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RUNNING

Mt.FUJI100 2024

KAI 70kの多様性、FUJI 100miの彩り

トレイルランニングの祭典 2024年4月、『Mt.FUJI100』が開催される。今年第10回を迎えるこの大会は、世界各地の9つのクラシックレース・シリーズとともに『Gran Canaria World Trail Majors(WTM)』にも加わった。日本、そしてアジアでも最大級となるトレイルランニングの祭典は、どんなものになるのだろう?

「私たち」のレース 『Mt.FUJI100』は、「FUJI 100mi(ロング)」、「KAI 70k(ミドル)」という2つのレースからなる大会だ。どちらのレースでも、ランナーは美しい富士山の周りを走り、富士北麓公園富士山の銘水スタジアムにゴールする。

『Mt.FUJI100』”らしさ”とは? と問われ、大会実行委員の千葉達雄はこう応える。

「『Mt.FUJI100』は、ザ・ノース・フェイス、ゴールドウインというブランドと共に、ランナーである「私たち」が作ってきた日本でいちばん大きな大会です。ボランティアもトレイルランコミュニティや地元の方々が集まります。そのあり方や雰囲気が特徴的なんです」 

世界には大規模でエンターテイメント性の高い大会もある一方で、『Mt.FUJI100』はローカルに根差している。『Mt.FUJI100』を走る一人ひとりに物語がある。それを「私たち」みんなが支えているのだ。

インスピレーションと物語 今年初めて来日するザ・ノース・フェイスアスリート、ステファニー・ハウ(米)はこんな期待を語る。

「『WTM』のレースは、同じクッキーの形をしたような、似たものが集まっているわけではありません。色々な土地の文化やコミュニティを大切にするユニークなシリーズです。『Mt.FUJI100』でもローカルカルチャーに触れたいと思っていました」

ハウは、2024年2月の「Transgrancanaria」で84kmのレースを7位でフィニッシュした。彼女がどんなふうに走るのか、楽しみにしているファンも多いだろう。

もちろん日本のザ・ノース・フェイスアスリートたちも「FUJI 100mi」「KAI 70k」を走る。土井陵、鬼塚智徳、松永紘明、横山峰弘、森本光司、志村裕貴は「富士山の常連」だ。日本最高峰のレースを走るトップランナーたちの様子は、改めて私たちに新鮮なインスピレーションを与えてくれるだろう。

そしてそれに続くたくさんのランナーがいる。2022年の大会でのことだ。100マイルを完走したランナーがこんなことを大会スタッフに話すシーンがあった。

「(新型コロナの影響で)先の見えない日々だった。2020年の大会もなくなった。でもこんな晴れ舞台を走ることは、人生で一度きり。諦めたくなかった。そして、やっと今晩ゴールすることができた。自分のなかに何か誇りにできるものが残った。富士山に見守られてここまで来れました。ありがとう」

今年の大会でも、こんな物語がたくさん生まれるだろう。

「KAI 70k」の多様性 そして、『Mt.FUJI100』には「KAI 70k」もある。100マイルという「限界への挑戦」とは別の魅力が、このミドルディスタンスのレースにはたくさんある。

4月27日午前0時にスタートする「KAI 70k」は、全長約69.9km、累積標高は3493mだ。制限時間は21時間と、充分な余裕がある。

大会のフェスのような雰囲気を楽しんだり、「KAI 70k」を走る森本光司やステファニー・ハウを追ったり、同じコースを走る100マイルのランナーと一緒に進んだりすることもできる。記憶に残るたくさんの体験をすることができるのが「KAI 70k」の魅力だ。

だから、ロードやトラック、トレイルといったカテゴリーを超えて色々なランナーがこのレースに参加する。

ザ・ノース・フェイスで販売を手がける森山俊介も、「KAI 70k」に出場するランナーの一人だ。約6年ほど前からランニングを始め、2024年2月の別府大分毎日マラソンでは2時間49分(グロス)でゴールしている。1分1秒を削り出す苦しいながらも記録を追い求める楽しさを知っているランナーだ。

森山にとって、「KAI 70k」の魅力はこういうものだ。

「思うようにいかず、悔しいレースをしてしまったことがあるんです。マラソンシーズンが終わり、次に向かっていくにあたって、一度リセットしたいなと思いました。記録とはまた別の楽しさを体験したいと思ったんです」

「それで、2023年の「KAI 70k」を走りました。本当に楽しかった。記録とは別の魅力に溢れている。ビッグレースならではのお祭り感がありました。それを支えるボランティアの人も含め、みんなが同じ気持ちになっていました。だからゴールした瞬間「また次も出よう」と思ったし、実際に今年も走ります」

「それから、70kmという距離もちょうど良かった。1日で終わるし、追い込みながらも、最後まで走ることができる絶妙な設定だった。100マイルを同じペースで走るのは難しいですが、「KAI 70k」ではそれができて楽しいです」

そう語る森山は、ずっと笑顔だった。誰もがチャレンジし、自然の中を楽しみを感じることのできる間口の広さがミドルレース「KAI 70k」の特徴なのだ——しかも、今年の『Mt.FUJI100』では、キッズレースも開催される。子供からミドル好きのランナー、100マイルを走るランナーまで幅広いスタイルのランナーが集う大会になるだろう。

「山に遊びに行く感覚、”Play with Earth”という感覚で参加する人が増えると良いなと思います。ロード、トレイル、色々な走りかたをすることによって、ライフスタイルや走る楽しさにも幅が出る。そんな多様な魅力が「KAI 70k」にはあると思います」

「FUJI 100mi」の彩り 林秀太もまた自分のストーリーを楽しそうに話す。「THE NORTH FACE Sphere」の店舗スタッフとして活躍しながら、鏑木毅の主宰する「チーム100マイル」にも参加している。


「普段はお店で仕事をしていて、休みの日は育児もあります。長い時間練習に出かけることは多くはありません。仕事の後に集中して走ることが多いです。チーム100マイルの練習は、だからとても刺激になります」

林も2023年の「KAI 70K」を走った。そして今年いよいよ「FUJI 100mi」の旅をする。

「「FUJI 100mi」をまずは完走できると良いなと思っています。100マイルはとても長い旅で、完走するだけでも素晴らしいことだからです。上げすぎず、下げすぎず、常に50%で走りたい。ギアやウェアもいつもと同じザ・ノース・フェイスの使い慣れたものでいきます」

普段のランとチームでのラン、仕事や家族との時間、林にとってはどれも大切なものだ。それぞれをいかに「上げ/下げ」しすぎず安定させていくことができるのか。林は、普段からそんな工夫を積み重ねているランナーだ。いつもの日々から、林のストーリーはもう始まっているのだ。

『Mt.FUJI100』の「KAI 70K」には800人、「FUJI 100mi」には2400人のランナーが参加する。そこでは、アスリートや森山、林のほかに3192の物語が生まれるはずだ。

ボランティアで参加する人、YouTube LIVEで観戦する人、サポーター、大会スタッフを含めると、ストーリーは無限に広がっていく。一人ひとりのストーリーが毎年積み重なっていく場所が、『Mt.FUJI100』なのだ。そのレイヤーと彩りは、ここにしかないものだ。

林が、穏やかに付け加える。「ひとつだけいつもと違うものを持とうと思っているんです」と言う。

「携帯に4歳の娘の写真を入れていきます。何かあっても笑顔になれる。苦しい時のお守りです」

WORDS BY MIDORI AOYAMA
PHOTOGRAPHY BY SHO FUJIMAKI, AKIRA YAMADA & DORYU TAKEBE