1. Instagram
  2. Twitter
  3. Facebook
  4. YouTube

RUNNINGFOOD

Sustainable Running Life #02

ランナー、料理家、モデル。浅野美奈弥のサステナブル・ライフ| 後編

フル完走の成功体験が新たな挑戦への原動力に ランナー、料理家、モデルという三つの顔を持つ浅野美奈弥さん。それぞれの仕事がいい相互作用を起こしている彼女のライフスタイルに迫る。後編は、人気のケータリングサービス『美菜屋』や2022年9月、茨城県笠間市にオープンした農園レストラン『Take me farm.』で行っているサステナブルな試みを聞いた。

浅野さんがモデル1本で仕事をしていた頃、世間の価値観は〝美=痩せている″一択。オーディションを受けても、なかなか結果が出ないもどかしさも相まって、自らを過度なダイエットに走らせ、体調を崩してしまった。その反省から食生活を見直し、独学で食の勉強を始め、フードスタイリストなどの資格を取得。ケータリングを行う料理家の元で勉強。それからわずか1年で『美菜屋』を開業する。その行動力の源になっているのが、フルマラソン完走で得た自信だ。

「走ると決める直前、入院するほど体調がよくなかったんです。でも、何かを変えるきっかけになるかもしれないと思い挑戦したら、完走できた。この成功体験があるから、自分の可能性を限定せず、挑戦をやめないマインドになれたんだと思います。『やりたい』といろんな人に話すと実現に近づくことも、これまでの経験からわかってきました。もちろん言っているだけではダメなんですけど、実際に行動を起こすスピードは速いほうな気がします」

思い立ってから行動に移す速度は、新たに始めた農園レストラン『Take me farm.』の立ち上げでも速かった。7月に茨城県笠間市でやらないかと声を掛けられ、9月にはオープンしてしまったのだ。

「お話をいただいた時は、あまりに忙しくてお断りするつもりだったんですけど、一度、現地に行ってみようと。そしたら、すぐに気に入っちゃったんです。それから1ヶ月、毎日東京から茨城に通い、急ピッチでオープンにこぎつけました」

農業をアグリスポーツとして広めていきたい 『Take me farm.』では、輸送などでかかる環境負荷が低く抑えられる地産地消を心掛ける。その究極の食材が、施設内にある畑で収穫した野菜だ。まずは、育てやすい小松菜や春菊、ラディッシュからスタートした。

「せっかく畑をやるなら環境に配慮した方法でと思い、レストランで出た生ごみやコーヒーかす、収穫できずダメになってしまった野菜を土に戻し、培養土で育てています。初めて収穫した野菜は畑で採ってそのまま食べました。味が濃く、本当に美味しかった! 味に感動すると同時に、育てる人達や食べ物そのものへの感謝の気持ちが膨らんだんです。作ってくれる人がいるから『美菜屋』のお弁当も作れるんだなって」

自分の手で野菜を作ってみて、いかに畑仕事が重労働なのかも実感。そして、農業を若い世代に広めていきたいという、新たなやりたいことが見つかった。

「おじいちゃんおばあちゃんが畑作業をしている姿を見ると、頭が上がりません。農業は人手不足です。この前のお米の収穫シーズンは、若い人はSNSでお手伝いを募集できるんですけど、発信ができない世代が収穫しきれないお米が大量にあって……。収穫を諦めざるをえないから、フードロスになってしまう現実があるんです。なので、休みの日に地方に遊びに行った若い人が、お手伝いしたいと思える流れが作りたいんですよね。ランニングも、若い人のスポーツという認識ではなかったけど、ライフスタイルとして根付いたように、畑仕事にも目が向いて、アグリスポーツも広めていけたら。実際に、GO GIRLのメンバーが何人か遊びに来てくれるですけど、土仕事で癒されて東京に帰って行くんです」

ランもモデルも料理も、好きだから楽しい もともと、『美菜屋』では、野菜の切れ端で弁当を作るなど、できることからサステナブルな取り組みを続けてきた。畑を始めてからは、サステナビリティへの意識が確実に加速。休日返上で、循環型の街作りを行っている地方に出向くこともある。先日は、町内から焼却・埋め立てごみをゼロにする〝ゼロ・ウェイスト″宣言を行った徳島県上勝町を訪れ、刺激を受けた。

「ゴミ分別ステーションの一角に、服や食器がきれいにディスプレイされていたんです。普通のショップなのかと思ったら、全部、町の人が持ち込んだ不用品で、無料で持ち帰っていいんですよ。自分のお店でも取り入れたら楽しそうだなって思いました」

「小さいことだけど」と前置きをしながら、マイボトルを持つ、裏紙をメモとして使う、ファストファッションではなく古着を選ぶ、着なくなったら切ってウエスにするなど、日常生活で実践している環境にいいことを教えてくれた。『美菜屋』では、野菜の皮でブイヨンをとる。

「簡単に捨てるという行為をしなくなりましたね。捨てるということへの罪悪感が強くなってきて、まだ何かに使えないか考えるクセがつきました」

東京と茨城の2拠点生活で多忙を極めるが、ランナー、モデル、料理家のどれも続けていきたいという。

「もうちょっと落ち着いたら、じっくり練習してサブ4を狙いたいですし、自分が3人いたらなって思うんですけど(笑)、ランもモデルも食の仕事も、全部好きなことで楽しい。それが共通点としてあるので、すごく頑張ってやってる意識はないんです」

WRITER PROFILE

浅野美奈弥
Minami Asano

1991年、北海道札幌市生まれ。学生時代からモデル活動をスタート。過度なダイエットで体調を崩したことをきっかけに健康を見つめ直し、料理家を目指す。2019年にケータリング「美菜屋」を始動。2021年にアトリエをオープン。ケータリング事業に加えて店頭でのお弁当販売をスタートし、キッチン付きレンタルスペースも併設。会員制ランニングコミュニティ『GO GIRL』を主宰。料理家、モデル、ランナーとして幅広く活躍。