Interview #01
インタビュー

What is Attachment
Question to find out its true identity.
愛着とは何かーその正体を探るインタビュー

NAOKI ISHIKAWA 石川直樹 (写真家)

ーこれまでのご経験の中で、「愛着」のある場所/風景について教えてください。毎年訪れる場所や、日常の中で思い出す風景など、自身と見えない繋がりを感じる場所/風景についてお話をお聞きしたいです。

愛着なのかどうかはわかりませんが、その場所に立つと「ああ、帰ってきたな」と思うのは、カトマンズです。砂埃、人ごみ、でこぼこの道、ひしめく店、カトマンズの市街は愛着がありますね。そして、エベレストへと続くエベレスト街道も愛着があります。もう十回以上通って、あの道を歩いていると、疲れや苦しさというよりも、喜びを感じます。

ーその「愛着」のある場所/風景に纏わる物語を教えてください。これまでのご経験の中で、その場所/風景との繋がりを深めたきっかけになったお話をお聞きしたいです。

カトマンズだったら、厳しい遠征前に安い定食のダルバートを食べたり、カフェなどで仕事をしていても落ち着きます。買い物のためにタメルという安宿街を歩いたり。
エベレスト街道だったら、毎日風景が変わって、少しずつ標高があがっていく。白い峰々のヒマラヤが見えて、やがてエベレストに近づいていく。そういう身体感覚は愛着と繋がっています。

ーその「愛着」のある場所/風景を日常の中で思い出す瞬間はいつですか?日常の中でその場所/風景に想いを巡らせる瞬間について、その時の心境などのお話をお聞きしたいです。

よく思い出してますよ。知り合いのシェルパたちはどうしているかなあ、とか。写真集を作ったり、展覧会の構成を考えているときなんかに、写真を見返しながらよく考えています。

ー場所や風景とつながりを感じるように、自身と深い繋がりを感じる、愛着のある物について教えてください。例えば、石川さんの愛着がどの様に物に宿るのかお聞きしたいです。

厳しい経験を共にすればするほど道具への愛着は湧きますね。20年くらい使っている、ナイロンの小物入れがあります。POLE TO POLEという北極から南極へ向かう旅の最中、カナダの北極圏の街のCOOPで買ったもので、ハンドメイド。非常に頑丈で、歯ブラシやシャンプーなどの日用品を入れるバッグとして使っています。これはヒマラヤにもアラスカにもヨーロッパなどへの都市の旅でもいつも一緒で愛着があります。

Naoki Ishikawa 石川直樹 (写真家)

写真家。2000年、北極から南極まで人力で踏破する「Pole to Poleプロジェクト」に参加。2001年、世界七大陸最高峰の登頂を当時最年少で達成。辺境から都市まであらゆる場所を旅しながら、作品を発表し続けている。『CORONA』(青土社)により土門拳賞、『EVEREST』(CCCメディアハウス)『まれびと』(小学館)により、日本写真協会賞作家賞受賞。著書に、開高健ノンフィクション賞を受賞した『最後の冒険家』(集英社)ほか多数。