新潮社

人間の建設

小林秀雄・岡潔

“本質は直感と情熱でしょう。”P24
“本質は直感と情熱でしょう。”P24

「文系的頭脳の歴史的天才」と「理系的頭脳の歴史的天才」は決して反目しませんでした。それぞれ別方向からぐるり一周まわって、結局最後には同じ地平に辿り着くのです。
近代文学批評を確立させた評論家・小林秀雄と、多変数解析函数論の分野で「三つの大問題」を1人で解決した数学者・岡潔。そんな2人による対話集がこちらです。
学問、ゴッホ、酒、数学の抽象度、アインシュタイン、ドフトエフスキー、詩、無明、言語中枢。目まぐるしく変化する主題だけ取り出すと、難しく感じるかもしれませんが、なんてことはない。とても粋な先人2人が繰り広げるトーキングハイを末席で聞かせてもらう気分で読者は臨めばいいのです。夜な夜な続く濃厚な酒席のように。
スマホ片手に検索しながら語らう時代ではないので、全ての言説が2人の脳に刻まれ、血肉から湧き出るもの。そのひりひりする切り合いは単純な異分野交流などではなく、「破壊」ではなく「建設」を志す人間同士の共鳴といって良い雑談なのです。