講談社

イカタコつるつる

長新太

“いたいけど、おいしいよ〜。”P22
“いたいけど、おいしいよ〜。”P22

この絵本を「共生」の本と言っていいのでしょうか?
長新太の描く世界はとことん不条理でナンセンス。なのに、とぼけた温かみがあって、子供だけでなく大人をも魅了する引力に充ちています。
1927年生まれの彼は、映画館の看板屋や漫画家、イラストレーターなど色んな仕事をひらひら横滑りしていきながら、最後は絵本や児童文学の世界に不時着した人。
この物語は、おなかをすかせたイカがラーメンをバクバク食べているうちに麺と自身の足が絡まりだし、他方おなかをすかせたタコがスパゲッティをバクバク食べているうちに、これまた麺と自身の足が混在してしまってさあ大変という話。
お互い麺と足がもつれ絡みあっている状況で、さらに隣同士だったイカとタコとラーメンとスパゲッティがもつれ合ってしまう到達するカオス! 「いたいけどおいしいよ〜」と食べることを止められない2匹の驚きの顛末は、痛みを分かっているのに回る歯車を止められない色々な状況を思い出してしまいました。
長新太作品の中でも最もシュールな1冊、よく噛んで読んでください。