Interview with Shin Biyajima

241フォーカスInterview with Shin Biyajima

例えば、毎年1月に"ひとり"で白馬へ訪れ、2週間ほどみっちり日本人のローカルと時間を共にして帰っていくような。それでいて日本語も結構いけて、スノーボードでも雪板でもスノスケでも、とにかく板に乗ったらファンタスティックな滑りをかましてくれる。そんな海外の人、身近にいたりしませんか? 美谷島慎は、海外の行く先々でそれと同様な存在。それがノースウェスト、タホ、ジャクソン、アラスカ、ニュージーランド……と、幅広いエリアに居場所があり、それぞれのローカルと時間を共有している希な日本人。

2015-2016シーズン、日本のベストシーズンである1月を滑り倒した後、ここ数年で恒例となっている北米への旅へ出発した美谷島。

その旅を振り返りながら、彼ならではの視点が捉えるフィールドの魅力と、旅を続けるからこそ感じられる理想のライフスタイル像に触れた。

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ぜひとも、彼が綴った今回の旅のブログ内容と共に、インタビューを読み進めてみてください。

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スノーボーダーズネットワーク


— 最初の行き先だったマウント・ベーカーの斜面はどんな様子?

Shin (以下:S) 「あそこはスティープですね。面白いです。斜度はきついけど、短いラインの連続とも言えるので、日本で言えば赤倉のような……でももうちょっと長いですね。ただ長いのが売りの場所じゃないですけど」

— その例えはよく聞くことがあるね。ジャクソン・ホールとは全然違うの?

S:「けっこうな違いですよ。ベーカーはツリーランとツリーのオープンで、ジャクソンはアルパインの要素も入ってくる。そして雪質が全然違う。ベーカーはウェットでツリーが多いから、あり得ないほど急な場所へ入って行けちゃう。湿気っているからエッジが噛むんですよ。反対にジャクソンは少し内陸なんでベーカーよりはドライ。でも岩が多いからよりエクストリームです。だからジャクソンのスティープなラインでベーカーのようなエッジの使い方をしたら危ないですね。もし下がちょっともでガリっといけばそのまま落ちて行きますからね。滑り方の早いフォールラインのライン取りか、よりセイフティーを考えたライン取りが求められるって感じです。ベーカーはもっとやんちゃな滑りができるというか」

— なるほどね。ではアラスカは?

S 「あそこは別天地です。すべてを超越してますよ。日本はもちろん、世界中の山に"アラスカみたいな"と言われるラインや地形ってあるんですけど、アラスカにはそれしか無いですから。自分はそこへ到達するまでに、アメリカン・スノーボーダーズ・ライフの三大メッカであろう、ノースウェスト、タホ、ジャクソン・ホールの周りを数シーズンずつ滑って、それからアラスカへ行けて良かったと思ってますよ。いきなり行くと、環境が良すぎて満喫できなかったように思うんで。いきなり飛び級をするんじゃくなくて、その間を埋めていけたから、経験と知識はよりワイズになれた。その方がスノーボーディング・ライフは充実しますよね。アラスカで出逢ったローカルや各地から同じように集まってきたバムたちとの会話も広がるし、面白いわけだから」

— アラスカを訪れるようなスノーボーダーはそうした経験を積んだ人がやっぱり多いんだね。

S 「そればっかりじゃないでしょうけど、プロライダーとしてやっている人はだいたいそうですよ。でも実際はプロより、撮影するという意識すらまったくない人たちの方が多い場所。純粋にスノーボーディングを突き詰めている人たちが自然と集まっていると言えますね」

— そうした人たちとの出逢いが、旅とスノーボードを続けて行く中で広がっていく。それがあるから、ジャクソンでも、アラスカでも良い時間を過ごせているんでしょ。

S 「それだけが要因じゃないですけど、まあそうっすね。今回、約3ヶ月間海外にいて、ホテル泊ゼロ、ソファーで寝たのもゼロ、もちろん宿泊費ゼロですよ。それって凄くないですか?」

— ジャクソンやアラスカでも?

S 「ベーカーは知り合いの家や、マイキーのタイニーハウス。ジャクソンは友達のシェーンやライアンの家にお世話になって。彼らが日本に来た時はうちに泊まっているような繋がりでもあったり。アラスカでは、ローカルが過ごすゲルに自分のベッドを確保させてもらえたり、ノルウェーでは誘ってくれたミッケル・バングのイベント参加で宿付きだったし」

— やっぱりスノーボーダーズネットワークだね。

S 「本当そうですよ。友達のおかげです。ジャクソンではモービルへ一緒に行けることも多いんだけど、それもそれで最高なんですけど、ベストな条件とコンディション以外なら、トラムに乗って歩いた方が午前中のうちに標高の高い所へ着けるから良いわけです。その歩くラインも、だいたいは吹きさらしの岩や氷ばかりの稜線上なんでツボ足が多いんですけど、少なからずラッセルもあって、できればファーストは行きたくない。でも出遅れると滑るラインが残っていない。そこの絶妙なタイミングで行けるのも、やっぱりローカルとの動きならではだし、あとはそのエリアのいいラインやいい地形を滑ることができますからね」

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旅を続けて見えてきた理想的なライフスタイル


— 今回の旅では241ファウンダー、マイク・バシッチのタイニーハウスでも過ごしたんだよね?

S 「ベーカー滞在中の後半は、ベーカーの駐車場に停めた彼のタイニーハウスで一緒でした。241の撮影でもあったので」

— 1日の流れは?

S 「スキー場オープンに合わせてチェアリフトへ向かえるよう、各自、朝起きるわけだけど、俺は結構ギリギリまで寝るんで、誰かが起きたら起きるっていう。足だけは引っ張らない。先にも行かないけど(笑)。歯を磨いたり、トイレへ行ったりして、じゃあ飯喰うか、と言ってもらえたりして。いいっすか。と」

— スキー場駐車場で、DIYのタイニーハウスにステイできて、毎日朝食まで出るの?

S 「いや、毎日じゃないですよ、もちろん。自分のタイミングで動くこともしばしばだけど、マイキーの彼女のシエラがいたんで、俺とカメラマンのベンの朝食を作ってくれることもあったわけですよ。で、朝食後はリフト券を買いにいって、タイミングによってはマイキーが買いに行ってくれたりもして、朝1本目から撮影をスタートしたりしなかったり。結構滑ったら、夕方からビールで乾杯して、晩飯やって、みたいな流れですかね」

— ゆったりだね。

S 「でもマイキーと一緒にいると、いろな人が入れ替わり立ち替わり挨拶に来るから、ゆったりってわけでもないんですよ。世界中にスノーボーダーの友達も多いし、カメラマンが写真を撮らせてもらえますか、って来るし、JF ペルシャとスコッティー・ウィットレイクとかはマイキーの車とタイニーハウスに一番興味を示していたし。あとはジョッシュ・ダークセンやら、ローカルのカート・ジェンソンやら、とにかく毎日来客が多いんですよ」

— マイキーの存在は大きいね。けどそれを言葉で伝えることは本当に難しいと感じるよ。

S 「本当ですよね。文章では伝わりづらいっすね。他にマイキーのようなことをしている人がいるか? って部分だと思うんですけど。ジャンプやトリックとか、滑りのスタイルの話ではなく、結局のところ、いい生活、いいスノーボーディングをしているかってことじゃないですか。マイキーはそれがしっかりできている」

— スノーボーダーとして、素晴らしいライフスタイルを実践している人を挙げるとすれば?

S 「やっぱりマイキーですよ。トップバッターに挙げれますね。でも、もっと身近な部分で言えば、スキー場の麓に家がある人とかは、もうすでに持っているものですからね。それで、夏に農業とかをやっていたら、理想的ですよね。まあ、たとえ白馬に家があってもスキーやスノーボードをせずに都会へ出ちゃう人もいるだろうし、その逆に、他所から白馬へ移住する人もいるだろうし。満たしてくれる生活っていうのはその人の価値観の差によって違うわけだから、情熱を持って生きていることが大切だなと思います」

— シンちゃんが旅を続ける理由は?

S 「俺としては、そこにいれそうで、いたら面白そうだから、行っている、ということですよ。それを続けていたら、自分自身のライフスタイルが豊かになっている、という。スノーボードは人生を豊かにさせてくれるはずですよ。背伸びをさせてくれる。スノーボードしたい、ってだけでマウント・フットだ、ニュージーランドだ、と普通の旅行とは全然違うものになるじゃないですか。どんどんステップアップさせてくれるものだから」

— シンちゃんはやっぱりバムだよね。昔ながらのスノーボードバム。

S 「バムらしいバムからしたら、長野市に住んでいる自分のスタンスは……って思っちゃいますけどね。けど、俺はバムだと思ってますよ。長野シティーだけど、ゴンドラ前に住んでいるテンションですから」

— 滑るフィールドへの視野が極端に広いバムなんだと思うよ。その環境下で、今、理想と思えるライフスタイルとは?

S 「本当の夢は、ハワイとカナダとイタリアやスイス、フランスなどのヨーロッパに拠点を持つことです。日本も含めて。それがあったら、最高ですね。1年中それを移動しているようなね。もう少し現実的な夢であれば、ハワイをベースにしたいってのもあります。オーガニック農園をやりながら、日本とアラスカを滑っていれば、プロスノーボーダーとしての仕事はできるぞと」

— なぜハワイ?

S 「まずは土地や人に惹かれているっていうのありますけど、一番は位置ですかね。今、長野市に住んでいろいろ場所を狙うのと一緒で、ハワイなら日本も近いし、アメリカは国内移動だし、経費的に意外とかからない。どのみちハワイとアラスカと日本の3箇所を移動しているんだったら、どこに長くいるか、の違いだから拠点をハワイにすることも可能だなと」

— スケール感がオモロイ。

S 「でも、テリエとかもそうですからね」



彼のスノーボードに対する情熱は、旅のスタイルや旅先でのコミュニケーション、もっと言えばライフスタイルそのものによく現れている。実は食事や身体への気遣いもおこたらない。体幹トレーニングだって続けている。雪のない季節を、サーフィンやサップ、マウンテンバイク、ボルダリングなどなど、アクティブに真剣に遊び倒すことも、スノーボーディングのポテンシャルへの配慮から(だけじゃないけど)。

美谷島慎とは、骨の髄までプロスノーボーダーだということ。

と言っても、ジェレミー・ジョーンズやザビエル・デ・ラ・ルーのような存在イメージと被ることはなく、そこら辺のアクティブな兄ぃちゃんだけど、実はなかなかの強者スノーボーダー、といったイメージ。

今回の旅の帰国日、サンタクルズの友人宅にパスポートを忘れ、観光予定だった1日を棒に振ったり、帰国した翌日にカフェに財布を忘れて慌ててみたり。ある意味、とっても人間臭い部分が普段から見え隠れするから、そう感じられるのかもしれない。

Text : DIE GO




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