Vol. 01

シンプルさこそが最高の贅沢
ミニマルツーリングキャンプ

groovisions代表 伊藤 弘

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都内のオフィスでの
パッキングからスタート

愛車のハンターカブに荷物を固定していく伊藤さん。ハンターカブはダート走行にも対応するカブの派生モデル。無骨さとポップさを併せ持つデザインもお気に入りの理由だ。長年キャンプを楽しんでいるからパッキングは手慣れたもの。テントはポールを別にしてフレームに固定。そのほかのギアはすべて大型防水バッグに詰める。その時に剛性のあるものを中に入れておくと、荷台にバンドで固定する時にもグラつきが少ない。今回は剛性感のあるソフトクーラーをチョイスすることで安定感を確保している。すべての生活道具をバイクに積み込むキャンプスタイルでは、不要なものを見極めるスキルも大切。伊藤さんも愛読する名著「バックパッキング教書」の中には「バックパッキングとは、なにを持っていかないかという策略である」という名言もある。

11:30

ゴミを出したくないから
ビールは量り売りで購入

ハンターカブのガソリンは満タンだけど、途中で『ふたこビール』に立ち寄って、伊藤さんのガソリンを補充。ここは数種類のクラフトビールを量り売りしてくれるブリュワリー。持参したタイガー魔法瓶の真空断熱炭酸ボトルを極上のビールで満たす。「キャンプだと濃いめのテイストのビールが好きかも」という伊藤さん。今回はトリプルホップIPAをチョイス。量り売りにわざわざこだわる理由は美味しさ以外にもある。とにかく、できるだけゴミを残さないようにするにはどうすれば良いかを考えた結果だという。「でも他の味も楽しみたかったな……。次はボトル2本用意しないとかな(笑)」

13:30

突発的出会いを楽しむ
寄り道ツーリング

ハンターカブは125cc。高速道路を走ることはできないけれど、伊藤さんはこれをデメリットとは感じていない。「ツーリングも楽しみたいですから。フラッと知らない店に立ち寄ったり」。そう言って今回バイクを寄せたのは、橋本駅の近くにある『よしの食堂』。普段の伊藤さんの生活圏内にはなかなかなさそうな、ローカル色満点の食堂だ。おふくろの味的チャーハンを食したあとは市街地を抜け、いよいよ田舎道へと入っていく。自然の空気も楽しむのがアウトドアの醍醐味だとすると、道中も風を感じることができるバイクは、移動手段としてアウトドアとの親和性が高い。

15:30

『水源の森 キャンプ・ランド』に到着
あっという間のミニマル設営

ギアを最小限に絞っているから設営もあっという間に完了。小雨がふっているけれど、タープを張るのではなく、トレッキングポールを使いテントのフロントパネルを立ち上げる。シンプルながら抜かりなく快適な居場所を生み出している。モノ自体は少ないながら、すべてが伊藤さんの審美眼によって厳選されたもの。「物はあまり買わなくなってきた」という伊藤さんだが、最近買い足したのがTHE NORTH FACEのカトラリーやボウルも手がけた熊野亘さんがデザインした鉈。「熊野さんはジャスパー・モリソンの下で働いていたこともあって、作るものがシンプルかつプロダクトとして美しい。僕はモスというブランドのテントも好きなんですが、それを手がけていたビル・モスは彫刻家でもあるんです。道具として使いやすいだけでなく、美も内包しているギアが好みですね」

17:30

“なにもしない”をする
日常から離れるシンプルな時間

伊藤さんがキャンプに行く目的は、ずばり「なにもしないこと」。忙しい日常をリセットする行為でもあるから、あれこれと動き回ることはしない。プシュッという美味そうな音とともに伊藤さんが保冷ボトルを開ける。「あとは焚き火を眺めながら、ただただのんびりと過ごすだけです。絵的に地味ですが大丈夫ですか?」と伊藤さんは笑う。でも、非日常を味わいに行くのがアウトドア遊びだとすると、そのシンプルさこそ、現代人にとっての非日常であり、なによりの贅沢なのかもしれない。

19:30

まさかのクズ野菜登場
映えとは無縁のソロご飯

「今日の食材なんですけど……」と伊藤さんが少し恥ずかしげに出したのは、カット野菜と豚バラ肉、そしてキムチというシンプルさ。「基本、家の冷蔵庫に残っていたものばかりです。野菜は余っていた野菜を切ってジップロックのスクリューコンテナに入れてきました」。ソロキャンプだから、食事は自分1人が満足できればそれで良い。食材を放り込んだ鍋を焚き火にかけて、しばらく待てば、あっという間に出来上がり。「焚き火での調理って火力調節できないので結構難易度高いんですけど、これだといろいろ放り込んで煮炊きするだけなので。まあズボラなだけです」と伊藤さんは笑うけど、ギアも食材も時間も、最小限で済ますこのキャンプ料理は、熟練者が行き着くひとつの最適解かもしれない。

21:30

快適なクラブハウスで
ゆったりと過ごす

今回訪れた『水源の森 キャンプ・ランド』は、ロゴデザインなどは伊藤さんが手がけていて、全体のディレクションは『マウンテン リサーチ』の小林節正さん。クラブハウスには大きな焚き火台があって、ものすごくスタイリッシュな空間。書棚にはアウトドア関連の書籍もある。
サイトでiPadで読書をしていると、雨が少しだけ強くなってきた。すかさず伊藤さんはクラブハウスへと移動。
「前回バイクツーリングでここに来た時は大雨で。でもこのクラブハウスの居心地が最高だから雨を理由にずっとここでビールを呑んでました。キャンプだからって無理をしてテントにいなくても良い。自由に過ごせば良いんですよね」。クラブハウスにある大きな時計は良く見ると逆回転。「ここに来たら時間の縛りから解放されてほしい」という『水源の森 キャンプ・ランド』からのメッセージだ。

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昨日の残りを片付ける
撤収ありきの朝ご飯

キャンプの朝というと、まずは火熾しから始める人も多いと思うが、伊藤さんの場合は違う。「火を熾してしまうと、それの処理に時間がかかってしまって、撤収がサッとできなくなるんです」と言って取り出したのは小さなアルコールストーブ。それに昨日の鍋の残りを載せて、沸騰したら乾麺を投入。朝の光を楽しみながら食後のコーヒーを飲んだら、そろそろ帰り支度の時間だ。そもそもギアが最小限だから、撤収もあっという間。この日は焚き火の香りを纏ったまま、そのまま出社するという。「こういう身軽なスタイルだと、戻ってからの片付けもほぼないですから、帰ってからも普通に仕事できちゃうんですよ」。そういって、ハンターカブに跨がって、来た道を戻っていく。

身軽さが生み出す
リラックス重視のキャンプ

伊藤さんのキャンプスタイルを一言で表現するなら“身軽さ”だ。フラッと出かけて、週末を過ごし、そのまま月曜にキャンプ場から出社。キャンプというものを仰々しく捉えていないから、思い立ったときにスッと行く。道具立ても同様で、ギアを極力少なくすることで設営撤収にかかる時間を減らし、リラックスできる時間をできる限り長く作る。特別なことをあえてしないことで、精神的にもシンプルになっていく。そしてなにより、キャンプが終わった後のゴミの少なさに驚いた。普通のキャンプだったら、いくらソロだとしても結構な量のゴミが出る。でも伊藤さんが今回出したゴミはすべて、ジップロックひとつに収まる。食材もぜんぶ使い切っているし、ビールもマイボトルに入れてきたから缶ゴミもゼロ。これだったら家に帰ったあとの片付けも一瞬だ。だからまた、身軽にキャンプに出かけていけるのだ。

Camper’s Profile

groovisions代表

伊藤 弘

アートディレクター。デザイン・スタジオ『groovisions』代表。1993年に京都で『groovisions』を設立し『PIZZICATO FIVE』のステージビジュアルなどを手がける。ほかにも『RIP SLYME』『FPM』などのCDジャケットやPVのアートディレクションを担当。日テレ『NEWS ZERO』のモーショングラフィック制作や『THE NORTH FACE Alter』や『LAB』のロゴデザインなど、その活動範囲は多岐わたる。

Camp Site

『水源の森 キャンプ・ランド』

〒402-0208 山梨県南都留郡道志村馬場5821-2
070-2673-1122

備考 : キャンプ場に関するお問い合わせは、上記まで直接ご連絡をお願いいたします。

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