THE NORTH FACE MOUNTAIN

LAYERING THEORIES #20
2023 November "SNOW PACK"

“SNOW PACK”

「チュガッチ」をリリースして以来、毎年のようにバックカントリーに特化したスノーパックの充実に力を入れてきました。今季はチュガッチシリーズを発展させた「アークティック48」が新登場し、より目的に応じた選択が可能になりました。

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「チュガッチ」をリリースして以来、毎年のようにバックカントリーに特化したスノーパックの充実に力を入れてきました。今季はチュガッチシリーズを発展させた「アークティック48」が新登場し、より目的に応じた選択が可能になりました。

PART.1 THE NORTH FACEスノーパックの概要

ChugachからArcticへ

スノーパック「チュガッチ」が誕生したのは2013年。国内のスキー&スノーボードガイドの要望をもとに、バックカントリーでの使用に特化して開発されたものでした。「Chugach」という名は、もちろん、究極のフリーライディングエリアとして知られるアラスカ・チュガッチ山地に由来したものです。
初期モデルはガイド装備を想定した40Lサイズのワンモデル。優れたコンプレッションシステムによって荷物の容量変化に無理なく対応するもので、ガイドだけではなく、ワンデイのバックカントリーツアーでも使いやすいスノーパックとして登場しました。
スキーやスノーボード、スノーシューを装着してもブレ感なく行動でき、ハイクやライディングにストレスを与えない優れたバランス性があり、2気室としても使えるメインコンパートメントはトップからも背面からもアクセスできる2ウェイ仕様。独立したスノーセイフティギアポケット、スキー/スノーボードキャリー、ポールやアックスのアタッチ、ゴーグル/サングラスポケット、ヘルメットホルダーなど、バックカントリーパックの定番といえるファンクションをすべて備えていました。
また、すべてのジッパーやバックル類はスノーグローブをしたまま操作でき、荷物を満載した状態でも背面ジッパーを無理なく開け閉めできるなど、細部まで計算しつくした使い勝手も好評を博した理由です。
以来、毎年のようにアップデートを繰り返しつつ、シーンや目的に合わせて容量の異なるモデルをリリースしてきました。大幅なモデルチェンジではなく、開発時のデザインコンセプトを守りながら、細部やパーツ、使い勝手を熟成させてきました。その結果、現行モデルはすでに完成に近い領域に達しています。

今季は、このチュガッチシリーズで培ったノウハウをベースにした新設計の「アークティック48」が新登場します。
バックカントリーパックとしては大柄な48Lモデルながら、Mサイズで1.4kg台という軽量化を実現。春のロングツアーや小屋泊ツアー、急峻な地形にアクセスするクライム&ライドなど、その軽量性を生かした行動を可能にします。

用途や目的に合わせたスノーパック5モデル

まずはラインナップ全体をご紹介しましょう。チュガッチは18Lから45Lの4モデル、新登場のアークティックは48Lモデルで、スノーパックとしては5モデルの展開になります。

▶ Chugach 18

リフトアクセスのパウダーに

リフトやゴンドラを使ってスキー場周辺のバックカントリーを滑るときも、最低限、ショベルとプローブは携行したいもの。それにプラスして、替えのゴーグル、水分、行動食、防寒着など必要最小限に徹した18Lのミニマムサイズ。重量の負担もほとんど感じることなく、ライディングに集中することができます

▶ Chugach 28

ワンデイのガイドツアーのお勧め

バックカントリーでの経験を重ねた人や、ガイドツアー参加が前提なら、ある程度、装備を絞り込むことができます。ショベルとプローブ、クライミングスキン、サーモボトルと行動食、替えのゴーグルとグローブに防寒用インサレーションなどを加えて丁度いい28Lサイズ。ブレ感の少ない薄型で、軽快なハイクアップと、快感度の高いライディングを楽しめます。

▶ Chugach 35

ワンデイバックカントリーツアーの定番

ワンデイのバックカントリーに必要な装備をすべて収める定番サイズ。使いやすいバックローディングとトップからの2ウェイアクセスに、スキー/スノーボードキャリー、サイドコンプレッション、各種ディテールに至るまで、バックカントリー用スノーパックに必要な機能をもれなく搭載。初期モデルのDNAを正統に受け継ぎながら、毎年のアップデートで精度を高めています。

▶ Chugach Guide 45

山小屋泊のバックカントリーツアーへ

スキーガイドが必要とする装備に適した45Lサイズ。ガイドでない方も、たとえば、春に必要なクランポンや、厳冬期は厚めのオーバーダウンなどの装備を追加、あるいは荷物が増える山小屋泊のツアーなら、45Lサイズが安心です。チュガッチシリーズで唯一、便利なトップリッドポケット仕様。また、装備が少ないときでもサイドコンプレッションを絞ることで、ライディングにストレスを与えないセッティングが可能です。

▶ Arctic 48

軽量&シンプルでロングツアーやクライム&ライドに

バックカントリーパックとしては大容量の48Lサイズにして、「チュガッチ28」よりも軽量なニューモデル。チュガッチシリーズの開発で培った経験とノウハウで再設計し、軽量性に裏付けられた機動力を生かし、より長い距離を、より険しいルートを目指す山行に最適。たとえば、小屋泊バックカントリーツアーや、春のロングツアー、クライム&ライドに最適のほか、雪山登山でも活躍します。

PART.2 徹底解説「Arctic 48」

容量変化を支えるボトムコンプレッション   

開発時にイメージしたのは、まずは立山のような小屋泊で行くバックカントリーツアーでした。入山時にはそれなりの容量が必要だが、行動時は不要な荷物を小屋にデポして最小限の装備に絞りたい、というような状況です。
そのために、行動用のスノーパックを別に持って行くか、それとも入山時の大きなバックパックをそのまま使うか。経験者ならご理解いただけると思いますが、なかなか悩ましいものがありました。行動用パックを持てば入山時の荷物は増えるし、大きなパックでの行動はコンプレッションを締めてもストレスが溜まります。
そこで「アークティック48」では、サイドに加えて、ボトムにもコンプレッションを配置しました。サイドコンプレッションを締めても、背負った段階で荷物はボトムに落ちてきますが、ボトムも同時に絞ることで、荷物を背中側にバランス良く配置することが可能になります。
また、取り外し可能なトップリッドを外せば、よりコンパクトに変身。その際、トップのロープキャリーにはTHE NORTH FACEのロゴがデザインされ、雨蓋なしでも違和感のない表情を醸し出します。

こうして「アークティック48」は容量変化への最適な対応を実現し、最大で48Lプラスアルファ、最小で28L相当まで絞り込むことが可能になりました。これは18Lサイズを除いたチュガッチ3モデル分の領域をカバーし、そのうえ、どのモデルよりも軽量です。

必要な剛性バランスと徹底した軽量化を両立 

「アークティック48」の2つ目の開発センセプトは「軽量化」です。メインの生地には、強力な耐切創性能をもつスペクトラ(高強度ポリエチレン)繊維をリップストップに使用した210デニールの軽量ナイロンを採用。軽量にして十分な強度があります。

チュガッチシリーズは表面にスノーボードやスノーシューの装着を想定しているため、アルミのワイヤーフレームを内蔵し、重量感のあるボードを背負ってもブレることなく動け、スノーシューを背負いながらバランスよく滑走できる剛性を実現しています。
一方、軽量化を目指した「アークティック48」では、板を背負う必要のないスキーヤーとスプリットボーダーの使用に特化しました。そのため、必ずしも丈夫なスノーボードキャリーを付ける必要もなく、インナーフレームの代わりに取り外し可能な軽量フレームシートを採用することで、軽量化を実現しています。

もちろん、ツボ足やクランポンでの登行も想定しており、スキーや分割したスプリットボードはAフレーム式やダイヤゴナル式で装着可能。ダイヤゴナル用の上部ループは取り外し可能で、下部は使用しないとき内部に収納しておけます。また、サイドコンプレッションを前面に回すことで、スノーシューやワカンの外付けも可能になります。

バックパックづくりのノウハウが生きるディテール

「アークティック48」のディテールには、これまでTHE NORTH FACEが開発してきたさまざまなバックパックのノウハウが生かされています。
バックパネルは雪が付きにくい成型されたEVAで、ショルダーハーネスとヒップベルトは薄手で硬めと、チュガッチシリーズの仕様を引き継いでいます。
本体へのアクセスは、スノーパック定番のバックローディングではなく、あえてロールトップ式を採用。バックローディングでは背面をオープンするため、強度の高いファスナーや剛性ある背面パネルなどが必要になり、重量がかさみます。そのぶん、ロールトップにすることで軽量化に貢献しつつ、同時に容量変化にも対応しやすいというメリットもあります。
また、荷物を取り出しやすいよう、開口部には広がりを持たせ、開口部をスクエアに保つ工夫が盛り込まれています。また、内部は部分的に白系色のライナーを貼って、内容物を見やすくしています。
本体横には縦型の大型サイドファスナーを設け、行動中のメインコンパートメントへ容易にアクセスできます。
トップリッドポケットはゴーグルやサングラス収納を想定した内ポケット付き。あえて表側にファスナーを設けることで、Aフレームでスキーやスプリットボードを背負ったときでも無理なく開口します。

スノーセイフティギアポケットの内部には、3本のシャフトスリーブが用意され、ショベルのシャフト、プローブ、スノーソーを整理して収納できます。ショベルブレードの収納位置を固定するポケットも、チュガッチで培った仕様です。これらスノーセイフティギア一式を収めたうえで、2枚のクライミングスキンを収納するだけの容量があります。
バックルやストラップはすべてグローブ装着のまま使うことを想定した仕様で、動きが非常にスムーズな点もチュガッチ譲りです。

雪山登山&クライミングでも活躍するマルチパーパス性

同じ容量のクライミングパックやトレッキングパックと比べると、「アークティック48」は重量的には中間くらいで、1気室という仕様や、各種ディテールは、クライミングパック寄りです。
たとえば、ヒップベルトにギアループとデイジーチェーン、アイススクリュー用クリッパーを装備。これはハーネスをした上からヒップベルトを装着した場合、ハーネスのギアループが使えなくなることを想定したものです。

また、アイスアックスホルダーは、アルミトグルとピックポケットを併用したもので、状況に応じて使い分けられます。これもまた、クライミングパックの仕様です。
雪山登山でもアバランチビーコンを装着することが推奨されていますが、同時にプローブとショベルを持たなければ、雪崩に遭ったときに意味をなしません。その点、独立したスノーセイフティポケットは、クライミングパックやトレッキングパックにはないものですが、雪山登山全般で非常に機能的な装備といえるでしょう。
同じスノーパックでも、どちらかといえばチュガッチシリーズはライディング重視のバックカントリーパックで、軽量設計の「アークティック48」は滑りと登りの両方に重点を置きつつ、バックカントリー以外の雪山でも高い機能性を発揮する汎用性の高さも大きな魅力です。ご自身の目的や用途、使用シーンなどに応じて使い分けていただけたらと思います。

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WRITER : CHIKARA TERAKURA

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