、水の中の音響って、空気じゃなくて水が振動して伝わるのですよね?耳に届くまでにディレイが生じることはないのでしょうか?」

藤井:「驚くかもしれないんですけれど、水中スピーカーの出音は地上とタイムラグがないんです。むしろ演技に際してシンクロの世界では、選曲からそれに合わせて振り付けを考えるなど、水に入る前の準備期間が相当必要ですが、今回はそれが本当にギリギリになったのが不安でした(笑)」

Speedo:「その点に関しては、我々の責任です。というのもまさか三宅さんが我々のオファーを受けてくださるなんて思ってなかったので!音楽に関しては、半ば未定のままこのプロジェクトは進行していて、もう撮影が差し迫っていたタイミングで自分に問いかけたんです。ずっと敬愛していて、かつ30年以上も!毎日毎朝プールで泳いでいる三宅さんが、もしこのWATER BABYに楽曲を提供してくれたならどんな音が流れてくるんだろうって、妄想してしまったんです。昂ぶる気持ちがどうしても抑えられず、何時間もかかって直接オファーのメールをしてしまってから、数時間後パリから直接お電話頂いたのは本当に恐縮し、感激いたしました。

三宅:「なんだかとても鬼気迫る雰囲気だったので(笑)、電話で確かめるのが早いと思ったんですよ。事前に頂いた映像のコンテは"静"と"動"の対比から構成されていました。撮影日が目前だったので、既存音源からのセレクションとさせていただくことになったのですが、泳いでるうちに、その"動"の部分に合う未発表曲が、僕が長らくコラボレーションしているブルガリアン・ヴォイスを起用した楽曲の中にあるのを思い出しました。さらにその曲には本来"静"の導入部があり、そのパートだけを切り離して自分のアルバムに収録してたことも思い出しました。もともとは一つの楽曲だったものが、訳あって離れ離れになり、それが今回の件をきっかけに再びひとつに形を成したという経緯です」

海は子宮、地球は子宮
もしくは、私たちの無意識
私たちは、大地に降り立つ前から
子宮の中で泳いでいた

(リン・シェール 著『なぜ人間は泳ぐのか?』より引用)

Speedo:「この『WATER BABY』の根幹を成すテーマに輪廻転生があります。今お話を伺って、まるで制作過程から啓示的なエピソードを伺ったようで昂揚いたしました。そもそも我々のオファーをご了承いただいた理由について教えていただけますか?」

三宅:「泳ぐ行為は官能的であり、そこはひとりきりの空間であり、どこでもない世界にも行ける。水は異界との接点であるとも言えます。僕がライフワークである『Lost Memory Theatre』シリーズで表現したことも、想像の世界に現出させた異界。そこに共通する概念を感じたことが最たる理由です。輪廻転生に関しても然り。三部作となった『Lost Memory Theatre』第1幕の冒頭曲と、第3幕の最終曲は同じ楽曲でありながら、歌手と歌詞を使い分けて収録され、結果として3つの幕が円環状に繋がるという輪廻感を表現するに至りました。Speedoさんがあの書籍をきっかけに生命の循環や輪廻転生を通じて、『なぜ人間は泳ぐのか?』を問い、答えを求めることは自分の音楽ともオーバーラップしたのです」

水に飛び込んだら別世界
重力がない 音さえ聞こえない
潜水は、
すっぽりと静寂な水に包まれる
聖なる瞬間

(リン・シェール 著『なぜ人間は泳ぐのか?』より引用)

藤井:「三宅さんは毎日泳がれるんですよね?パリのプール事情についても教えてください」

三宅:「パリのプールって老朽化もあってよく故障もすれば閉鎖もするんです。その度に僕は途方に暮れ、その日に泳げるプールを探して彷徨います。パリだけじゃなくて世界のどこにいてもそう。プールがないと僕の1日は始まらないのです。もう30年以上もそれが日常の営みとして当たり前になり過ぎているので、"なぜそこまでして泳ぐのか?"っていう理由をちゃんと考えたことがありませんでした。今回はいいタイミングでその問いに向き合う機会を頂いたと思っています」

「なぜ人間は泳ぐのか?」

この根源的な問いに対する取り組みとして、『WATER BABY』はまだ始まりに過ぎません。今回のトークセッションで三宅さんがお話された中で、印象的な言葉がありました。「ルネッサンス期の絵画において、天使は現世とあの世を繋ぐ触媒的な存在として描かれており、それは異界との接点とも言える水と似ている」と。果たしてSpeedoが全てのスイマーにとって"天使"になれるかどうか?今後のSpeedoの展開にぜひご期待ください。

PHOTO:Ryuta Seki
TEXT:Makoto Miura(COLAXO)

INFORMATION

『なぜ人間は泳ぐのか?』

水泳をめぐる歴史、現在、未来

リン・シェール 著
高月園子 訳

価格:2400円+税
判型:四六判
ページ数:268ページ
ISBNコード:9784778313661

水泳の歴史は、人類の歴史そのものだった。

69歳で長距離横断水泳に挑んだ著者による、カナヅチにも楽しめるスリルと驚異に満ちたヒストリー。
「なぜ人は泳ぐのか?」

わたしたちの内にあるそんな素朴な疑問に対する答えが、生物の進化と水の関係、水泳の歴史、その科学、生理学、心理学などさまざまな方向から熱っぽく探求される。ヒストリカル・スタディーズ第5弾となる本書では、著者が69歳でダーダネルス横断泳に挑み、みごと完泳を収める過程をユーモアとスリルたっぷりに描きながら、有史以来、水泳が人間にとっていかにユニークで貴重な友人であったかを豊富な図版とともに考察する。比類なき「水泳の歴史」。

*2012年、ブック・オブ・ザ・イヤー受賞(エコノミスト誌)

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S/S WATER BABY Tee

SA31901
¥5,940

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