northface

letter

The future of sustainable society driven by

Power of Purpose

「目的の力」がもたらす、持続可能な未来の社会

Afdhel Aziz
Afdhel Aziz
Founder and Chief Purpose Officer Conspiracy of Love
Profile

アフデル・アジーズ(Afdhel Aziz)
http://www.conspiracyoflove.co
ブランドの目的をコンサルティングするConspiracy of Love創業者兼、チーフ・パーパス・オフィサー。マーケターとしてP&Gやハイネケン、アブソルート・ウォッカ、ノキアなどのマーケティングに従事し、数々の受賞歴に輝く。現在は、社会や地球環境へポジティブな影響をもたらすことで、企業の存在意義を最大化する「目的(パーパス)」という概念をベースにマーケティング・イノベーションに取り組む。これまでにフォーブスやカンヌ・ライオン、SXSWなど世界各国のイベントで行われた講演に登壇し、2016年に出版したボビー・ジョーンズとの共著、『Good Is the New Cool: Market Like You Give a Damn』は世界中で高い評価を受ける。また、現在はフォーブス誌にてブランドアイデンティティが与えるビジネスや社会への影響を紹介する連載を持つ。

Summary

人類の活動が自然環境に与える影響が深刻な社会問題となって久しく経つが、依然として多くの企業が具体的なアクションに踏み切れないままにいる。あるレポートによると、気候問題に対する影響の8.1%は、アパレル産業が起因すると報告されている。
Afdhel Azizは「何のために存在するのか」というブランドが持つ本来的な存在意義・目的(パーパス)を見つめ直し、利益を超えた社会問題や環境問題への貢献を原動力とする「パーパス・ドリブン(Purpose-driven )」という新しいビジネスモデルの創出に取り組んでいるパイオニアの1人である。
社会や組織、そして個人の全てが持続可能な新しいモデルを探求する中で、サステナブルな社会を実現するために、ビジネスはどこへ向かうべきなのか。

Good is the New Cool |

経歴や普段の活動内容を教えてください。

私は20年間、ブランド・マーケターとして、P&Gやハイネケン、アブソルート・ウォッカ、ノキアなどのプロジェクトに取り組んできました。しかし、現在は、「ブランドの目的」をテーマに、世界中で講演やコンサルティングを行っています。同時に、「Conspiracy of Love」というコンサルティング会社を経営しており、オレオやリーバイス、そしてTHE NORTH FACEなどのブランドに対して、彼らが持つブランドの存在意義を最大化するサポートに従事しています。

『Good is the New Cool : Market Like You Give a Damn』はどのような経緯で書かれたのですか?

きっかけは、私のこれまでの仕事の結果として残るであろう功績に心から幻滅をしたことがはじまりでした。息子が生まれたことを境に、彼に、「自分の父親が地球上で過ごした時間は、商品をより多く売るためだけに割かれてきたのだ」と思われたくないと意識するようになりました。私は彼に社会貢献をしながらも成功できる可能性を示したいと思うようになったのです。その中で、私はビジネスを社会をより良くするための方法に昇華させるという情熱を見つけ出し、友人であり、『GOOD IS THE NEW COOL』の共著者でもある、ボビー・ジョーンズと共に新しい冒険へと舵を切ったのです。

『Good is the New Cool』は世界中で高い評価を得て、様々な読者を獲得しましたが、それにはどのような要因があると考えますか?

この本は、私と同じような課題を感じ、自分の人生に意味と目的を求めていた多くのビジネス・リーダー達と共鳴したのだと思います。また、出版のタイミングが、ブレグジットやトランプの当選、気候変動やリーマン・ショックなど、人々が社会や環境の問題を解決するために何かをしたいと願い始めた時期と重なったことも要因していると思います。

目的の力が実現する新しいビジネスモデル

企業やブランドが従来のように利益だけを追求することの限界はなぜ起きたのでしょうか?

実際のところ、利益だけを追求する従来の姿勢は今まででも機能はしていませんでした。大多数の従業員や消費者にとって、それは決して良い行いではなく、ごく僅かな人々にのみ巨万の富をもたらし、壊滅的な気候変動を引き起こし、大規模な格差を生んできたのです。そして、今こそがビジネスに革命を起こす時です。「目的」こそが、限られた人々ではなく、より多くの人のための新しい資本主義のモデルを打ち立てるため鍵となるのです。こうした変革によって地球を破壊する代わりに、環境を保護することも可能になるでしょう。

そうした倫理的なアプローチと従来の利益は矛盾しないのでしょうか?

実際、多くのデータが、社会貢献がもたらすビジネスへのポジティブな影響を証明しています。例えば、Kantar Purpose 2020 Reportにおいて、パーパス・ドリブンなブランドは競合他社の2倍の速度で成長することが可能であると説明しています。また、ハーバード・ビジネス・レビューでは、「目的」がどのように従業員たちの推進力になり、結果として商業的な成功をもたらすかという内容が広範囲に渡って示されています。消費者は自分が購入するブランドを信頼したいと思っており、長期的な視点で考えると、倫理的かつ透明性を持ち、サステナブルな方法でビジネスを行うことこそが、ブランドが生き延びるための唯一の方法であると言えるでしょう。

THE NORTH FACEではどのようなことに取り組んでいるのですか?

THE NORTH FACEは、例えば「WALLS ARE MEANT FOR CLIMBING」や「SHE MOVES MOUNTAINS」などのキャンペーンを通じて、人々を結びつけ、ダイバーシティとインクルージョンを讃える方法で世界観を表現しており、とても大好きなブランドの1つです。私自身はこれらのキャンペーンには直接関わってはいませんでしたが、THE NORTH FACEの従業員に向けた、個人とブランドの目的をどのようにしてリンクさせることができるのかというワークショップを行う機会があり、これは大変素晴らしい体験でした。

仕事をした後で感じた、TNFの思想や哲学は何かありますか?

私は、「冒険を通じて、世界を導く」という彼らの目的を愛しており、この理想は彼らのバリューやカルチャーに深く根ざしていると感じました。私が出会った人々はとても素晴らしく、また同時にブランドの哲学とともに生きているという印象を受けました。

サステナブルな未来とこれからの消費の行方

アパレル業界は、石油業界に次いで2番目に環境汚染を生み出している言われていますが、
あなたが考えるファッションと消費者の関係はどのようなものでしょうか?

アパレル業界は、自身を変革するための大きなチャンスを秘めています。サステナブルな素材へのシフトやエネルギーと水の消費量の削減、循環可能な新しいモデルの創出、洋服を作る人たちとのフェアトレードと安全な環境を提供するような新しい構造を生み出せるでしょう。今こそが変化の時なのです。

サステナブルな社会を実現するために期待しているテクノロジーや産業はありますか?

私の考えとして、現在の産業革命は化石燃料からの離脱と再生可能エネルギーによって実現される脱炭素社会を目指すことで進歩を遂げていると思います。しかし、ビジネスモデルそのものを変えることこそが次の革命になるでしょう。すべての企業はゼロウェイストやウィリアム・マクダナーが表現した、「ゆりかごからゆりかごへ」の思考方法を体現するライフサイクル全体を包括するようなプロダクトを生み出す、循環可能なモデルへと早急に舵を切るための方法を考える必要があります。

消費者とブランドはどのような関係性を築くことができるでしょうか?

優れたブランドとは、人生を素晴らしいものにしてくれる存在だと考えています。つまり、個人の幸福と国際社会の両者に寄与するためにブランドはあるべきなのです。そのためには、四半期という短期的な売り上げだけに注目するサイクルを脱し、長期的な視点で物事を考える必要があります。次の3ヶ月だけを考えるような下向きの発想方法では、企業の将来性を考えることは不可能でしょう。そして、消費者はこうした企業の取り組みに対してその商品を買うだけではなく、周囲へとその素晴らしさを広め、愛を持ってブランドに寄りそうでしょう。これは、自分の会社を「Conspiracy of Love (=愛の協同)」と名付けた理由でもあり、これこそが私の理想のブランドと消費者の関係性のメタファーです。愛こそが共有可能な体験なのです。

TNFに何か今後期待することはありますか?

THE NORTH FACE(それと、実際には全てのアウトドアブランドが)本当の意味で気候変動などの環境問題に直接的に取り組む未来を見たいと思っています。
結局のところ、この問題を解決しなければ、アウトドアを楽しむ場所がなくなってしまうのも時間の問題でしょう。