THE NORTH FACE MOUNTAIN

LAYERING THEORIES #11
2022 August

“TREKKING PANTS” IMPRESSION

THE NORTH FACEのトレッキングパンツは、種類が多すぎて選ぶのに苦労する。そんな声にお応えするのが今回のインプレッション。 大定番の「ALPINE LIGHT PANT」に、 夏山時期に最適な「VERB LIGHT PANT」、 そして最もタフに使える「BIG WALL PANT」 という3つの特徴的なモデルに焦点を当てます。

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THE NORTH FACEのトレッキングパンツは、種類が多すぎて選ぶのに苦労する。そんな声にお応えするのが今回のインプレッション。 大定番の「ALPINE LIGHT PANT」に、 夏山時期に最適な「VERB LIGHT PANT」、 そして最もタフに使える「BIG WALL PANT」 という3つの特徴的なモデルに焦点を当てます。

登山やクライミングに適したTHE NORTH FACEのロングパンツは、たしかにシルエット的に非常に似通っています。そのため、見た目で違いを判断するのが難しいことは否めません。けれども、各モデルには、それぞれ異なる機能が盛り込まれており、一見、似たようなルックスのパンツでも、シーンやアクティビティごとに最適な機能を発揮します。

今回はTHE NORTH FACEの数あるロングパンツのなかから、登山やトレッキング、クライミングに適した代表的な3本のパンツをインプレッションします。2009年に登場以来、今やトレッキングパンツとして不動の人気を集める大定番の「ALPINE LIGHT PANT」、暑い夏に最適な「VERB LIGHT PANT」、そして最もタフに使える純クライミングモデルの「BIG WALL PANT」という3本です。

「ALPINE LIGHT PANT」は当初はアルパインクライミング用パンツとして開発されました。アプローチでは登山道を長く歩き、岩場に取り付けばクライミングの動きを妨げないために、膝から裾までをテーパードさせた細身のシルエットが特徴的でした。肌触りも良くストレッチ性に優れる素材の良さから、トレッキングパンツとしての着用が増えた結果、今や10年以上のロングセラーという人気定番アイテムになっています。

「VERB LIGHT PANT」はALPINE LIGHT PANTに似たテーパードしたシルエットを持ちながら、よりライトな素材を使った、軽量で清涼感のある夏用ストレッチトレッキングパンツです。裏地はサラりとした肌触りで汗をかいきやすいシーンでもべたつかず、快適に行動ができます。登山やトレッキングを想定しているため、ウエストもバックル式のウェビングベルト採用で、誰にでも違和感なく使えます。

一方、「BIG WALL PANT」はアルパインクライミングに特化したタフなパンツと言っていいでしょう。しっかりとした厚みがある高い対摩耗性を持つ生地は、クライミング中の岩の擦れにも強く、花崗岩のワイドクラックに平気で脚をねじ込めます。それでいて、高いストレッチ性と立体裁断は、クライミングのムーブを妨げません。

これら3本のロングパンツは、いずれも裾を絞ったテーパードシルエットと高いストレッチ性という共通の特徴を持ち、それぞれ想定されたシーンは異なりますが、さまざまなアウトドアアクティビティで使える汎用性の高さも魅力です。

また、この3モデル以外にもTHE NORTH FACEのロングパンツのラインナップは多彩です。見た目は似ていても、素材やパターン、パーツ類は異なります。そうした個性や機能の違いから、ご自身の目的に合った1本が見つかれば、より快適な登山を楽しめること請け合いです。

——アルパインクライマー
馬目弘仁さんのインプレッション

アルパインクライマーで山岳ガイドの馬目弘仁さんは、10年以上前からTHE NORTH FACEの製品開発に関わってきました。

2009年春夏シーズンに登場したアルパインライトパンツもそのひとつ。

現在はトレッキングパンツの大定番として人気のこの製品について、開発当時のエピソードに触れながら、その魅力を語っていただきました。

アルパインライトパンツは開発の初期から関わらせてもらいました。途中からアルパインクライマーの佐藤裕介も加わり、当時の企画担当の方と3人で作り上げていった製品です。

当時、クライミング系のパンツといえば、比較的ルーズフィットのものが流行っていました。それ以前はタイツでしたね。で、僕らがやりたいクライミングはアプローチの長い岩場が多かったんです。

それで、アプローチの長い山登りもこなせて、そのままクライミングができるパンツが欲しいという話をしました。足元がしっかり見えて、ヤブにも引っかからないタイトフィットで、伸縮性があるもの。

最初のサンプルは今よりもスリムで、ぴたりと脚にフィットするものでした。こんなにタイトでは登山用のロングパンツとしては売りにくいと、社内の評判はもうひとつだったという話も聞いています。

それが今や定番として10年以上のロングセラーアイテムになっているということで、それはもう嬉しい限りです。

裾回りをタイトにしてほしいというのは、僕たちの要望を大胆に取り入れていただいた結果です。当時のパンツの裾は、登山靴に被せられるサイズが主流だったはずです。

夏の高い山でのマルチピッチクライミングにフォーカスしたパンツは、ヨーロッパ系ブランドにはありましたが、それらは夏の氷河での行動も意識したもので、あそこまで裾は絞っていませんでした。

したがって、裾をテーパー状に絞った登山用パンツというのは、あれが初めてかもしれません。正確なことはわかりませんが……。

ウエストの仕様も僕らの要望です。当時はバックルで締めるタイプが主流でしたが、ハーネスに干渉するのが嫌だったので、ヒモで締めるスピンドル仕様に。

その際、ヒモが露出するとクライミング中にひっかけたりしそうなので、あえてパンツ内側で締める仕様にしてもらったんです。

生地は軽くて伸縮性もあって非常に素晴らしいものでしたが、岩に擦れると多少の毛羽立ちが出てしまう恐れもありました。

でも、クライマーはそのへんは気にしないので、見栄えよりも使いやすさ優先でしょう、ということであの素材になったと思います。

今でも多くの山行でアルパインライトパンツを使っています。例えば、北アルプスや、瑞牆山でも奥のほうの岩場に行くときのような、歩きが長いとき。春秋のフリークライミングでも使っています。

あるいは、普通の山歩きにもいいですね。撥水が効いて小雨なら弾いてくれるし、乾きも速く、なにより歩きやすい。

4月にガイドした女性のお客さんともアルパインライトパンツの話になり、実はあれ、僕もかなり開発に加わっているのですよ、と伝えたら、「えぇ!」なんて、かなり驚かれました。そんなに意外でしょうかね?

アルパインライトパンツ
ALPINE LIGHT PANT

・通年で使える登山パンツの定番
・ハイキングからクライミングまで高い汎用性
・高いストレッチ性と穿き心地の良さ
・足元を見やすい膝から下のテーパードシルエット
・スムーズな膝上げを実現する立体裁断
・ハーネス着用に干渉しないウエスト仕様

——山岳ガイド
松本省二さんのインプレッション

山岳ガイドの松本省二さんは、冬はバックカントリーガイド、春から秋は縦走登山やバリエーションルートのガイドとして活動しています。

そのなかで、数あるTHE NORTH FACEのロングパンツのなかで、無雪期に使うにはなにがベターかと、ここ数年で多くのモデルを意識的に穿き比べてきたといいます。

それはまさに今回のテーマそのもの。ということで、松本さんのインプレッションに注目です。

THE NORTH FACEの登山用パンツは種類が多く、僕でも迷ってしまうのですが、やはり、多くの人が愛用している大定番のアルパインライトパンツをスタンダードとして、これを軸に考えるのがわかりやすいと思います。

僕の場合、もちろんアルパインライトパンツもよく使いますが、暑い時期の登山にお勧めなのはバーブライトパンツです。

一番の違いは、生地の厚み。アルパインライトパンツよりも薄手のため、暑い季節でもストレスなく歩けます。また、肌触りがサラサラとして涼しげで、気温の高い日も快適です。

というわけで、暑さが厳しい真夏の低山ではバーブライトパンツ一択ですね。秋の低山でも十分行けちゃいます。

逆に、夏山でも3,000m級の稜線や、岩場に行くようなときはアルパインライトパンツを選びます。

自分のスケジュールに沿っていうなら、北アルプスの仕事が本格的になる夏山シーズンは、バーブライトパンツ中心。たとえば、麓から歩く穂高の場合は、標高の低い上高地からの長い歩きで快適です。

早朝から気温が低かったり、あるいは、天候が悪くてその日は気温が上がらないといった日は、中に薄手のタイツを穿いて調整します。

僕はけっこう寒がりなので、今日は明らかに冷えるなという日は、夏でも一番薄いタイツを穿いたりするんですよ。

バリエーションルートのような、ハーネス着用時間が長く、岩の擦れが予想される行程では、バーブライトは生地が薄いため、アルパインライトパンツを選びます。

あと、これは男性だけのメリットですが、アルパインライトパンツのフロントジッパーはかなり下まで開くんですよ。なので、ハーネスを付けているときには、なにかと便利です。

穂高と違って、立山剱エリアでは麓から歩くことなく、標高2,400mまで乗り物でアプローチできるので、アルパインライトパンツです。

9月のシルバーウィークを過ぎて、上高地周辺でも涼しくなってきたら穂高でもアルパインライトパンツ。低山だったら10月くらいまではバーブライトパンツで行くという、そんな使い分けです。

バーブライトパンツ
VERB LIGHT PANT

・夏用ストレッチトレッキングパンツの定番
・軽量で動きやすく、汗にもべたつかない
・高いストレッチ性と穿き心地の良さ
・足元を見やすい膝から下のテーパードシルエット
・スムーズな膝上げを実現する立体裁断
・ウエストは操作性に優れた軽量バックル仕様

——北海道防災航空室
五十嵐宏史さんのインプレッション

北海道の山岳救助を中心に活動する防災航空室で隊員を務める五十嵐宏史さん。登山での遭難者を救助するために、防災ヘリコプターによる救助活動の最前線で活動しています。

そんな北海道防災航空室が選んだのがビッグウォールパンツ。THE NORTH FACEの登山パンツのなかで、最もタフに使える1本です。

ヘリコプターを使った山岳救助が主な活動です。登山中の体調不良やケガ、山岳以外でも、例えばクライミング中の事故で地上隊の接触に時間が掛かり、上空からの救助が有効な場合などは出動しています。

着用するパンツに関しては、山岳地での活動が多いため、活動中の汗処理が非常に重要になります。

以前はアルパインライトパンツを着用していましたが、吸汗発散性と速乾性、伸縮性を備えつつ、より丈夫で耐久性のあるビッグウォールパンツを令和2年(2020年)度から使用しています。

また、山岳地での救助以外でも、林野火災に対する空中消火で出場した場合も、ビッグウォールパンツを着用することがあります。

防災航空室は札幌市内の丘珠空港の自衛隊基地内にあります。そのため、地上と救助現場の寒暖差は大きく、夏などは出動前には汗をかいていたものが、現場に着くとそれが一気に冷えます。

また、上空からの捜索が必要な場合は、防寒着を着込んで上空捜索を行いますが、要救助者を発見すれば、その厚着のまま降下して救助作業に入ります。

したがって、隊員の汗冷えによる活動障害を防ぐためには、地上との寒暖差による発汗の処理が重要なのです。

また、ビッグウォールパンツの生地の厚みと、高い伸縮性により、急斜面や足場の悪い状況下の活動でも破れることなく、隊員の擦り傷による負傷も少なくなりました。

当隊では装着する装備は各個人の判断に任せています。体感温度には個人差があるからです。そのため、着用時期にも個人差がありますが、おおよそ、初夏から晩秋にかけて使用する隊員が多いようです。

また、冬期間でも気温が高めの日などは、インナー着用で救助活動や自隊訓練にビッグウォールパンツを使う隊員もいます。

北海道とはいえ、近年の盛夏では30度を超える日が続きますが、それでも不快なく着用できています。また、洗濯をしても乾きが早いために、連日の自隊訓練や救助活動でも対応させてもらっています。

ビッグウォールパンツ
BIG WALL PANT

・アルパインクライマー用に開発したクライミングパンツ
・優れたストレッチ性と高い耐摩耗性を両立
・なめらかな肌触り
・テクニカルなムーブに追従する立体的パターン設計
・ハーネスに干渉しないポケット配置

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寺倉 力
CHIKARA TERAKURA

ライター+編集者。高校時代に登山に目覚め、大学時代は社会人山岳会でアルパインクライミングに没頭。現在、編集長としてバックカントリーフリーライドマガジン「Fall Line」を手がけつつ、フリーランスとして各メディアで活動中。登山誌「PEAKS」では10年以上人物インタビュー連載を続けている。

2021.10.20
WRITER : CHIKARA TERAKURA
PHOTOGRAPHER : -

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