持続可能な未来へ繋ぐ
進化したマテリアル

ヌプシジャケットのデビューから今年で30年。今見ても全く古びれない、デビュー当初から殆ど変わらないデザインは、その完成度の高さを物語っている。一方で、採用されるマテリアルはこの30年で大きく進化した。採用される羽毛は、リサイクルダウン、通称“GREEN DOWN(グリーンダウン)”で、原料の回収から選別、精製までを三重県の河田フェザーが一貫して行なっている。ここではヌプシジャケットに封入される、暖かさに妥協しないグリーンダウンの生産背景に迫る。

各所から届いた使用済みの布団や衣類のストック。ゆうに100トンは超えるという。これがリサイクルダウンの原料となる。

国内外から届いた原料。精製前の状態で、羽毛に汚れやアカなどが付着しており、獣臭さも強い。

ダウンの汚れやアカを研ぎ落とす河田フェザー独自の洗浄機。使用される抗酸化力
の強い超軟水は浸透力が高く、アカや脂肪分を隅々まで取り除く。

ダウンとフェザー(羽根)の特性を活かし、風の力を利用してダウンを選別する機械。フェザーの他に未熟なダウンも取り除くことができる。

河田フェザーとGREEN DOWN

2013年からザ・ノース・フェイスとの取り組みを継続する河田フェザーの代表取締役の河田敏勝氏に話を聞いた。

「我々は世界一の技術力を要して安心・安全の羽毛を供給し続けています。最高の羽毛とは無味無臭であることが必須条件です。そして良い羽毛を生み出すのに大切なのは水と湿度なんですね。この条件を100 %満たすことができるのは世界でもここだけです。世界有数の雨量を誇る大台ケ原山地から流れ出た地下水は天然水素水であり、格段に浸透力が高い。それによってアカや脂肪分をきれいに除去できるのです。さらに硬度が低いので羽毛を痛めることがない。羽毛洗浄には理想の水ということです。そんな精製背景を持つ我々も今後はリサイクルによって生まれるグリーンダウンの展開量も大切なポイントだと捉えています。現在では回収済みの羽毛の布団や衣類を100トンほどストックしています。この使用済みの製品からピュアな羽毛だけを取り出し、精製する技術は河田フェザーしか持っていません。それだけ労力と時間のかかる作業工程が必要なのです。安価なリサイクル羽毛は異物が混入していたり臭いがするものが多く、お客様にネガティブな印象を与えかねません。ですが、しっかりとした技術で精製されたグリーンダウンは通常の羽毛となんら変わりません。昨今、水鳥自体の生産量が減っていますから、自ずと羽毛の獲れる量も少ないのです。ですからグリーンダウンは今後も不可欠なものであり、継続的に品質を安定させる必要があります。ザ・ノース・フェイスとは2013年からご一緒にグリーンダウンを展開していますが、今後はすべてのダウン製品をグリーンダウンにするということですので、我々もさらなるクオリティの向上を追求し続け、リサイクル羽毛の生産ラインをしっかりと確立し、安定供給できるようにと考えております」

限りある資源であるダウン(羽毛)を回収、精製し“GREEN DOWN”という名前で再利用。そしてダウンウエアをはじめとする新たな製品の原料として利用するプロジェクトを“GREEN DOWN RECYCLE PROJECT ”という。ダウンを焼却する際に発生する二酸化炭素(ダウン1kgで約1.8kgの二酸化炭素を排出)と、原産国から日本に輸送される際の二酸化炭素を抑えることができる。

Photography and text by PRODISM

自宅で対応可能なダウンジャケットのメンテナンス方法

耐久性の高いヌプシジャケットを、さらに長く、気持ちよく着用するためにはどのようなケアが必要だろうか。これまでの長い歴史の中で様々なジャンルの衣料品を扱ってきたクリーニング業界を牽引する白洋舍に、ダウンジャケットのメンテナンスに関する5つの疑問を尋ねた。

初めて着る前にすべきことは?

新品の状態でまず行ってほしいのは、市販の衣類や繊維専用の防水・撥水スプレーを施すことです。シェル全体も大切ですが、特に皮脂汚れに晒される襟元や袖の内側にスプレーすることが重要です。

部分汚れの予洗い方法を教えてください。

日々お召しになると、ナイロン製でもやはり身頃や袖周りにヨゴレやシミが付きやすいですよね。その際はおしゃれ着用中性洗剤を水との1:1で混ぜ合わせた洗剤液を洗濯ブラシに浸して、汚れている所を部分的に優しく擦ってください。

ダウンジャケットの洗濯・乾燥での注意点は?

表地や内包のダウンが傷まないよう、ジャケットのみランドリーネットに入れて洗濯機をお使いください。コースは“普通”を選んでOKです。脱水まで終わったら、ダウンの偏りを振りさばいて、ハンガーにかけて干します。7割ほど乾いたら、乾燥機を30分〜1時間を目処にかけます。そうすると、仕上がりがふわふわに。

ダウンジャケット用洗濯洗剤の選び方は?

予洗いと同じくおしゃれ着用中性洗剤をセレクト。通常採用されているダウンやグリーンダウンは酵素で分解されてしまうため、ボトルのラベルの成分表記で酵素が含まれないこと、また液性表記が中性となっていることをご確認ください。

ダウンジャケットの保管の仕方について教えてください。

これから衣替えの時期で秋冬物のアウター類は嵩張るかと思いますが、クローゼットに収納する場合はシワつきも軽減され、ダウンパックもつぶれずに済むので、可能な限り前後1着分ずつのスペースを空けられるといいですね。

取材協力:株式会社白洋舍 広報・IR室 水谷まり