INTERVIEW
雪の住人が生み出す、
都会と自然のシームレスな
スキーウェア
by Shinsuke Kojima | KAPTAIN SUNSHINE
小学生のときに神戸の海沿いから長野県の白馬村へ引っ越して、スキー場の中に住んでいました。リフトの下に家があり、どこへ行くにもソリで山を下ってから街を歩く生活でした。小学4年生から地元のスキーチームに入り、中学校まで競技スキーに打ち込みます。ハイレベルな環境だったので、先を行く同級生に追いつくために必死でした。スピード感の中で、自分がどう対応できるかが、スキーの醍醐味。僕がいま楽しんでいるサーフィンにも似たところがあります。板にのって下っていくスポーツが、根本的に好きかもしれません。
自然に囲まれた環境で生きてきた時間の長さは、デザイナーである僕の大切なインスピレーションになっています。サーフィンと生活を一体化できるような服、冬になったら雪山に向かえるような服。難しいことは言えませんが、趣味と仕事を両立できるようなものづくりに反映されています。また、シーズンカラーは自然の中から切り取ることが多いかもしれません。一方で自然の中で当たり前の存在だった〈Goldwin〉のウェアは、デザインもカラーも独特で、小さい時から特別な何かを感じとっていたように思います。
〈KAPTAIN SUNSHINE〉のものづくりは、重いウールを使ったり、分厚いコットンを作ったり、コレクションのほとんどに天然素材を使っています。服に限らず家具やキャンプ道具も古いものが好きで、使い勝手に多少の難があっても、その味わい深さが優ることが多い。いまだに古いものの手間を愛しているとろがあります。このベクトルは、〈Goldwin〉とは逆のベクトルを向いていると思うのですが、今回のコラボレーションは、僕が白馬で雪ともに育った経歴と目指しているクリエーションに共感いただき、実現したものです。
両ブランドが一貫しているところは、ディテールと素材に妥協がないところ。すべてに理由があり、理に適っている〈Goldwin〉の突きつめたディテールワークを僕は尊敬しています。僕も世界中のクラシックなものから素材を当て込んで〈KAPTAIN
SUNSHINE〉を表現しています。この作業を毎シーズン繰り返しながらコレクションを進化させていくには、なかなかハードです。しかし、お互いのもつ魅力を共有することで、ハイテクとアナログをつないだ新しい視点のスキーウェアが完成しました。今回は4つのアイテムを製作しましたが、トップスはGORE-TEX®やダウンを使い、表地はナイロンで統一しました。一枚ではシーンが限定されるものも、レイヤリングを工夫することで解決しています。
ミリタリーウェアの雰囲気をサンプリングし、袖の付け方やオーバーなシルエットは〈KAPTAIN
SUNSHINE〉の特徴を踏襲しました。その中で最新のGORE-TEX®を使うには、ポケットの角度や深さ、フラップの形状、ステッチの順番まで、デザインのプロセスにルールが存在します。雪山で過ごすために必要なディテールは、ゴールドウインと話し合いながら着地させました。〈Goldwin〉が得意なテクニカルでハイテクな部分と〈KAPTAIN
SUNSHINE〉のクラシックでアナログな部分を融合させています。
非日常の空間における体験を楽しむスキーウェアには、他のスポーツとは異なる独特のニーズがあります。スキーウェアをデザインする高いハードルをクリアしながら、都会と自然で着られる、シームレスなデザインを目指しました。今でも、個人的にスキー場に行くと懐かしい高揚感を覚えます。荷物を積み、雪山まで車を走らせ、ゲレンデを滑り、ロッジで過ごす。そのすべてに今回のプロダクトが快適に溶け込むことで、新しいライフスタイルが生まれることを期待しています。
児島晋輔 SHINSUKE KOJIMA
1976年、兵庫県生まれ。メンズファッション誌の編集を経て、アパレルデザイナーへと転身。2013年に自身のブランド〈KAPTAIN SUNSHINE〉をスタート。アメリカやイギリスを中心とするクラシカルなメンズクローズに、現代の感覚とパーソナルな感性を織り交ぜたプロダクトは、信頼あるマーチャントのテキスタイル、職人の優れた縫製など、ハイクオリティな日本の生産背景を駆使。そこにヴィンテージへの造詣と考察を落とし込む編集力によって、プロダクトを生み出している。