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        「難しいことは考えずに、ただ話すことができる場所が必要」開かれたコミュニティを通して、飲食業界の未来を考える

        Mary Scherpe | メアリー・シェルぺ

        The Feminist Food Club主宰/起業家

        寒空が続く1月下旬のベルリン。中心部から少し離れた閑静な住宅街にあるメアリー・シェルぺの自宅は、爽やかなグリーンの壁とキャンドルから漂う森林の香りが外の天気とは裏腹に心地の良い空気を運ぶ。ベルリンのレストランをはじめとする最旬スポットを厳選して紹介するウェブサイト「Stil In Berlin」の運営をはじめ、長年情熱を注いできたパズルをオリジナルで制作する新しいビジネスをローンチするなど、起業家としての一面も持つメアリー。2017年には、飲食業界の性差別や人種差別などに対して問題定義しつつ、気軽に集まり、情報交換ができるコミュニティ「The Feminist Food Club」を設立し、熱心に発信を続けている。「よかったらお茶をどうぞ」。数週間かけてリノベーションしたというこだわりのキッチンからティーポットが運ばれてくる。温かいハーブティーを飲みながら、彼女の活動について話を聞いた。

        ―「The Feminist Food Club」をはじめたきっかけは何ですか?

        難しいことは考えずに、ただ話すことができる場所が必要だと感じたからです。私はもともと「Stil In Berlin」というベルリンで撮影したストリートスナップを掲載するブログを運営していました。そのブログ内でレストランを紹介する記事を書きはじめたことがきっかけで、飲食業界で働く人たちに出会う機会が増えました。そんな時、私が日常生活で感じていた性差別や人種差別などの問題が、飲食業界でも同様に問題になっているということに気がついたんです。

        ―他人事ではないと感じたんですね。具体的にはどのような活動をするのでしょうか?

        2017年に活動をはじめた時には、月に1回のペースで集まりディスカッションをしていました。6人くらいの時もあれば、多い時には20人以上集まることもありました。トピックは、飲食業界における性差別、人種差別、文化の盗用など。さらには、レストランを経営する上で必要なビジネスプランの作り方やプロモーション戦略について話すこともあるんです。2020年の2月以降は、パンデミックでなかなか集まれなくなってしまったので、インスタライブなどを通して発信を続けています。

        ―メアリーさんは実際にはレストランを経営したり、シェフとして料理をする立場ではないですが、この活動を続ける理由はなんですか?

        このコミュニティで出会った人たちが一緒にビジネスを立ち上げたり、お互いにアドバイスをし合う関係性が築けていることが何よりも嬉しいんです。飲食業界は、まだまだ男性優位、特に白人の男性優位の業界です。それは、現場で働くシェフやレストランオーナーだけではなく、レストランを開業する際に融資をする銀行員やレビューを書くライターにも男性が多いという理由があります。

        ―ドイツに限られた問題ではないと感じます。

        こうした環境で女性が飲食業界に居場所がないと感じてしまうことが本当に残念です。フライパンが重いとか、体力の差があるとか、不理屈な理由をつけられて疎外感を感じてしまうこともあるんです。でも、共通の悩みを持つ女性が集まり、共有し、話し合い、発信を続けることで少しでもこの状況がポジティブな方向に向かっていけば良いと思っています。食べ物は、衣食住として、生きていく上で欠かせないものですが、それ以前に楽しく、喜びに溢れたものであるべきなのですから。

        ―最近はオリジナルのパズルを販売する「SUNDAYS」というビジネスもはじめたそうですね。

        今までは、デジタルを通して発信することがほとんどだったので、何かフィジカルな活動がしたいと思っていたんです。「なんでパズルなの?」とみんなに聞かれますが、ただただパズルが好きだったというのが理由です。好きだからやってみようというシンプルなモチベーションなんですよ。パズルはほどよい集中力しか必要ないところが魅力なんです。音楽やポッドキャストを聞いたり、人と話をしながらでも組み立てられますし、パズルだけにずっとフォーカスしなくて良いのですごくリラックスできるんです。