徳間書店

風の谷のナウシカ

宮崎駿

“私はこちらの世界の人達を愛しすぎているのです
人間の汚した たそがれの世界で 私は生きていきます”6巻P98
“私はこちらの世界の人達を愛しすぎているのです
人間の汚した たそがれの世界で 私は生きていきます”6巻P98

アニメ映画も素晴らしいのですが、宮崎駿さんの描いた原作漫画全7巻を読んで初めて知る物語の奥行きもあるのです。
ナウシカたちが暮らすのは「火の7日間」と呼ばれる戦争によって巨大産業文明が崩壊した1000年後の世界。滅亡した過去の文明によって汚染され不毛化した大地には、有毒の瘴気を発する「腐海」という新しい生態系の森が生まれました。
人の肺を腐らせてしまうこの毒の森は、マスクが必須となったコロナ後の世界を暗示しているかのようであり、気候変動によって急激に変化していく生態系の未来を描いているようでもあります。
さて、そんなナウシカですが映画版は実のところ2巻の途中まで。その後、トルメキアと土鬼という2大強国の戦争は腐海を巻き込み、巨神兵の蘇生、「大海嘯」による蟲たちの大移動など、舞台を広げた物語は人の想いと野心が複雑に絡み合った一大叙事詩へと昇華していきます。
王蟲や巨神兵オーマの役割や人類の起源など、終盤に向けては驚きの展開が怒涛のように押し寄せますが、決して無垢ではいられなくなったナウシカが決めた選択をあなたは見届ける必要があります。共生の難しさを知るための1冊です。