UA

ウーア歌手

心と身体のYES/NOを聞き一瞬一瞬の幸せを味わうことで前進する

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自分を律してくれる
子どもたちと
シンガーという職業について

ソウルフルな歌声で、心に響く楽曲を世に送り出してきたシンガーのUAさん。現在は日本を離れてカナダの島に移住し、深い森の中で生活を送っています。彼女に話を聞けたのは2021年9月中旬、東京で。2020年が記念すべきデビュー25週年だったはずが、コロナウィルスの世界的なパンデミックでライブとツアーの予定をすべて一年延期に。今年は、念願叶って日本へライブをしに来れて、カナダに住む子どもたちとはしばらく離れて暮らしています。

24歳になった俳優の村上虹郎くんと13歳になる娘、9歳と5歳の息子たち、あわせて4名の母である彼女。最初の出産は、デビューイヤーの最中に行ったと振り返り、UAの歴史は母としての歩みでもあるのだといいます。

「初産は、上京してすぐ。恋愛、結婚があって授かったから、計画していたわけではなかったの。次は女の子で、再婚した2008年に。自宅に助産婦さんを呼んで、虹郎くんに見守ってもらいながら出産して、彼にへその緒を切ってもらったんです。それが一番の性教育だと思ったから。そのころは、都会的な便利な生活を見直したいと思っていたころで、3・11の原発事故が起きた後は沖縄に住み始め、最終的に出産は自分たち家族だけですることが理想だと考えるようになっていました。3人目は夫婦だけで沖縄の自宅で産み、4人目もカナダで同じように行いました。出産はいつも身体は同じことをしようとしていたけど、自分自身の年齢と蓄えている知識、環境が違いました。4回目にしてやっと“自分たちらしく開放感を持って産んだ”っていう感覚があって。第三者がいない環境は自分をすべてさらけ出せるから、完全にリラックスできる。メンタルに非常にいい効果がありました」

シンガーになったのと同時に始まった、母としての人生。子どもの存在は、自身やミュージシャンとしてのクリエーションに、どのような影響があったのでしょう。

「子どもがいるということで、自分を律せられるとは思います。一人の時はいつ寝ていつ起きてもいいわけだし。言葉を話すことは、精神を語っていることと同じこと。子どもの未来のために何をここで喋ったらいいか、と常に考えますね。歌は希望で、愛についての祈りでもあり、その答えこそ歌えていないけど精神そのもの。子どもがいない人生だったら、もっと退廃的で闇についてとか歌っていたかもしれない(笑)」

自身が考えるシンガーとしての在り方と歌うことについて問うと、意外な回答が返ってきました。

「UAになる前の人生は、歌手になるなんて思ったこともなくて。ひょんなことで扉が開いて、夢中でアウトプットをしてきました。『死ぬまでずっと歌いたい』と言葉にできたのは10年経ってから。音楽好きな人ってずっとギターを爪弾いたり、ハミングしたりするじゃないですか。憧れはあるんですけど、私自身はそうじゃない。子育ての中で歌うことはあっても、UAとして音楽の道に入っているので、職業として歌手をしているんです。要するに聞いてくれる人がいないと歌えないの。だから、好きでいてくれた方の存在が私を歌わせてくれる、そういう方々のために歌いたいと思っています。もちろん自分の音楽に対する好みや掘り下げたい部分はあるし、そのせめぎ合いを楽しんでいるんだけど」

身体と心のYESとNOに耳を
傾けて、幸せを感じること

UAとUAではない自分との行き来を繰り返し、そのバランスをとってきた。カナダでは自らを歌手だと知る人がほぼいないこともあり、日本には仕事をしにきている感覚だといいいます。ベストなバランスかは分からないが、子どももカナダを気に入り、様々なことが重なって現在の環境に導かれたのだそう。

「エネルギッシュに活動して見えるのは、カナダでUAじゃない時間があるからかもしれないですね。カナダの島での生活は子どもを育てるため。正直、どの選択が良ったかなんて大分先にならないとわからない。そう思うと、そのときそのときが幸せであることでしかないと思うんです。お母さんだからって我慢したり、犠牲になっている感覚があるのはまずい状況。もちろんエゴとの見極めは重要だけど、カナダに住めた自分はすごくラッキー、そして日本にUAをしに来れる自分もとてもラッキーって思うしかない。両方ラッキーって。でも、言い方によっては、カナダと日本の行き来をして、本当にキツイっていうこともできる。特に、コロナ禍は日本に来るだけでPCR検査を何回も受けたり、2週間の自粛をしなくてはならない状況。でも、『2週間ものんびりできるな』って思うこともできるわけじゃない?」

彼女のバランスの取り方は、物事を受け入れ自然の流れに身を任す。それに尽きるのだといいます。

「いま、自分が49歳で女として変わっていく時期。心が興奮していると身体が付いていかなかったりするんです。腰が痛い、喉が気になるというように、身体がNOを感じる状態は、心よりも不調を実感しやすい。調子が悪いと言うこともできるけど、何かがストレスになっているんだと思う。もし、歌う時にNOを感じたら、それは人の心には届かないし、100%身体がYESの状態で歌えた歌は、きっといいものでしょう。出産の瞬間も同じで、怖い、痛いなどNOという感情が強いと産みにくいんですよ。完全に抗うことなく心から『産まれてね』って思えて、自然なリズムに乗っていく感じ。物事って実はシンプルで、リズムの取り方が似通っていたりする。でも、それを個人が日々の生活におろして実践するのって、それぞれが些細な感覚の中で少しずつ獲得していくことであって、一概に『これが答え』とはいえないんですよ」

生きることを見つめ直し、
行きついたカナダの生活

東京を離れた理由が、都会の街が子どものためにできていないことだったというUAさん。経済のためにできた街での育児は、消費社会の誘惑に子どもの目を覆いながら育て、十分に子ども時代を味わえずに急いで大人になるよう強いられるといいます。

「人間は自然の一部だから、自然環境が多い方が良い状態でいられるし、発想も豊かになっていく。野生的な部分や勘など、無意識の域が育まれていくんです。いま住んでいる地域は、コンビニも自動販売機も信号もないし、夕方になればお店は閉まります。田舎だからではなく、ある意識のもとにそうなっていて、自然保護の意味合いも強く、人が自然と共生しようとしている。オーガニックやサスティナブルな生活がうたわれる地域ですが、富裕層がいるからこそ成り立つ側面もあり、一方でホームレスもいる。社会の縮図のなか、いいバランスが取れているのは珍しいし、何より島全体で子どもを見守って、育てていこうという雰囲気があるんです」

彼女が住む島にはアーティストが多い。それは、消費社会から距離を置くと自ずとクリエーションに向かうからだそう。ある意味退屈であり、子どもがいなかったら住んでいなかったかもしれないと本音が出る場面も。

「子どもが生まれたことで社会を目にしたと思います。自分の身体から出てきた子どもはものすごく綺麗な状態だから、汚い水や汚い空気に触れさせたくない。産んだ人はみんなそう思うはず。そこで環境、食、社会の問題に目がいくんです。子どもは本当授かるといる言葉があっていて、そばにいて支えてあげるだけ。むしろ、子どもから学びのチャンスをもらうことが多いですね」

最終的に、生きることに対する考え方について語ってくれたUAさん。都会から距離を置くことで見えてきた、プリミティブな生物の営みがあるといいます。

「人間は不完全な状態で生まれてきて、死んだときにみなが一体となって完璧となる。死をあまりにも遠ざけると、生きていることの重みや奇跡がわからなくなるのだと思います。死を忘れさせるのが都会の暮らしで、例外的な恐ろしい事件をニュースで報道して不安を煽るルーティーンになっているのかもしれません。生きているということがレアであることが実感できたら、自分をもっと思いやれる。どんなものを食べて、どこに住んでいたいのか。島暮らしの自分たちにとってTVなどのメディアはないに等しく、足を踏み入れると森の中に野生動物の死が散らばっているんです。白頭鷲やハゲ鷹、大ガラスが群がって飛んでいると、その下には鹿が死んでいる。毎日がドラマチックで飽きることはありません。逆に日常に死がないと、自然の方が異物みたいな感覚に陥ってしまうのかもしれないですね」

都会を離れて大自然の中に身を多くと、本当に美しいがわかる目が養われ、美意識も培われていくのだと言います。

最後に、UAさんから。大切なのは誰かとちょっとしたひらめきや違和感を話して対話すること。いいコミュニティが築け、生きるパワーに繋がるはずだと暖かい眼差しで語ってくれました。

小野塚 彩那

わたしを構成する3つのワード

  • Passion情熱
  • Harmony調和
  • Vitality生命力
UA

PROFILE

UA歌手

大阪府出身。1995年にデビュー。翌年、シングル『情熱』が大ヒット。以降、浅井健一らと組んだ「AJICO」、ジャズサックスプレーヤー菊地成孔とのコラボレーション、映画主演、NHK教育テレビでの歌うお姉さんなど活動は多岐にわたる。2020年にデビュー25周年を迎えた。現在カナダに居住、4人の母。

山内 聡美

Satomi Yamauchi

山内 聡美写真家

変化を恐れずニュートラルなマインドで家族と新たなチームを築く

小野塚 彩那

Ayana Onozuka

小野塚 彩那フリースタイル スキーヤー

人間的な豊かさとトレーニングでアスリートとして更なる高みへ

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