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THE NORTH FACE
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National Parks of Japan

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持続可能な社会を実現するための新しい地図を描く「THE NEW ATLAS」。
第6弾となる今回は、2020年に自身のレーベルHyōguより、アイヌ音楽とダンスミュージックを融合させた作品「Ainu Utasa」をリリースし、サカナクション山口一郎が主宰するプロジェクト「NF」に参画している音楽家の青山翔太郎と共に、知床の雄大な自然をテーマに据えた楽曲の制作を試みた。
日本の土着的な音楽とのコラボレーションなど、自らのルーツを探求する作品制作に注力する彼が、知床の自然から得たインスピレーションやそこから導き出された作品のコンセプト、楽曲の構成などを語る。
Artist’s
Profile

今回のプロジェクトの
経緯を教えてください。

THE NORTH FACEとは、ヨセミテ国立公園でのプロジェクトをはじめ、見た景色、感じた景色などをフィールドレコーディングと組み合わせながらも体験を音として表現するようなコラボレーションの形式で長年お付き合いをさせていただいています。

今回はTHE NORTH FACEが店舗を構える「知床の自然」を大きなテーマとして楽曲を制作し、店舗も併設されている知床国立公園内の知床自然センターでライブをするというアイデアから始まりました。
結果的に、ライブ自体はコロナの関係で開催延期になってしまいましたが、知床と自分の共通点を探りながら、何を表現できるかを考えながら制作を行いました。このウェブサイトでは、僕が制作した楽曲にMVという形でチームが制作した抽象的な風景の映像を組み合わせたものがアウトプットとして表現されています。
「知床の自然」
  という体験を音にする

今回のプロジェクトの経緯を教えてください。

「知床に流れる自然の揺らぎ」と
「都会の規則的なグリッド」の融合

「知床の自然」というキーワードはどのように楽曲に反映されているのでしょうか?

普段から自分の中で自然と都市の境界線を感じることはあまりなく、むしろ全てが繋がっている地続きな存在として地球を捉えています。 けれど、両者に違いがないという意味ではありません。むしろ、フィールドレコーディングでは、より細やかな粒度でその場所固有の特徴を感じ取ることができます。例えば、同じ波の音でも、地形によって聞こえてくる音は千差万別ですし、同じ海岸であったとしても少し離れてしまえば音のカタチは変化していきます。

今回訪れた知床では、夕暮れ時には静かな海に流氷が漂っているかと思えば、夜が深まると波が強まり力強い音が聞こえてくるなど、過ぎゆく時間の中に漂う揺らぎやダイナミクスを感じました。その一方で、東京では都市やインフラ、人々の生活など、それら全てが時間やルールというグリッドの中で規則的にお互いのバランスをとりながら共存しています。

そういった生活環境のもつリズムというものは、そこで作られる音楽にも影響をもたらすと考えていて、実際に東京に住む僕が作る楽曲の多くは正確なグリッドに合わせてプログラミングされています。そんな自分が知床に行くことでしか作れない作品という意味で、こうした2つの土地がもつ背景を元に、知床の環境音と太鼓が生み出す有機的な音、シンセサイザーやノイズのデジタル的で無機質な音といった、対照的な要素を一つに融合させるような楽曲を制作しました。

音作りに関しては、まず、現代の和太鼓音楽の第一人者である林英哲さんを師とする和太鼓奏者の小泉謙一さんにお願いして、演奏いただきました。日本的な楽曲には、譜面では表現できない自然の強弱のようなバイオリズムが存在しており、それを知床の音と重ねながら、僕の東京のフィールドレコーディングと電子的なグリッドに沿ってプログラミングされた音楽をミックスさせました。
また、浮(ぶい)という名義で活動しているシンガー・ソングライターの米山ミサさんの声をいくつかのバリエーションで収録し、それが折り重なるようにミックスすることで、大小さまざまな流氷が浮かぶ知床の海の心象風景や、自然と人の息遣い、凛とした空気感の表現を試みています。

知床の自然」というキーワードはどのように楽曲に反映されているのでしょうか?

今回作品を視聴した人たちに、
どんなことを感じて欲しいと思いますか?

僕自身もかつてはそうだったのですが、太鼓をはじめとする日本の原音楽が身近ではない人がたくさんいらっしゃると感じています。そういう方々が、音楽の新しい価値観を体感できるようなきっかけになればいいなと思っています。

元々僕はパリに住んでいた時期があり、その当時には2000年代初頭から始まったフレンチエレクトロという大きなムーブメントがあったのですが、2014-5年ごろから80-90年代のシカゴやデトロイトで起こったハウス/テクノ創世記のDJたちがクラブを賑わすようになり、ルーツミュージックへの回帰的な流れを目の当たりにしました。
そこから日本に帰国した後、自分にしか作れない音楽はなんなのかと考えるようになりました。そして、自分のルーツを掘り下げたり、自分の根底に存在するもの、まだ感じたことがなくても、もしかしたら自分の血に流れてるかもしれないものを探し求め、その過程でスタートしたものが、今Hyōguというレーベルで進めている、アイヌの音楽や奄美大島の島唄、琉球音楽など、日本にある土着的な音楽を学び、現地で演奏家の方々と交流を深めながら楽曲を一緒に作るプロジェクトです。

今回のように、和太鼓をフィーチャーした楽曲は盆踊りを想起させるような懐かしさを感じさせるかもしれません。けれど、その中にある新鮮さも含めた現代ならではのアプローチを体感してもらえると嬉しいです。

今回作品を視聴した人たちに、どんなことを感じて欲しいと思いますか?

懐かしさと新しさが同居する
日本人の原音楽性
音楽で巡る
古層の日本

今後の活動について
教えてください。

Hyōguというレコードレーベルを2020年に立ち上げたのですが、レコードとして今回の楽曲を含めた作品を今年の3月上旬にリリースする予定です。レコードのデザインに関しても、前作の「Ainu Utasa」と同様に、カラーヴァイナル仕様(通常の黒い盤面ではない、オリジナルのカラーリングが施されたもの)で設計しています。また、様々な地域に根付く音楽とコラボレーションを行うことで、日本全土を巡るような感覚を作品やライブを通して伝えられるように、日々制作を進めています。

今後の活動について教えてください。

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