THE NORTH FACE MOUNTAIN

LAYERING THEORIES #18
2023 September

“FOOTWEAR”

さまざまなモデルがラインナップされているフットウエア。そのなかで、トレッキングにフォーカスした3つのモデルについて、それぞれの特徴をわかりやすく解説しつつ、愛用者のインプレッションと販売する側から見た違いなどをご紹介します。

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さまざまなモデルがラインナップされているフットウエア。そのなかで、トレッキングにフォーカスした3つのモデルについて、それぞれの特徴をわかりやすく解説しつつ、愛用者のインプレッションと販売する側から見た違いなどをご紹介します。

PART.1

トレッキング、スピード、マウンテンニアリング
3カテゴリーが揃ったTHE NORTH FACEのトレッキング用フットウエア

THE NORTH FACEでは、3シーズンの登山やトレッキング用として3つのモデルをラインナップしています。日帰りハイクから縦走登山まで幅広く活躍する「クレストン」、非常に軽量でスピードハイクに最適な「ベクティブ」、セミワンタッチアイゼン装着可能な3シーズンの縦走登山向け「ブライトホーン」。それぞれ違った得意分野を持つこの3モデルをどう選んだら良いのか。一つひとつご紹介していきます。

日帰りから縦走登山まで、幅広く対応する
万能型トレッキングシューズ
「クレストン ミッド ネオ フューチャーライト」

まず最初の選択肢は「クレストン」です。日帰りの低山ハイキングから、大型バックパックを背負った縦走登山まで幅広くカバーする3シーズン用ミッドカットトレッキングシューズ。はじめての人から経験者まで、無雪期の登山・トレッキング向けなら、THE NORTH FACEでもっとも万能型の1足です。

アッパーは独自開発の防水透湿素材「FUTURELIGHT」で防水性と適度な通気性を両立し、着地時のカカトの横ブレを抑える「CRADLEテクノロジー」やグリップ力に優れた「Vibram XS-Trekラバーソール」、シューレースの引っ掛かりを抑えて足首のホールド感を高める「ロッキングアイレット」など、山道を歩くための機能性は万全。比較的幅広のラストは履く人の足を選ばず、はじめてトレッキングシューズを履く人におすすめなのはもちろん、経験豊富な登山者にも多く愛用されています。

ほかに低山や日帰り登山におすすめの「クレストン ハイク ミッド ウォータープルーフ」もあります。

▶「Creston Hike Mid WP」(Men’s)

▶「W Creston Hike Mid WP」(Women’s)

Impression
入江 瞳(THE NORTH FACE御殿場プレミアムアウトレット)

初心者から経験者まで
どなたにも安心しておすすめできます

「クレストン」を使い始めたのは、2019年頃からです。登山をはじめて2年目くらいのときです。「初心者でも安心して使えるし、比較的甲高で幅広だから履きやすいよ」と店の先輩にすすめられて購入しました。THE NORTH FACEのスタッフにも愛用者が多いようですね。それを5年ほど履いて、今年は新しい「クレストン ミッド ネオ フューチャーライト」に買い替えたところです。 確かに「クレストン」は足幅が広く、甲が高めなので履いていて楽ですね。以前は、同じTHE NORTH FACEの「ヘッジホッグ」というハイキングシューズを履いていたのですが、「クレストン」はそれよりもしっかりしたトレッキングシューズなので、いろいろな山に出かけて、さまざまな登山道を歩いても踏ん張りが効くようになった気がします。

これまで私が「クレストン」を履いて登ったのは、北アルプスでは燕岳、焼岳、南アルプスでは甲斐駒ヶ岳、仙丈ヶ岳、鳳凰三山、あとは八ヶ岳。山小屋泊もテント泊も経験あります。 自分で愛用しているトレッキングシューズなので、店頭での接客でもリアルな声をお届けできるのがうれしい点です。もちろん、お客様がどういった状況で山に行くのかをうかがって、それぞれに対応するのですが、女性の場合、見た目がかわいいという理由でクレストンを手に取られる方も少なくありません。カラーリングもシンプルで使いやすそう、という声も聞きます。とくに色味によって人気が変わることもなく、総じて反応がいいイメージがありますね。

推進力を発揮する「VECTIV」システム搭載
軽量で快適にスピード感をサポートする
「ベクティブ エクスプロリス II フューチャーライト」

ロッカー形状のソールで歩く力を推進力に変える独自の「VECTIV」システムを搭載した軽量防水トレッキングシューズ。防水透湿素材「FUTURELIGHT」で防水性と適度な通気性を両立したアッパーに、切れ込みのあるフォーク形状の「VECTIV 2.0 3D TPUプレート」によって、柔軟性を持ちながらも、着地の安定性とグリップ力が向上し、トレランシューズにはない安定した歩行性をサポートします。日帰りハイキングから、荷物を背負ったファストハイクまで、走り出したくなるスピーディな歩行感が快適です。

▶「VECTIV Exploris II FUTURELIGHT」(Men’s)

▶「W VECTIV Exploris II FUTURELIGHT」(Women’s)

ほかに、サポート性よりも軽さを重視した「ベクティブ ファストパック ミッド フューチャーライト」もあります。

▶「VECTIV Fastpack FUTURELIGHT」(Men’s)

▶「W VECTIV Fastpack FUTURELIGHT」(Women’s)

Impression
伊藤芳規(THE NORTH FACEGRAVITY白馬)

軽くて自由度が高く 自然とスピードが出せます

最近のトレランシューズの厚底構造が気になっていました。そこで「ベクティブ」のトレッキングシューズが発売になったときに、自分で購入して使い始めたのがはじまりです。履き心地はどうなのだろうと非常に興味がありましたし、自分で使っていない製品をお客様におすすめすることはできませんしね。初代からはじまり、モデルチェンジごとに買い替え、今の「ベクティブ エクスプロリス II フューチャーライト」で3足目です。 私自身は走らないのですが、トレラン好きな店のスタッフの影響で、夏山はトレランシューズがメインで、トレッキングシューズを履かなくなっていました。やはり、足回りが軽いのは快適ですし、蒸れないし、足首の自由度が高いのはメリットですよね。テント泊でもトレランシューズで登っていました。ただ、ソールがやわらかいので、15kgほどの荷物を背負ってゴツゴツした道を歩くと、やはり足裏にはキツかったです。 その点、「ベクティブ」はクッション性が高いので、足裏の疲労はずいぶん軽減しました。ソールもトレランシューズに比べてグリップ力が高い。また、足先のトウボックスが薄手素材でカバーされていて、足指に石が当たるのをやんわり防いでくれる。これもトレランシューズにはなかった保護性なので、あるとないとではぜんぜん違います。

「ベクティブ」を履いて行ったのは、燕岳や常念岳、蝶ヶ岳などの日帰りから、長いものだと立山から雲の平を経て新穂高温泉に下りる4泊5日のテント泊があります。 私はローカットを使っていますが、ほどよいクッション性とほどよい路面とのフィット感で、やわらか過ぎず、固すぎずのバランスが良く、スピードを出しても安定感があります。ロッカーしたソールは「慣れるまでに少し時間がかかる」という話でしたが、私の場合はまったく抵抗感なく、スピードが出しやすく、歩きやすさを感じています。私は普段は走らないのに、山のなかで走りたくなることもあるので、そういうときに「ベクティブ」は調子いいですね。

軽量性を追求した
セミワンタッチアイゼン装着可能な3シーズン向け登山靴
「サミット ブライトホーン フューチャーライト」

軽量性を追求した、セミワンタッチアイゼン装着可能な3シーズン対応の縦走登山向けのアルパインブーツ。アッパーは防水性と適度な通気性を両立した「FUTURELIGHT」に、岩稜帯や急峻なトレイルで足を守る高密度のリップストップ素材をミックス。剛性を備えたファイバーグラス補強のシャンクプレート、軽量性と耐摩耗性、グリップ力を兼ね備えた「Vibram LITEBASE MONTコンパウンドラバーソール」、足首周りにはLycraストレッチ素材を使用し、砂利の侵入を防ぎます。軽量性、剛性、耐久性のバランスに優れる汎用性の高いテクニカルブーツですが、ハードなイメージよりは、とても歩きやすい1足です。

▶「Summit Breithorn FUTURELIGHT」(Men’s)

▶「W Summit Breithorn FUTURELIGHT」(Women’s)

Impression
天野和明(国際山岳ガイド)

見た目のイメージよりも歩きやすい
マウンテンニアリングブーツ

この夏のヨーロッパアルプスでは「サミット ブライトホーン フューチャーライト」を履いて、実際のブライトホルンをガイドしてきました。氷河から雪上を歩き、中盤からちょっとしたクライミングもある。雪を歩いて岩を登るという意味では、残雪期の前穂高岳北尾根のようなイメージです。

セミワンタッチアイゼン装着可能な3シーズンの縦走登山向け登山靴ということですが、春の残雪期から夏の早い時期の北アルプスもいいですね。10本爪や12本爪のアイゼンを装着して雪渓からアプローチし、岩稜を登る。そうした使い方を想定しています。 ただ、同じカテゴリーの登山靴に比べるとブーツ全体がやわらかめなので、見た目のイメージよりは歩きやすい靴です。日本の山だったら、たとえば低山のハイキングでも違和感ないし、金峰山や八ヶ岳のような2000m台の山なら、すごく使いやすいでしょうね。

PART.2

販売店の現場から

THE NORTH FACEのフットウエアを扱う専門店では、3つのモデルをどのようにおすすめしているのでしょうか。東京・神保町にある老舗の専門店、石井スポーツ登山本店で話をうかがいました。 石井スポーツ登山本店 副店長宮下直樹さんに訊く THE NORTH FACEの3モデルについて

——実際の店頭では、この3モデルをどうおすすすめしていますか?

まず一般的におすすめすることが多いのは「クレストン」です。これが一番万能で、最初に履いてもらう靴の選択肢に入ります。幅が広めで誰にでも合いやすく、固すぎないのでスノーカーから履き替えても大きな違和感ない。シューレースもよく締まりますし、ラバーのマッドガードがつま先からサイドをしっかり覆っている。山を歩き慣れていない方は、足の置き方も不慣れなので、岩角や木の根にぶつけたり、擦ったりすることが多いですが、その点も安心です。 若い女性のなかには、あまり仰々しい登山靴を避けたいという方も多いです。その点、THE NORTH FACE製品の場合はブランドとしての知名度があり、そのなかで「クレストン」は色もデザインもシックなので選びやすいようです。たとば、友達に誘われて富士山に行くことになったが、そのあとで続けるかどうかはわからないという方も少なくありません。その場合、山に行かなくなったとしても、キャンプや旅行などで履けそう、というのも判断材料になるようです。

——「ベクティブ」をおすすめするのはどんな場合ですか?

やはり、軽さ重視の方ですね。数値で見てもけっこう軽いですし、そこは魅力です。実際、トレランをやっている人が、トレッキングをはじめるときに、選ばれることが多いです。トレランシューズでは行きにくい山、たとえば泊まりで山に行くときや、長時間荷物を背負って歩くときなどのために登山靴がほしいのですが、彼らが求めているのは一般的なトレッキングシュースとはちょっと違う。そういう方に「ベクティブ」はけっこうハマります。 ただ、傾斜の強いところではトレッキングシューズよりも不安定感がありますので、ご年配の方にはその点をお伝えするようにしています。ただ、里山や近所の里山を歩くくらいなら、スニーカー感覚で履けるので、ご年配の方にも安心です。 逆に、今まではガッチリした登山靴を履いてきたけど、いろいろと情報をみて、もっと軽くて動きやすい靴を探している方など、ベクティブを目指してこられる方も少なくありません。

——「ブライトホーン」はどうでしょう?

やはり、小屋泊まりやテント泊で岩稜を縦走するような人ですね。これまでの登山靴は割とハードなガチガチなものが多いのですが、「ブライトホーン」は足首の後ろが切れ込んでいるので、動きやすさがあります。登山靴としての機能的には悪くないという印象です。 足幅は比較的細めで、岩稜帯で足を置くという意味では、わりとフィット感がある。岩場ではピタッとフィットした靴のほうが間違いない。だから細めの作りなんでしょうね。ただ、このあたりは好みが分かれるとことで、「クレストン」のほうが万人受けするフィット感ですね。 マウンテニアリングブーツとしては多少やわらかさがあるので、履きやすく動きやすい。その反面、縦走メインで何日間も山に入るとか、荷物の量が15から20kg近くになるときは、選択肢として外れる場合もあります。

——その人の足型、登山経験、指向などさまざまでしょうから、なかなかたいへんですね。

この店はこれから山登りを始めたいという方が比較的多くいらっしゃるので、基本的には足型を測って、足長、足幅、ボリュームなどを確認したうえで、お客様のニーズに合ったものを3モデルほどご提案して、履き比べていただくようにしています。傾斜台がありますから、登ったときに大幅なカカトのズレがないかとか、どこか当たらないかとか。 また登山は初めてでも、トレランをやっていたり、ある程度ランニングをしている方には、「クレストン」ではなく、最初から「ベクティブ」をおすすめすることがあります。脚力と体力は最低限あると思うので、むしろ、普段の靴に近い感覚のほうが問題は起きにくい。 あとは価格との相談ですね。初めて山の道具ということで、靴以外にもザックや雨具など必要な装備はいろいろありますからね。それでも皆さん、靴は大事だとわかっているようで、真っ先に登山靴売り場にいらっしゃいます。最初に靴を選んで、次いでザック、雨具の順に回る方が多いようです。

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WRITER : CHIKARA TERAKURA

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