石川将也の>失敗から始まる #2

#2 「自転車についてる赤いやつ」から始まる

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  • 2021.8.22 SUN

この連載「失敗から始まる」では、身の回りの現象について、私(石川将也)がやってしまった失敗を通して、気づいたことやわかったことを紹介していきます。第2回となる今回でとりあげるのは、私の30年越しの失敗(というか後悔)です。ことの発端は第一回「クリームソーダの氷」と同じく、身の回りで使われているもの、あたりまえとして存在しているものに対する「これ本当に役に立っているの?」という疑念でした。

「自転車についてる赤いやつ」。これ、子供の頃はじめて買ってもらった自転車に、「安全のため」としてあたりまえのように付いていました。

でもこれ、キラキラはするけど、ライトのように自分で光を発するわけではありません。私はずっと、心の中で「これ本当に役に立っているんだろうか」という軽い疑いをもっていました。しかし、だからといって調べたり確かめたりすることもなく、疑いを抱えたまま大人になってしまいました。

この材料は「反射材」といって、光を当てるとその光をやってきた方向へまっすぐに反射する性質を持っている、ということを知ったのは、わりと最近のことです。疑問を抱いてから、実に30年近くの月日が経っていました。

太陽の光の下で動かしてみたり、適当に懐中電灯で照らしてみてもその効果をあまり実感できなかった理由は、「反射する光が光源にまっすぐ帰ってくる」という性質によるものだったのです。たとえば、懐中電灯を自分の目のなるべく近くにもってきて反射材を観察すると、光っていることが分かりやすいです。

懐中電灯をなるべく目に近づけて反射材を照らすと、光っていることがよくわかる。

でも最近は、もっと簡単に反射材の効果を実感できる機材が、身の回りにあります。ということで作ってみたのが、次のような映像です。↓

音楽:イトケン

スマホのカメラでフラッシュを焚いて写真を撮る。それだけで、反射材が効果を発揮しているところを記録することができるのです。 さらに、映像の中でお見せしたように、街中でパシャっと、フラッシュを焚いて写真を撮ってみると、カメラに映っている反射材が、あちこちで光って見える写真を撮ることができます。

よくみると、写真のあちこちが光っている。

こんなふうに写真を撮ってみると、街中にいかに多くの反射材が使われているか、気付かされます。それは夜暗くなった時、車や自転車など、ライトをつけたものに対して、その存在を示したいものが街中にいかに多いか、ということでもあります。こんなに面白いことが、街中にずっとあったのに、知らずに過ごしてきていたことに、私は少なからぬショックを受けました。疑問に思ったことを、そのまま宙ぶらりんにしてしまったことによる失敗です。

電柱のこんな低いところに反射材があるなんて、昼間はまったく気づいていませんでした。

電柱…、ガードレール…、道路工事の作業員が着るベストにも反射材は使われています。反射材は、たしかにライトと違って自ら光を発することはできません。でも、そのおかげで、電池を必要としませんし、ライトのように夜中ずっと光り続けてまぶしい、といったこともありません。

みなさんもぜひこの夏、夜中コンビニにアイスを買いに行く時にでも、フラッシュをたいて写真を撮って反射材を露見させてみてください。

動画の中で私は「反射材は鏡のように光を反射します」と言っています。

ではなぜ、鏡ではなく反射材が街中で使われているのでしょう?

今度は、すぐに検証してみました。一枚の板に小さな反射材と鏡を貼り付け、

写真を撮ってみます。

真正面からだと、反射材も光りますし、鏡にもフラッシュの光が写っています。ところが、板の角度を変えて少し斜めにしてみると…。

反射材は赤く光りますが、鏡の方にはフラッシュが写っていません。鏡のような反射では、光が正面から当たらないと、まっすぐに跳ね返すことができないのです。一方この反射材、正式には「再帰性反射材」というのですが、光がどのような角度から当たっても、その光が来た方向へ反射する性質を持つのです。

でも、どうしてそんなことが実現できるのでしょう。

ここではちょっと書ききれませんが、再帰性反射材の仕組みも、非常に面白いです。みなさんも、よかったら(私のように何年もほったらかしにせず)調べてみてください。

最後に、反射材と普通のテープを板に貼り、こんなグラフィックを作ってみました。

一見なんだかわかりませんが、これを、スマホを使ってフラッシュONで写真を撮ると、このコラムのさいごにぴったりな言葉が見えてきます。

みなさんは、読めましたか?