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Site-specific Multichannel Soundscape

建築と共鳴するマルチチャンネル・サウンドスケープ

The concept of “Design Like Nature” echoes between the tree-like building and sound design. THE NORTH FACE Sphereでは、一般的に用いられる各フロアが独立した音響設計とは異なり、上空に向かって伸びながら有機的に繋がる空間の立体的な音の繋がりと特殊な音響特性を活かすため、独自のサウンドスケープが構築されている。

まず、B1Fでは、空間を樹木の根っことして捉えて制作された、地面の力強さを想起させるような低音域スピーカーが設置されいる。そして、吹き抜けを通じて空間が一体化している1Fでは、小さい音量でも遠くまで減衰せずに音を伝達することが可能な平面スピーカーユニットを使用したミドルレンジの小型スピーカーを天井面から吹き抜け下に向けて設置。この組み合わせにより、2つの空間の音響が繋がり、大樹の幹のような心地よい音に包まれる体験が演出されている。

また、グランドフロアとは別層で吹き抜けとなっている2-3Fでは、3Fにのみ樹木に実る果実をイメージして特別に作られた全体音域スピーカーを設置。吹き抜けで構成された空間に響く残響によって2Fへ音が降り注ぎ、空間の上昇感との相乗効果をもたらす開放的な体験を演出している。

この全体音域スピーカーのデザインは、空間デザインやアートインストーラーなどを手掛ける谷口秀義との共作によるもので、筐体自体を45度に捻り、一面にスピーカーユニットを縦方向(アレイ状)に配置する特殊な形状を採用。螺旋状に音が広がるという新しい試みがなされている。さらに、音が出る面をガラス窓に向かって設置することで、より残響を多く発生させ、それを利用した音を吹き抜け空間に響かせると同時に、螺旋状に音が放出されることによって単一方向でのフラッターエコーの発生を減衰。これはコンサートホールなどで、一方向に発生される音に対して壁面や天井に不規則な凹凸を作ることで音の反射を拡散し、並行して向かい合う壁によって生じる残響が音の明瞭度を損なうことを軽減する、という原理を応用したものとなっている。また、スピーカーのカバーとして使用されているファブリックは、意匠に合わせて特注したものであり、建築空間と調和したボディとなっている。

このように、各階の異なる響きに合わせた異なる特性のスピーカーを配置されてたサウンドスケープデザインは、「自然のように在る建築」という設計コンセプトに基づいた空間と共鳴し、空間の持つ上昇感を聴覚的にも拡張することで、さらなる深化もたらしている。

Soundscape Design by WHITELIGHT
「重力の束縛から魂を解放する」ことを目的として活動。手段として、マルチチャンネル音響設計、音源制作、オリジナル サウンドシステム開発を専門とし、商業施設から、コンサート、ライブ、演劇、美術の分野では鈴木昭男、吉増剛造、刀根康尚らの作品の音響設計を手がけるなど、音響環境の深化に取り組んでいる。