30年以上にわたりマウンテニアリングの世界に挑戦し続けるTNFアスリート
コンラッド・アンカーのインタビュー

2018年まで26年間、ザ・ノース・フェイスのアスリートチームリーダーを務め、90年代当時のエクスペディション(極地遠征)でも実際にヌプシジャケットを着用していた同氏に、その歴史や魅力を聞いた。

1987年頃、まだTNFがバークレー(米・カリフォルニア州)を拠点にしていた時、当時のザ・ノース・フェイスのデザイナー達とより密にコンタクトを取るようになり、プロダクトテストにも参加するようになりました。1988年に高所登山に向けて開発された「エクスペディションシステム」と呼ばれる、レイヤリングシステムがあるのですが、それに対応するプロダクト群の一つとして、1992年にヌプシジャケットが加わったのを覚えています。

写真) 高所登山に向けて開発されたエクスペディションシステム

現在は「AMK(Advanced Mountain Kit™)」にみられるような、さらに軽いウェアリングシステムも世に出ていますが、1992年当時はマウンテンジャケットとヌプシジャケット、もしくはデナリジャケットの2つを組み合わせた1着はとても新しくソリッドで、ベストな1着でしたね。ザ・ノース・フェイスのユニークな特徴でもありますが、私たちシリアスクライマーがサインをしたプロダクトしか商品化されない決まりでしたから。現在でもザ・ノース・フェイスが使うキーワードである、「ATHLETE TESTED. EXPEDITION PROVEN.™ (アスリートにテストされ、エクスペディションで証明される)」はそこにも強く紐づきますね。

写真) 実際のエクスペディションで着用されたヌプシジャケット

1993年頃からは、私は軽さを求めてマウンテンジャケットの軽量版であるマウンテンライトジャケットとヌプシを合わせて、実際のエクスペディションで着用していました。
エベレストの南西に連なっている“ヌプシ”以外にも、アラスカの“デナリ”やアンデスの“アコンカグア”と山嶺の名を冠したモデルが多くありますが、それはブランドと山やクライミングとの強い関連性を示しています。そんなザ・ノース・フェイスと1983年にアスリートチームに参加して以来現在まで共にあることは、マウンテニアである私にとって大きなエンパワーメントであり続けています。

あと、ヌプシジャケットは、短めの着丈、ヨーク部分のカラーブロッキング、クラシックな刺繍ロゴなどのディテールも相俟って、全体的にカッコいいですよね。だからこそ、デザインも含め、アルパインシーンだけでなく、アーバンなライフスタイルやストリートカルチャーとも交わることができているのだと思います。

写真) Conradが表紙に採用されたFW1996-1997のカタログ

Conrad Anker

1962年生まれ、モンタナ州ボーズマン在住。87年のアラスカ山脈キチャトナ山群を皮切りに、南極からヒマラヤに至る難攻不落の登頂を数々成功させる。2015年に公開されたドキュメンタリーフィルム『MERU(メルー)』では同年サンダンス映画祭観客賞を受賞。今日においても、最も精力的な冒険家、マウンテニアの一人として精力的な活動を続けている。

Official Website:
https://www.conradanker.com/